白崎さんの溺愛④
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「聞いた?この前の期末の結果」
「ああ。また白崎さんがトップだって」
「凄いよねー。全部満点だったってマジ?」
たくさんの生徒達が行き交う、朝の廊下。
その廊下のど真ん中を、聞こえないフリをして歩く私。
白崎
昔から勉強が好きで、スポーツも何だって得意で、噂じゃ少しモテるらしい。
…まぁ、他の男なんてどうでもいいけど。
「娘には何でも出来る子に育ってほしい」と常に願う母親の教育のお陰で、今の私には出来ないことなんてない。
だから、勉強やスポーツだけじゃなくて。
美術や音楽や料理の腕前もそう。人よりダントツに出来るように教育させてもらってきた。
そして、人に比較的「かわいい」と言われ噂されるこの見た目も。
オシャレだって、大好きだから。
「っ…やっぱ俺、告るわ!」
「やめとけって!相手にされないっつの」
「でもさ、白崎さんって、“アイツ”のこと好きって有名じゃん」
なんでよりによってアイツなんかな。
廊下にたむろする他の男子生徒はそう言うと、ため息交じりに私を見遣る。
…勝手にそうやって言っていればいい。
それでも私は、“彼”のことが大好きだから。
私は彼の顔を思い浮かべると、速足で教室に向かった。
「矢島くん!」
「!」
やがて教室に到着して早速名前を呼ぶと、噂の彼…“矢島くん”は教室の窓際でたくさんの友達と雑談してる最中だった。
矢島竜くん。
“あの日”からの…私の、大好きな笑顔を持った人。
私が矢島くんの名前を呼ぶと、彼はすぐに反応してくれたけれど…やがて「またお前か」とめんどくさそうに呟いた。
「…今度は何だよ」
「酷いっ。せっかく遠い教室から逢いに来たのにっ」
「いや同じクラスだし」
「ねねっ、今度の日曜ね、カップルで入ると割引してくれるカフェ見つけたの!私、矢島くんと行きたい!」
私はウザそうにする矢島くんを無視してそう言うと、彼の友達をかき分けて目の前に回り込む。
だけど…矢島くんは、私の愛にはかなり冷たくて。
「カップルじゃねぇじゃん俺ら」
「今からなればいいでしょ!私はいつだってオッケーだよ!」
「…、」
私がいつもの調子でそう言うと…
「…断る」
と、彼もまたいつもの調子でそう言った。
しかし、矢島くんがそう言った直後。
それを聞いていた矢島くんの友達たちが言った。
「矢島ー。白崎さんが可哀想だろ」
「お前、贅沢すぎ」
「そうそう。白崎さんめっちゃ可愛いじゃん。本来ならお前のところにこうやって来るのとかマジで奇跡だからな?」
俺なら速攻付き合ってるわー。
と、ずっと断り続ける矢島くんにそう言っては、どさくさに紛れて真正面から私の両手をとって握る。
「白崎さん、コイツやっぱダメだって。俺にしよ?」
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