時間警察

ゆにろく

時間警察

「ついに、ついにできたぞ!!」

 男はそう言った。

「30年の努力が実ったのだ!!」

 そう、彼は科学者であり発明家ある。 彼は大変優秀であったがどこか抜けているところがあった。 子供の頃はよく靴下を左右別の柄で履いていたし、シャンプーで体を洗うことも日常茶飯事。 子供のころまでは笑い話で済むのでそこまで気にもしていなかったが、科学者となってからはそういかない。 彼はある日、素晴らしい論文を書き上げそれを電子メールで送ろうとした。 しかし、宛先を間違え知り合いの科学者へ送ってしまっていたのだ。 彼は誤送信した時に気づかず、自分の失態に気づいたのはその友人が彼の論文にアレンジを加え学会で発表した時であった。 彼は「それは私の論文だ」と講義をしたが、友人は「私がこの論文を書き上げたときに君が同じような論文を私に送ってきたのだろう。 盗作とはひどい言いがかりだ」と言い放った。

 彼はその時決意した。

「なんとかしてこの性格を変えねばならぬ」と。

 しかし、方法は見当たらなかった。 当たり前だ、これは生まれつきのものであるから変えようとして変えられるものではない。 そして、逆にこう考えた。 この性格が変わらないならば、ミスをなかったことにしてしまえば良い、と。 彼は時を跳躍する機械を作ることにした。 記憶だけを過去の肉体へ飛ばす装置、いわゆるタイムリープマシンだ。 これを使うことでミスをしたあとに過去へ記憶を飛ばし失敗することを回避する。 一度失敗を経験してからその経験を過去で生かすのだ。 失敗は成功の母とはよく言ったものだ。

 その日から彼はその装置の制作に取り掛かり約30年を費やすことで装置を完成させた。 今後ミスをしないためにこの装置を作ったのに、制作に30年も懸けては本末転倒では?と思うかもしれないが、一度作ることができれば過去へ戻りもう一度作ることはたやすい。 次は10、いや5年で作ることができるだろう。

 彼は達成感と今後への期待、様々なことを思いながら、ヘルメットに太いパイプが生えている装置を頭に被せた。 後はスイッチを押すだけだ。

 と、その時彼は光に包まれた。

「な、なんだ!?」

「初めまして。 私、時間警察、太陽系課のアリェニョルヶと申します」

 彼はいきなり現れたグレーの肌をした人間に大変驚いた。 これは宇宙人というやつではないか。 彼は私の世紀の大発明に宇宙人まで呼んでしまったのか、と思った。 しかし、名前のほうは聞き取れなかったが警察と口にしていたような。 彼はすこし疑問に思った。

「あなたは何をしにいらっしゃたのです?」

「あなたを時間独占罪で逮捕しにきました」

「なんの話です! 私が何をしたというのです!」

「タイムリープは宇宙法で禁止されています」

「待て、私はタイムリープをしようとしていたが使っていないぞ。 犯罪というならこれは渡そう」

 彼にとってこの装置は命の次に大切なものであった。そう、命には変えられないのでしぶしぶ引き渡すことを決めた。

「いえ、あなたは極悪人として死刑と確定しています。 今更それを渡しても手遅れです」

「なっ! そんな、どういうこ――」

 彼は宇宙人にレーザー銃で胸を撃ち抜かれた。

「こちらアリェニョルヶ。 容疑者を射殺した」

『よくやったぞ。 それにしても極悪人だったな』

「えぇ。 とんでもないやつですよ。 本当に。 次元誤差300年でしたっけ?」

『あぁ。 俺たちの文明が進んでいなければ世界が終わっていたな』

「私たちの文明にことで反応する計測器がなければ詰んでいました」

『とはいえ、9回はあの博士を止められず、同じ世界を繰り返していたんだろう?』


「どうやったら付け忘れるんですかね? 記憶を過去へ引き継ぐ機能」


 完

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