4-19 想い
収納屋を後にした俺たちは、ギルドの食堂で少し早めの昼食をとった。
「ランチプレートお願いします」
「あ、私も」
俺がいつものランチプレートを頼むと、デルフィもそれに続く。
「ダンジョンの串焼き2~3本の値段でこれが食えるんだから、お得だよなぁ」
「そういわれるとそうね」
なんていうとりとめのない会話をしながら、食事をする。
まだちょっと会話はぎこちないけど、緊張はしなくなったな。
「ショウスケくん、デルフィちゃん、ダンジョンカード出してもらえる?」
ちょうど食事を終えたところで、フェデーレさんから声が掛かった。
なんでも、カーリー教官は当分こちらに来られないそうで、ダンジョンカードで10階層ソロ制覇が確認できたら、Dランクへのランクアップをしてもいい、とのお墨付きが出たんだそうな。
ちなみにこの世界では、遠隔地とのやり取りを《収納》を利用した手紙のやり取りで行っている。
音声通信技術はまだないらしい。
「お、ホントにソロでミノタウロス倒したんだねぇ」
そのあたりの情報は、専用端末でダンジョンカードを読み取れば、分かるようになっている。
ギルドとダンジョン協会で運営は異なるものの、このあたりの提携はしっかり取ってるみたいだな。
「オッケー、じゃあショウスケくんのランクアップは終了ね。今日からDランクだよ」
「あの、私は?」
「あ、デルフィーヌちゃんはね、ちょっと待ってて……っと来た来た」
奥の部屋からクロードさんが現れる。
「君は先日のハイエルフだな。エムゼタシンテ・ダンジョン10階層をソロで攻略したんだってな」
「ええ、そうよ」
前日のスカートめくり事件のせいか、デルフィがクロードさんを見る目は厳しい。
「ふむ。では簡単な試験をやろうか」
クロードさんがそういうと、デルフィのスカートが風に揺れ始める。
「な……、また!?」
顔を赤くしながらも、デルフィがクロードを睨む。
しばらく風に揺れていたデルフィのスカートだったが、やがて風が収まったのか揺れが止まった。
「ほう、少しは風を操れるようになったのだな。よろしい、合格だ」
「ふん! そう何度も同じ手に引っかかるものですか!!」
「はっはっは、その意気だ」
とクロードさんが言った矢先、デルフィのスカートがめくれ上がる。
チラリと見えたスカートの中に、スパッツのような物が見えた。
おそらくは動きやすさを重視し、ドロワーズからこちらに変更したのだろう。
ドロワーズと比べ、尻や太ももなんかのラインがくっきりと見えるので、こちらのほうが楽園度は高いな。
「ま、油断は禁物だ」
「ふ、ふん! 見られても平気だもんね!!」
デルフィは顔を真赤にしながら、めくれ上がったスカートを抑えている。
「これだから女というやつは……」
「な、なによ……」
「別にスカートの中になにを履いていようが、そんなことはどうでもいいのだよ。重要なのは“スカートの中が見える”という現象だ」
「な、なんですてぇっ……!?」
「なかなか綺麗なヘソだな。さすがハイエルフといったところか」
さすが変態紳士、わかっていらっしゃる。
フェデーレさんも、関心したように何度も頷いていた。
俺も同じような表情なのだろう、なんて考えてたら、思いっきり頭をひっぱたかれた。
「アホー!! お前ら全員アホーッ!!」
顔を真っ赤にし、目に涙をためながらそう叫んだデルフィは、そのまま階段を駆け上がってギルドの宿泊施設へと姿を消した。
「ショウスケ、といったか?」
「はい」
「逸材だぞ。逃すなよ?」
「……ええ、わかっています」
クロードさんの言う逸材というのが、いったい何を指しているのかは微妙なところだけど、言われるまでもないことだ。
その美しい容姿、勝ち気だが気遣いができ、少しひねくれた部分はあるが、基本的には素直な性格。
死に戻りでなかったことにはなったけど、命の恩人であること。
それだけでも、俺にとっては素晴らしい女性だ。
そのうえ先日のダンジョン攻略。
初めて他人と一緒に行動したにもかかわらず、ごく自然に連携が取れた。
ひとりで戦うよりも、何倍も効率的で、なにより彼女の存在が心強く、心地よかった。
あ、お化け屋敷探索はノーカンで。
いや、あれはあれでよかったけどね。
とにかく、俺はこのとき、ずっと彼女といたいと、改めて強く想った。
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