第293話、MID BOSS・『バシレウスルーム/KING or QUEEN』③/CODE00・INVOKE
三度目のオストローデ王城。
ブリュンヒルデは、アリアドネと出会った城の下層へ飛び、最下層の物置とやらに向かうことにした。
アリアドネ曰く、Type-KINGとType-QUEENは、オストローデ王城と同化しているらしい。Type-KINGが城を操作、Type-QUEENが補助をして、城そのものを操り、ブリュンヒルデを攻撃しているのだ。
なので、狙うは二体の電子頭脳。
広大なオストローデ王城にある、二体のアンドロイドの電子頭脳を破壊すればブリュンヒルデの勝利だ。
『…………』
ブリュンヒルデは、アリアドネがいた部屋を見回す。
ここからアリアドネは『
『最下層への道を発見……』
地下は、かなり入り組んでいる。
この部屋が安全なのは、アリアドネがいたからだろうか。ブリュンヒルデの存在は感知されているだろうが、特に攻撃はない。なので、地下へのルートを分析し、最短ルートで最下層へ。
『スキャン完了。これより最下層へ向かいます』
エクスカリヴァーンを着装形態にして、双剣を構えて部屋から出る。
すると、待ち伏せていたかのように、壁や天井からコードが伸び、鉄の杭やドリル、丸鋸のようなギミックが展開した。
『突破します』
ブリュンヒルデは、背中のブースターを噴かして罠に突っ込んだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
迫る罠は、ブリュンヒルデの敵ではない。
見える物体である以上、斬れない物はない。双剣で斬りまくり、上下左右から迫る罠やコード、杭や剣を破壊する。
マッピングした通路を進み、最下層へ。
そこにType-KINGとType-QUEENがいるかはわからない。だが、この『バシレウスルーム』を破壊しなくては、『
『最深部……』
そして、最深部。アリアドネ曰く『物置』に到着した。
普通に考えて、こんな最深部が物置なはずがない。頑丈で分厚い鉄扉、何十ものロックがかけられた扉だ。ジークルーネですら解錠に数時間はかかるだろう。
ブリュンヒルデは、双剣を扉に叩き付ける……が、全くのノーダメージだった。
『…………』
ブリュンヒルデは、エクスカリヴァーンを大剣モードに戻す。
『
『…………使うしかない、ですね』
ブリュンヒルデは、新しくインストールされた『新機能』を発動させた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『ヴァルキリーハーツ・アクセス。【
ブリュンヒルデは、ヴァルキリーハーツの深淵にアクセスする。
水晶のような部屋の中に、銀色の女性が座っていた。
女性は立ち上がると、『やれやれ、仕方ない』とばかりに立ち上がり、深淵に潜ったブリュンヒルデの頬に、そっと手を添える。
《私の出番かしら?》
『はい。お願いします』
《いいわ。でも……力を使うのはあなた。いいわね?》
『わかりました。あなたの力をお借りします』
《ええ。頑張ってね、ブリュンヒルデ……私の可愛い娘》
温かい力がブリュンヒルデの中に満ちる。
エクスカリヴァーンが今までと違う分解がされ、一部が鎧に、大部分が背中に、まるで翼のように変形していく。
手には、一本のロングソードが。銀色の髪が輝き、真紅の瞳が蒼穹に輝く。
code00ワルキューレの力。
戦乙女最強の姿。第三着装形態へと進化したブリュンヒルデ。
ゆっくりと鉄扉まで進み、進化したエクスカリヴァーン、【光輝剣コールブランド】をそっと鉄扉に触れさせた。
「分解」
コツッと剣先が鉄扉に触れた。
それだけで……分厚い鉄扉は、一瞬だけ発光して消えた。
これが【光輝剣コールブランド】の能力。
人も、アンドロイドも、魔術、あらゆる物。常識や理も、なにもかも分解してしまう。塞ぐ術は無い、絶対防御不可能の剣である。
触れれば終わり、鍔迫り合いなんて絶対にできない。僅かな切り傷で消滅してしまう無敵の剣で鉄扉を消したブリュンヒルデは、中へ進む。
「なるほど、ここが……」
物置などではなく、部屋は機械で埋め尽くされていた。
だが、これらは全てダミー。
ブリュンヒルデはコールブランドを振り、物置の機械を一瞬で消し去る。
残ったのは、最下層からさらに最下層へ続く道。機械で巧妙に隠された、真の最下層……つまり。
「『
すると、物置の壁がメギメギと変形していく。
鉄の壁が、まるでアンドロイドのような人型の巨人に変形し、ブリュンヒルデを押しつぶそうと迫ってくる。
よほど知られたくないのか。今までとは桁違いの激しさだった。
『ココカラ、デテイケェェェ~~~~~ッ!!』
「…………」
くぐもった男女の入り交じった声だ。
よく見ると、人型の巨人に妙なパーツが組み込まれている……あれは、ヴァンホーテンとカサンドラ……つまり、Type-KINGとType-QUEENの電子頭脳が組み込まれている本体。
二体は、ブリュンヒルデが近付かないように、ここを守っていたのだ。
だが、もう遅い。アリアドネの裏切りで全て台無しになった。
「索敵開始……完了」
ブリュンヒルデは背中の翼を展開。着装形態のブースター以上の推進力を持って、一瞬で人型の巨人の懐へ潜り込み、左手を巨人の心臓部分に突っ込むと、そのままバキバキブチブチと音を立てながら引き抜いた。
「あなたたちは敗北しました。残念でしたね」
ブリュンヒルデの手には、2枚のチップが握られていた。
Type-KINGヴァンホーテンとType-QUEENカサンドラの電子頭脳。つまり、『バシレウスルーム』の起動の要。
ブリュンヒルデはType-KINGの電子頭脳を握り潰すと、巨人の動きが停止した。
「こちらは、まだ破壊しません。何かに使えるかもしれないので」
『…………』
喋ることのできないただの電子頭脳は、何を思うのか。
こうして、Type-KINGヴァンホーテンは破壊され、Type-QUEENカサンドラは電子頭脳を取り出されて停止した。
『バシレウスルーム』は停止。ブリュンヒルデの勝利である。
「センセイ、私……勝ちました」
ブリュンヒルデは、小さく微笑んだ。
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