おじさんとパフィンちゃん〜コラボ編〜
楽々
アミメキリンと謎のヒトリスペクト編(再掲)
「おじさんおじさーん!はやくはやくー!」
男を呼ぶパフィンが向かった先はゆきやまエリアの温泉宿。
キツネのフレンズが寝床にしている事で有名な場所である。
「すみません、またパフィンさんのワガママに付き合ってもらって……」
「いやいや大丈夫ですよ。ちょうど休みの日で特に予定もなくて暇でしたし」
男に付き添うアカリが一緒に宿へと足を踏み入れる。
今日のゆきやまはよく晴れており、予定よりも早く到着できた。
中に入った三人は、通路の脇にある広間に看板が立てかけてあるのが目に入った。
看板には『冬のジャパリ美術展』と書かれている。
「の……じゃぱり……これなんて書いてるんですかー?」
「『ふゆのじゃぱりびじゅつてん』ですね。パークに住んでいる方々が描いた色んな絵が展示されていますよ」
「なんだかおもしろそー!見ていきたいでーす!」
「美術展か……学生の頃、犬を描いたつもりなのにピエロみたいだって言われた事があるなぁ……」
「何でピエロになるんですか?お風呂に入る前にちょっと見ていきましょうか」
二人の袖を引っ張るパフィンに男が思い出すように語るのを聞いたアカリが笑いをこらえながら中へと案内する。
美術展の中はたくさんの人がいるにも関わらず、静けさが漂っていた。
黒い海を走る船のような姿をした怪物とフレンズ達が戦う勇壮感あふれる絵、建物に化けた怪物がフレンズ達を食べようとしている恐ろしい絵、巨大化したワシミミズクのフレンズが頭にコブを作ってコノハズクのフレンズに叱られて泣いている可愛らしい絵、温泉宿に似た巨大な建物に足が生えて雪山を歩く壮大な絵、仮面を被った白いキツネと思われるフレンズが決めポーズを取るちょっとレトロチックな絵など、色々な絵が展示されていた。
「へぇ……どれも凄く上手ですね」
「はい。どれも絵描きとしてのキャリアを積んだ方々が誇る力作ばかりですよ」
感嘆の声をもらす男にアカリがあれこれ説明している中、パフィンがふと一つの大きめの絵に指をさす。
「おー、この絵とってもおっきいでーす!」
パフィンが指差した先にある絵。
それは、大人の男性の身長よりも遥かに高く、まるで教会などに飾られるようなとてつもなく大きな絵だった。
額縁の中に描かれているのは、見たこともない巨大なフレンズが、雪山の頂上から身体を乗り出す一人の男性と口づけをしようとお互いの顔を近づけている絵だった。
「おぉ……壮大さとロマンチックな雰囲気が合わさったような絵ですね」
「……この絵には、とても悲しい恋の物語が背景にあるそうです。せめて絵の中では幸せにしてあげたいという描き手の想いが込められているようですね」
どこか感慨深げに説明するアカリは巨大な絵を見上げる。
巨大なフレンズは目を閉じて頬を赤らめており、まるでその巨体とは不相応なまでにうら若き印象を与える。
「このフレンズさん、パフィンちゃん見たことないです。アカリさん、この子は何のフレンズさんですかー?」
「私も実際に見たことはないんですけど、どうやら雪山にだけ生息すると言われるUMAのフレンズさんだそうですね」
「ゆーま?」
「未確認生物、つまりツチノコさんや守護けもの達みたいに、元の動物がちゃんと見つかっていないフレンズさんの事ですよ」
そう説明する傍ら、男はさらに隣の小さな絵に不意に視線が移る。
その絵は隣の巨大な絵とまるで世界観を共有しているかのような雰囲気を醸し出しており、絵を見る人達は誰も立ち止まらないものの無意識なのかチラリとだが必ず視線を移している。
キリンのフレンズとつなぎ服を着た女の子が、手を繋ぎながらどこかへと走り去っていく絵。
それは別のどこかへ通じる扉のようにも見えて、男は絵の中で背中を向けてどこかへ走り去ろうとする二人にゆっくりと手を伸ばしかける。
「おじさん?」
しかし、伸ばしかけたその手はパフィンに声をかけられた事ですぐに引っ込み、不思議な感覚は夢から覚めたかのようにかき消された。
それから温泉に入った後、男はその絵についてアカリに訪ねてみた。
しかし、その絵について彼女は何も知らず、気になった男が再び美術展に戻って確認してみるも、その絵は影も形もなくなっていた。
その後も温泉宿を出るまでに隙を見つけては施設内を探索したが、男がその絵に出会う事は二度となかった。
あの時伸ばした手を引っ込めていなかったら。
そう思った男の脳裏には、二人の女の子が元気よくどこかへ走り去るリアルな光景がフラッシュバックした。
〜〜〜〜
bentmenさんの作品「アミメキリンと謎のヒト」のリスペクトネタでした。
勝手にリスペクトしてすみません許してください何でもしますから!
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