◆幕間-2◆
俺の名前は田所優司。
このダイアロンという世界ではユウジと名乗っている。
ただ単にこの世界で人生をやり直すなんて今までの苦労を考えるとやれやれという感じなのだが、まぁそれでもいいかと思う。
何せあの女神らしき女にいろいろと約束させ、この世界での人生が薔薇色になるようにした。
まず身体能力の向上。これには視力、聴力等も含まれている。
今の俺はその気になれば五十メートル先くらいまでぴょーんとジャンプできる。
垂直にはまだ試した事が無いが同じくらい飛べるだろう。
勿論腕力、握力等も強化してもらった。思い切り殴れば大きな岩でも簡単に粉砕できる。
そして走れば百メートルを二秒で駆け抜け、それ以外にも特殊なスキルをいくつか付与してもらった。
ついでに言えば武器も用意してある。
この世界の全てを切り分ける事が出来る聖剣。
こういうアニメや小説みたいな展開に俺はワクワクしいていた。
俺はこの世界では最初からピラミッドの頂点。そこからのスタートだ。
俺にできない事は無いし叶わない望みは無い。
最高だ。
なんでも出来るからこそ何を成すかで俺の真価が問われる事になる。
前の世界のように常に成績トップであり続けるための勉強など必要ない。
自分を評価してもらうために無理をし続ける事もない。
俺は俺を作る必要が無い。
俺のやりたいように生きて行ける。
そんな最高の環境だった。
今までは人を疑い続けて生きてきた。
周りには俺を陥れようとする奴らや出し抜こうとするやつらばかりだったから。
この世界でもきっと嫌な奴も悪い奴も居るだろう。だがその全てが俺の事を一切知らないのだ。
そして俺がどんな評価をされたとしてもごちゃごちゃ煩い両親などこの世界には存在しない。
全て一人、俺だけの責任で生きて行く事ができる。
それを負担とは思わない。
そもそもスタート時点でこの世界では頂点なのだ。
勿論細かい点にも留意して対策をしてある。
この世界にはモンスターも居るらしいがそれらを赤子の手をひねるが如く打ち倒せるだけの力。
この世界にも幾つか国があり、それぞれ微妙に言語も違うらしいがその全てを理解し話す事が出来る力。
他にもあるが、とにかく俺はそれらを駆使してこの世界で勇者になる。
勇者、なんて以前の俺が聞いたら爆笑物だろう。
しかし今の俺にはそれを実現するだけの力と環境がある。
なら、俺は俺のやりたいようにしよう。
弱きを助け、強きをくじく。
そういう昔憧れた完全なる勇者に。
まぁ、だからと言ってプレッシャーに潰されては意味がないので適度に息を抜きながら。
特に英雄と言うものは色を好むものである。
勇者といえばハーレムだ。
そう、そこは譲れない。
俺はこの世界で勇者となり、ハーレムを作る。
そしてゆくゆくは自分の国を建国するのだ。
そして圧政者としてではなく、良き王として沢山の女に囲まれ裕福に暮らしていくのだ。
その為にもまずは俺はこの世界で人を救い、ハーレム候補を確保しながら勇者として名をあげていかなければならない。
まずはこの世界を知ろう。
俺はまだ知識としてしか知らない。
実際訪れる事でしかわからない事も沢山ある筈だ。
確かこの世界には五つの大陸があり、それぞれを一つの国が統治している。
俺が現在いるこの大陸はファナール大陸といい、その名の通りファナール王国が統治している。
他の四つある大陸の中で特筆すべきは、人間がほとんど居ないというユメリア大陸。
人が居ないというより、ここを開拓する事を人類が諦めた土地なのだそうだ。
なにせ大陸のほとんど全てを魔物に占領されているのだとか。
ひとつ腑に落ちない事があるとすればそのユメリア大陸についてだ。
あの女が言うには、他の大陸に住まう魔物達はそれぞれ個々で暴れているだけのようだが、ユメリアに足を踏み入れた事のある人が必ず言うのは「妙に統制が取れている」らしい。
ユメリア大陸に上陸しようなんて考える奴は基本腕に自信のある奴らばかりなのだろうが、それらが必ずその妙に統制の取れた魔物達の攻撃に怯んで逃げ帰ってくるのだそうだ。
要するに、ユメリアには何かがある。
たとえば…多少突飛ではあるが俺達にしてみれば単純な一言で説明できる。
魔王。
もしくは、そんな名を名乗っていないにせよ魔物達を統率している何者かが存在しているのではないか。
もう少し情報を収集する必要があるが、俺はその可能性が高いと思っている。
まずはこの世界を旅して周り、人を助けながらハーレム兼パーティを作りゆくゆくはユメリアを踏破する。
魔王らしき存在がいるならば討伐し、世界で始めてユメリア大陸を脅威から解き放つ存在として俺はこの世界で確固たる地位を得る。
そこからの建国はおそらく難しく無いはずだ。
…まぁ先を急いでも仕方ない。
俺はとにかくやりたいようにやっていこう。
時間は腐るほどある。
慌てる必要はない。
なにせ俺の身体は
老いる事は無いのだから。
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