第3章 始まりと終わり
第14話 夏休みの始まり
その1 夏休みの始まり
医理大は夏休みが遅い気がする。
八月八日木曜日から九月いっぱいが夏休みだ。
他はどうだろうと思って電通大に行った友人に聞いたところ同じ日程だった。
参考までに私立文系の奴にも聞いてみたいが知り合いがいないので不明。
さて、遅い夏休みだが免許を取った後、実家に帰ってこいとの連絡を受けている。
車の話もあるし、家やら何やらで色々金銭的に世話になっている身だ。
幸い半期の授業の試験は全て合格圏内だ。
補講も無いし問題は無い。
免許も無事試験一回で手に入れた。
ただ心残りというか進行中の事案はある。
露天風呂作りと収穫祭だ。
夏休みが始まると同時にイライザ先輩が学校のトラックでボイラーを搬入。
これが自作とは思えない立派な代物だった。
小型の物置くらいの大きさがあるがイライザ先輩曰く『許可も資格もいらないぎりぎりのサイズ』らしい。
更に稲森先輩だけでなく稲森先輩のサークルの友人だの指導担当の教授までが集まって連日土木作業をしている。
人間妖怪獣人男女混成編成の面子だが、大型工作大好きで古い家も大好きな模様。
露天風呂の基礎をやったり合間に家の構造とかを調べたり楽しそうにやっている。
おまけに
人参はやや小さめだがいい形で甘くて美味しい。
枝豆も悪くない感じだ。
トウモロコシも甘く出来たし、ミニトマトは毎日取ってもすぐ次が出来る。
七月初めに収穫したジャガイモも含め宴会で食卓で大好評。
畑の一部は既に次の植え付けへと準備中。
結果として露天風呂組と意気投合して毎夜宴会モードになっている始末だ。
僕としてもこちらの動きが楽しそうだし本音は思い切り参加したい。
でも実家には車が待っている。
既に父が購入して用意してあるそうだ。
父曰く『あそこの環境に最適な壊れにくい奴』らしい。
ちなみに妹に言わせると『間違いなく父の趣味百パーセント』の車だそうだ。
具体的にどんな車かは誰も教えてくれなかったが、その辺は期待半分それ以外も半分といったところ。
でもこの環境で車が手に入るのは大変有り難い。
雨の日の通学も楽だし買い物も色々積める。
更に休日の送り迎えなんてのも可能だ。
そんな訳でどうしようかと考えたところ、父からメールが入った。
実家に帰ってくる日の指定だ。
十三日までには帰ってこいとの仰せだ。
ちなみに今日は大学が夏休みに入って免許を取って宴会してで十日の金曜日。
工事や畑仕事を手伝ったりするのが楽しいのだけれど仕方無い。
そんな訳で翌朝、残留する皆さんに留守番をお願いし、イライザ先輩運転の大学トラックで新幹線の駅まで送って貰う。
「どんな車になるんだろうな」
「お父さんの趣味って言っていたよな、どんな趣味なんだ?」
「機械ですね。メカメカしいのから電子工作まで一通り」
「そう言えばあのユンボやトラクタ、使えるようにしておいた当人だよな」
「多分。そんな事をするのは他にいないので」
「なら面白い車でも持ち込みそうだな。ウニモグとか」
「何ですかそれは」
「最高の荒地走破性能を持つトラック。ちなみにウン千万円クラスだ」
「そんな高いの無理ですよ。確かに父が好きそうですけれど。予算もあるしせいぜい中古のコンパクトカーでしょう」
「でもオートマじゃ無くマニュアルとか」
「そのオチはありそうですね」
そんな事を話しているうちに新幹線の駅に到着。
「それじゃ家の方は任せておけ。帰る頃には立派な露天風呂が出来ているからさ」
「楽しみにしています」
そんな訳で車を降り、駅の売店でささやかな土産物を買って新幹線に乗車。
実家までここから上野経由で三時間ちょっとの道のりだ。
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