その3 変態の痕跡
「タチが悪いですね、それ」
「本当にそう思うわ」
うんうんと頷く真理枝さん。
「この学校に来てからもやられたからね。寮の部屋の前に静音形ドローン飛ばして」
おいおい。
「そこまでやりますか」
メカも使うのかよ。
「美智流先輩も何回か被害に遭っているしね」
あの鬼神である美智流先輩まで。
「それはなかなか命知らずというか」
「悪戯しがいがある相手でないと面白く無いって本人が言っていたしね。美智流先輩の寮にも侵入に成功した事があるらしいよ。ベッドで美智流先輩の下着を顔に被って寝ていたんだって」
うわあ。
色々な意味で突き抜けている。
「念の為聞くけれど、秋良が接触してきたのっていつ頃?」
「五月の中頃です」
「嫌な予感がするわ」
真理枝さんが立ち上がる。
「この家の中を調べた方がいいかも。特に風呂場と洗面所。秋良が本気になったら侵入不可能な場所なんて何処にも無いから」
「美智流先輩の封印がかかっているって本人が言っていましたけれど」
「あの変態だったらそれ位解きかねないの。変態だけれど頭脳と術は確かだから。それに文明が見た美智流さんが本物かも怪しいしね」
言われて気づく。
そうか、術の可能性もある訳だ。
でもそうだとすると。
「あの時は僕に許可を貰ってここにかかっている結界内に入れるようにしたいと言っていました。でも本当の目的は僕に許可を貰う事では無く、ここに入ることを企んでいるぞと教えるためだった訳ですか」
「可能性は充分にあるわ。だから侵入の痕跡を調べるの。あの変態ならわかるように痕跡を残していると思うから」
美鈴さんが目を閉じて、そして何か言う。
「そう言われてみると確かに微妙な気配がある場所がある、そう美鈴さんが言っています。案内してくれるそうです」
そんな訳で全員で美鈴さんについていく。
まず美鈴さんが行ったのは風呂場だ。
いくつか並んでいるシャンプー等のボトルのうち一本を美鈴さんが手に取り、真理枝さんに渡す。
真理枝さんはボトルを開けてポンプ部分を抜く。
ポンプ部分にくっついて紙が出てきた。
「マイクもカメラも仕込めます。今回は注意喚起につき何も仕込んではいません、だって!」
うわあっ。
「本当に入り込んでいたんですね」
「そういう奴なのよ」
真理枝さんがそう言って顔をしかめる。
「あともう一箇所あるそうです」
歩き出した美鈴さんにまたついていく。
今度は玄関を通り越して廊下の先へ。
一番奥の真理枝さんの部屋だ。
「僕が入っても大丈夫?」
「問題無いよ、片付いているしね」
そんな訳で僕も中に入る。
美鈴さんが押し入れを開ける。
下の整理用押し入れボックスを指して何か言っているようだ。
洋服類が一瞬見えたので僕は視線を九十度ずらす。
真理枝さんは何やら引き出しをごそごそしている模様。
そして。
「あの変態! 殺す!」
殺気たっぷりの真理枝さんの台詞が聞こえた。
何があったんだろう。
「使い込んだパンティを新品と交換しておきました、だってー!!!」
おいそれ真理枝さん大声で言わないでくれ。
僕もいるんだぞ、一応。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます