第21話 僧侶の報告
王立魔法教会の一室。
書斎の椅子にゆったりと腰を下ろしているのは、無造作な銀色の髪に独特な帽子を被った女、司教だ。
トントントン
「僧侶です。司教様、ご報告に参りました」
「おー。入れー」
ノックをして部屋に入ってきたのは、 “僧侶” と名乗る女だった。
「僧侶、お疲れちゃん」
「お疲れ様です」
ニヤニヤと手を振る司教に対して、僧侶は深々とお辞儀をした。
僧侶はまだ若く、魔王の娘より少し歳上だ。
服装は王立魔法教会の制服のようなものなのだろうか、司教と大差ない。
緑色のロングヘアを後ろで一つにまとめ、三つ編みにしている。
「ご報告です。情報屋が……!」
「まあまあ落ち着け落ち着けー。ほら、そこ座れ。菓子でも食うかー?飲み物は……紅茶がいいんだっけか?」
険しい表情で何かを伝えようとする僧侶にお構い無しに、司教はお菓子の準備を始めようと腰を上げた。
「司教様、ちょっと、大事なご報告が!……ああ、待って下さい!!お菓子の準備なら私が致しますから!司教様はお掛け下さい!」
真面目な僧侶は早速、気まぐれな司教のペースに飲まれていた。
しかし、僧侶にとっての最優先事項は “司教” であるため、自分の報告よりも彼女の気まぐれを優先してしまう節があるようだ。
「んん〜!やっぱり僧侶のいれた紅茶は最高に美味しいな!」
結局、僧侶が準備したお菓子を食べ、紅茶を飲み、司教は満足そうに笑っている。
そんな司教の様子を見て、やっと落ち着いた僧侶は「ありがとうございます」と頭を下げ話を始めた。
「情報屋が、賢者と密会をしておりました!」
「あー、はいはい、いつものやつね!」
僧侶の報告に司教は「またか〜」という表情で苦笑いした。
「あの二人、会う度にこそこそ何かしているんです!特に情報屋!あの女はいつも面倒くさそうに……司教様への態度も一体何なんです!?誰に雇われていると思っているのでしょうか!?」
「雇ったのは賢者だねー」
司教は紅茶を味わいながら淡々と応えた。
「……っ!で、でも、あの女がここにいては教会の風紀が乱れます!司教様にもご迷惑が……」
「あー、もう、わかったわかった!」
僧侶の話が長引くことを警戒した司教は、一旦、僧侶を落ち着かせようとした。
「僧侶、何度も言ってるけど、あの二人は幼なじみなんだ。たまに会えば、積もる話もあるとは思わないか?まあ確かに情報屋はあれだが……優秀だ。それに、賢者はあの通り真面目な青年じゃないか。私は良いコンビだと思うぞー」
「コンビですって!?」
僧侶は青ざめている。
「情報屋だって頭の良い女だ。自分の不利益になることはしない。まあ、お前が気にすることは何もないってことだ。……わかったなら菓子食ってさっさと仕事に戻れよー?」
司教は紅茶を飲み干すと、カップを手に持ち「おかわり〜」と呟いた。
「まったく……司教様は……」
僧侶は司教からカップを受け取り、溜息をつきながら新しい紅茶をいれに行った。
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