2-19 初めての魔法-実戦-

 街に戻った俺は、冒険者ギルドで昼食を終え、魔術師ギルドに行った。

 外に出てるときは、お昼抜きでもとくに気にならないが、街にいると、どうしてもランチが食べたくなるのはなんでだぜ?

 まぁいい。


 とりあえず魔術師ギルドで、寝台の清掃が終わったことを確認。


「一応確認なんですが、いま寝台を借りたとして、途中で外出しても問題ないですかね?」

「ええ。明日の清掃までは、10Gで使い放題よ」


 よしよし、じゃあ2~3時間休憩したら狩りに出よう。


**********


 ある程度MPを回復させた俺は、改めてジャイアントラビットの生息地を訪れた。

 とりあえず5mの位置から、獲物を狙う。


「え!?」


 魔力玉を出した時点で気付かれ、逃げられてしまった……。

 そうか、よくよく考えれば、魔力を多めに出してるわけだから、気付かれやすくなるのか。

 これは盲点だったぞ……。

 とりあえず魔力玉を霧散させ、今度は10mの位置で試してみる。


(この距離だと大丈夫か……)


 そのままの状態で少しずつ近づくと、大体7~8mくらいで気付かれることが分かった。


(この距離だと、ちょっと不安だなぁ)


 そこで今度は〈気配隠匿〉を意識しながら魔力玉を出してみる。


(ぐっ……! MP消費が激しいな)


 現状、魔力玉を出すだけなら、MP10くらいで出せるようになっているのだが、〈気配隠匿〉を意識すると50近く消費する。


(これでどこまで近づけるか……)


 足音にも気をつけつつ、獲物に近づく。

 〈気配隠匿〉を意識した状態だと、魔力玉を出してるだけで、どんどんMPが消費されていく。

 だがここは実験の意味もあるので、頑張って近づいてみる。


(よし、ここまで近づいたら、確実に仕留められるな)


 〈気配隠匿〉さえ意識しておけば、3mくらいまで近づいても気づかれない。


(よし……喰らえ!!)


 魔力玉で作った『魔弾もどき』を発射する。

 実際の銃弾の速度を知っているわけではないが、たぶんそれに劣らないであろう速度で、『魔弾もどき』がジャイアントラビットの後頭部を捉える。


 ――ドパァッ……!


 ジャイアントラビットの頭は『魔弾もどき』が当たると同時に爆散した。


「……なんちゅう威力」


 初めてってことで、ちょっと魔力込めすぎたかな。

 都合150近いMPを消費したわけだしな。

 仕留めた獲物を見に行こうと、一歩踏み出したところで、視界が暗転する。


「ぐぅ……」


 魔力酔いだな。

 踏ん張れば、なんとか気を取り戻せた。


 俺はその場に座って、『瞑想』を開始。

 これは魔力操作訓練中に発見した“MP回復速度があがる魔力の練り方”に、勝手に俺が名前をつけたものだ。

 回復速度があがると入っても微々たるもので、いまは魔力酔いを落ち着かせるためにやっている。


「……よし、だいぶ落ち着いてきたな」


 1分程度で目眩もなくなり、意識もしっかりしてきた。

 そもそもMP残量にまだ余裕はあるので、魔力酔いさえ治れば問題なく動き回れるのだ。

 ただ、それでももうMPは200を切っているので、あと1匹が限界だろう。


 とりあえず、いま頭を爆散させた獲物はいったん放置し、次の獲物を探す。

 今度は普通に気配を殺した状態で近づき、3mほどまで近づいた状態から、〈気配隠匿〉を意識する。

 その状態で『魔弾もどき』をさっきの3割くらいの威力を意識して発射。


「ギギッ……!」


 首の裏に当たった『魔弾もどき』は、そのまま喉を貫くだけにとどまった。

 魔力量を抑えてはみたものの、やはり〈気配隠匿〉を使いながらの魔法使用は難しいらしく、MPは80ほど消費してしまった。

 念のため立ったまま瞑想し、落ち着いてから獲物を拾う。

 2匹まとめて解体し、収納した。


 解体しながら《冷却》や《収納》を使ったけど、魔法に比べると魔術のMP消費って、ホント少ないんだよな。

 どれもこれも、ひと桁だよ。

 まあ生活魔術と攻撃魔法だから、比較にならんのかもしれんけど。


**********


 その日は素材を納品せず、魔術師ギルドに直行した。

 なんというか、この世界じゃ魔術は当たり前でも、魔法は特別って感じだから、なんとなく魔法を使えるってことは、隠しておきたいんだよね。

 で、武器レンタル無しで魔物を仕留めたとなると、どう思われるのか怖いので、明日は武器レンタルした上で2~3匹仕留めて、まとめて持って行こう。

 その日の夜は、手に魔力を纏わせる訓練を行ったが、結局うまくいかないまま、十一刻(22時)ごろにMP切れで気絶した。


《スキル習得》

〈気絶耐性〉

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