おふくろの味
私は幼い頃から母親の豚汁が好きだった。
今でも味が思い出せる。田舎出身の私は豚汁を実家以外で食べたことがなかった。
大人になっても実家暮らしをしている私はよく豚汁をリクエストしていた。
仕事の都合で都会に出張に来た。ある和食のお店に入った。そこでは定食にセットで豚汁が付いてくるという。
早速料理がきた。
豚汁は予想していたものと大きく異なっていた。味噌汁の中に根菜が入り乱れていた。
これは豚汁ではない。
仕事を終え実家に帰りると、母親が夕食の準備をしていた。豚汁だ。
「おふくろ、今日食べた豚汁が豚汁じゃなかったんだが、これは本当に豚汁なのか?」
「地方によって豚汁の味は違うのよね。我が家はこれよ。」
とせいろの中を見せてきた。
「やっぱりおふくろの作る豚汁は熱々だな。特にこの塩加減がクセになる。」
これは小籠包という食べ物だと知るのはあと5年もあとのことだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます