3-19 ダンジョンカード登録
エムゼタシンテ・ダンジョン。
そのダンジョン入口を中心に集落ができている。
中々活気のある集落だな。
ただ、街とは違って、そこはかとなく殺伐としているような気がしないでもない。
街に比べるとちょっと割高だけど、生活やダンジョン探索に必要な物はこの集落でたいてい揃うようになっている。
そして魔術士ギルドの、魔石買取出張所もあるみたいだ。
魔石納品は魔術士ギルドと冒険者ギルド共通の実績になるし、ある程度深いところまで潜れると、そこそこ良い稼ぎになるらしいから、冒険者の半数近くはダンジョン探索者になるらしい。
近年魔石の価格がどんどん下落していってるから、浅層だと大変みたいだけどね。
「あのー、初めてなんですけど」
さっそく俺はダンジョン入り口から少し離れたところにある、国際ダンジョン協会エムゼタシンテ・ダンジョン出張所を訪れた。
プレハブみたいな感じの建物で、受付スペースと従業員の休憩所が一体になってる簡易な施設だ。
「お、じゃあダンジョンカードの作成だね」
ダンジョン探索をするには、ダンジョンカードを作成する必要がある。
これは国際ダンジョン協会が発行するもので、各ダンジョン探索状況を把握するために、ダンジョン探索者全員が所持を義務付けられているカードだ。
「ギルドカードは持ってるかい?」
「あ、これです」
本来ならいろんな試験や面談を受けての発行となるが、ギルドカードを持っている場合はギルドが身元保証をしてくれるため、それらは免除となる。
「はーい。じゃあ10Gね」
大銅貨を1枚払い、血液登録を経てカードを発行してもらう。
出来ればギルドカードと一本化して欲しいところだが、管理元が違うのでしょうがないか。
ダンジョンカードの登録を終えた俺は、ダンジョン浅層のマップと攻略情報が書かれた冊子を買い、屋台で適当に軽食をつまんだあと、いよいよダンジョンに入ることにした。
収納庫から武器防具を取り出して装備し、ダンジョン入口へ向かう。
結構な行列ができていたものの、パーティー単位で一気に5~6人ずつ
入り口には受付が5つあり、俺はちょうど真ん中の受付を通ることになった。
受付にいたのは俺と似たような装備のオッサンで、まずはダンジョンカードを渡す。
「はじめてかね?」
ダンジョンカードを専用の道具に通すと、いろいろ情報閲覧できるらしい。
「はい」
「パーティーは?」
「ソロです」
「ふむ。では念のためギルドカードを見せてもらおうか」
一応さっきのダンジョンカード登録時に提示はしてたんだがね。
ま、見せるだけだからいいけどさ。
このギルドカードにはいろんな情報が入っているんだが、専用の魔道具がないと内容の閲覧はできない。
本人だけは、ギルドにあずけてあるお金の残高とか、依頼の進捗度とか、いろいろ見れるんだけどね。
ただ、カードのみでも名前と各ギルドのランクは、わかるようになっている。
「Eランク冒険者か、いいだろう」
カードと一緒に、ビー玉くらいの透明の玉を受け取った。
「帰還玉だ。使わなければ返却、使えば100Gだ。決して安くはないが、命には替えられないから、危ないと思ったらためらわず使うように」
この帰還玉だが、地面に叩きつけたりして砕くと、ある程度の範囲内の者を入り口まで転移させる効果がある。
《製水》や《収納》などこの世界では当たり前の用に転移という魔術が使われているが、これら魔術の転移には制限がある。
実は物しか送れないのだ。
たしか『魂のある者』は送れないんだったかな。
なので、人に限らず動物も魔物も送れない。
ただし、死体や死骸は送れる。
余談だが、ゾンビやスケルトンといったアンデッドも、通常は転移できないことから、それらは空っぽの死体が動いているのではなく、なんらかの魂が宿っているのだろうと言われていたりする。
転移は物しか送れない、というのはこの世界の
この世界を何者が創り、何者が支配しているのか、大昔から議論はされているが、残念ながら明確な答えはない。
しかしダンジョンは、ダンジョンコアが創り、ダンジョンコアが支配する世界。
そう、ダンジョンってのは小さな異世界なんだよね。
なので、ダンジョンコアが許可すれば、人でも物でも転移できるし、場所によってはダンジョン内で死んだ場合に限り、生き返れるってところもあるそうだ。
そのあたりの設定は、ダンジョンコアを制圧するとある程度いじれるんだと。
ここエムゼタシンテ・ダンジョンは、転移以外の部分は外の世界とあんま変わらんらしいけどね。
「初めてでソロということだから、階層制限をかけさせてもらう。とりあえず2階層までだな」
ダンジョンってのはいくつもの階層が重なっていて、基本的に階層間の移動は転移陣で行う。
ダンジョンカードを使った階層制限を行うことで、転移陣の動作を制御し、実力のない者が深層へ行けないようにできるってわけ。
ダンジョンってのは危険なところだし、探索は自己責任で行うものだけど、それでも死傷者は少ないほうがいいからね。
「先に進むにはどうすればいいですか?」
「2階層の階層ボスを倒したら、いったん地上に戻ってくれ。そこで階層制限を変更する」
「わかりました」
「では、気をつけてな」
入場手続きを終えた俺は、ダンジョン入口へ向かった。
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