第十五話 ヴァネッサとガルトの剣



 冒険者ギルドの裏には訓練場が備えつけられている。

 大抵は冒険者がクエスト前の調整に使ったり、戦闘職入門などでギルド側が適性や実力を確認するために使われる。

 その場所で、アヤメとヴァネッサが決闘を行うのだが、こういった場面は、基本的には見られない。

 冒険者同士の戦いは危険が付き物だ。些細なケンカで決闘に発展し、命を落としたという実例が昔は多かった。それを良しとしない声が増え、今では余程のことがない限り、決闘が許可されることはない。


「――それがこうもすんなり許可されるなんて、ある意味凄いわね」


 訓練場のフィールドの中央で、アヤメがボソッと呟いた。たまたま近づいてきたニーナがそれを聞き、苦笑しながら言う。


「ヴァネッサさんは後ろ盾が強いですから。ギルドでの評価が王宮にも届き、今では彼女の一声で、王宮の重鎮さんや貴族の一部が動くことも、そう珍しくはないと言われてますし」

「つまり、すんなり許可を出さないと、後々面倒になりかねない?」

「そんな感じですね」

「なるほど」


 アヤメが納得だと頷いたその時――


「随分と余裕があるようね。ムダなお喋りは、一体いつ終わるのかしら?」


 ヴァネッサが腕を組みながら、冷たい視線とともにそう言ってきた。


「全くニーナさんも、受付嬢としてもう少しちゃんとして――」

「し、失礼しましたあぁ~!」


 ニーナは慌ててアヤメから離れ、フィールドの外へ走っていく。完全に言葉を遮られる形となり、ヴァネッサは別の意味で苛立ちを急速に募らせるが、なんとかそれを押し込めようと咳ばらいを一つする。


「……まぁ、いいわ。早く始めましょう」


 平常心を取り戻しつつ、ヴァネッサはフィールドの中央へ歩いていく。アヤメも同じように歩いていこうとしたその時だった。


(あ、ミナヅキ……)


 ギャラリーの後ろでひっそりと立つ旦那の姿に、アヤメが気づく。そしてミナヅキが小さな笑みとともに、軽く手を挙げた。

 どことなく抱いていた不安が吹き飛んだような気がした。

 アヤメは改めて表情を引き締め、堂々とヴァネッサの前に立つ。

 二人が並んだところで、審判を務めるギルドマスターことソウイチがゆっくりと歩み出てきた。


「ふむ、あまり穏やかではないし、私としても気は進まないのだがな」

「これは正式な決闘です。気分で決めて良いモノではないと私は思いますが」

「分かっているよ」


 ヴァネッサの冷たい視線をサラッと躱すソウイチに、アヤメは思わず驚きと尊敬の念を抱いてしまった。

 ソウイチもアヤメが注目していることに気づき、視線を向ける。


「どうかしたかね?」

「え? あ、いや、その、ギャラリーが増えてるけど、良いのかなーって……」


 アヤメの言うとおり、確かにロビーにいた冒険者の何人かが、アヤメたちの決闘を見物するべく顔を出している。

 この場にいて何も言われていないのだから、普通に良いに決まっている。

 そう思いながらアヤメは少し後悔した。誤魔化すにしても、流石にどうでも良すぎる質問だったかと。

 案の定ヴァネッサは、くだらないことをと言わんばかりに半目を向けるが、ソウイチは特に気にする素振りも見せず、あーなるほどと呟きながら言った。


「別に見ることを制限はしてないからね。冒険者たちにとってもいい勉強になるということで、むしろ見学は推奨しているくらいなんだよ」

「はぁ、そうなんですね」


 やっぱりかと思いながらアヤメが素直に納得していると、ヴァネッサが再び見下す笑みを浮かべてくる。


「フフッ、そんなにギャラリーを恐れる必要はないわ。どうせ皆、私を見るためにここへ来ているのだから、あなたが気にする必要はこれっぽっちもないのよ」

「あ、はい、それはどうもです」


 アヤメは軽く頭を下げながら淡々と言った。ここで放ったらかしにして好き勝手言わせ続けたら、いつまでたっても話が進まない。そう思ったからだ。

 その思惑は成功したのか、ヴァネッサはどこか面白くなさそうに顔をしかめ、ソウイチを軽く睨む。さっさと始めろと無言の圧を込めて。

 それに対してもソウイチは軽く流しつつ、両手を挙げながら声を上げる。


「これより、ヴァネッサとアヤメによる決闘を始める。魔法は禁止、剣のみの打ち合いで、どちらかの剣がはじかれた時点で終了。双方よろしいかな?」


 ソウイチの問いかけに、アヤメとヴァネッサは頷く。


「それでは――始めっ!!」


 決闘開始と同時に、訓練場全体の空気がガラリと変わった。

 先に動き出したのはヴァネッサだった。ギィン、という音が響き渡ると同時に、バックステップで下がる。

 なんとか剣で受け止めたアヤメは、手に痺れを感じた。やはり高ランクの腕利きは伊達ではない。そう思いながらも足を踏み出す。

 勢いよく振り下ろした剣を、ヴァネッサは素直に受け止めた。

 否――素直過ぎるといっても過言ではない。あからさまな一直線の動きゆえに、余裕で躱すことはできたハズであった。

 その瞬間、ヴァネッサはニヤリと笑みを浮かべる。

 同時に剣をはじく鈍い音が響き渡った。しかしアヤメの手には、まだしっかりと剣が握られている。勝負はまだ決していない。


「流石にこの程度では、手を放してくれないみたいね」

「……やっぱり試してたんだ」


 軽く息を乱すアヤメとは対照に、ヴァネッサは涼しげな笑みを浮かべたままだ。強がりなどではない。自分にはこれほどの余裕があるんだぞと、アヤメに見せつけているのだ。

 アヤメは剣を握り直し、もう一度立ち向かう。

 剣と剣のぶつかり合う音が響き渡る中、ギャラリーは驚きの表情を浮かべる。

 一瞬でケリがつくことだけは避けて欲しいと思っていた。しかしまさか、ここまでアヤメが粘るとは思わなかった、と。

 しかし――


「ふっ!!」


 ヴァネッサの振り上げた剣が、アヤメの剣を空中へ飛ばす。その剣はフィールドに突き刺さり――鈍い音とともに折れた。


「そこまで! この勝負、ヴァネッサの勝利とする!」


 ソウイチの掛け声により、決闘は終了した。

 アヤメはそのまま腰を抜かして座り込み、ニーナが慌てて駆け寄る。その姿を見ながら、ギャラリーもポツポツと声を出し始めた。


「ま、まぁ、予想どおりではあったよな?」

「あぁ、流石にヴァネッサさんが相手ともなれば、なぁ……」

「それに剣まで折っちまったし」

「やっぱスゲェんだな、あの人って」


 自然とその声が、勝利した本人の耳にも入ってくる。


(そうよそうよ。私とあの子じゃ経験値の差は歴然。負けるワケがないのよ!)


 ゆっくりと剣を収めつつ、ヴァネッサはひっそりと笑みを浮かべた。

 すると――


「でもアヤメちゃん、見た感じ結構食らいついてたよな?」

「あ、それあたしも思ってた!」


 聞き捨てならない言葉が聞こえてきた。ヴァネッサは動きをピタッと止め、そのまま耳を澄ませてみる。


「意外とヴァネッサさんにすぐ追いつくかもね。アヤメちゃん、努力家だし」

「確かに色々とやってるわよね。何気に侮れない根性してるよあの子は」

「ヴァネッサさんにはない強さを、あの子は持ってるよねー」

「シーッ! もっと小声で話しなよ。ヴァネッサさんに聞こえちゃうってば!」

「あ、やっば! 早く行こ!」


 そしてギャラリーは、さっさとギルドの中へと引っ込んでいく。

 ヴァネッサは自然と苛立ちを募らせており、拳を小さく震わせていた。それでもなんとか落ち着かせ、ようやく立ち上がったアヤメを見る。


「本当なら決闘に勝った証として、あなたの剣をもらおうと思ってたけど……今回は特別に見逃してあげるわ。せいぜい感謝することね」


 告げるだけ告げてヴァネッサは訓練場を去る。ギルドのロビーへ続く薄暗い廊下を歩きながら、決闘の決着の瞬間を思い出していた。


(ガルトさんの剣を私が自分の剣でへし折った。つまり私には、それだけの実力があるということよ。この結果をガルトさんに売り込み、今度こそ最高の剣を打ってもらうわ! 剣を渡す相手を間違えたと、今こそハッキリ教えるときよ!)


 ヴァネッサは気合いを込めながらロビーに出る。その場にいた冒険者たちは皆、彼女の姿に戦慄を覚え目を逸らすが、今のヴァネッサは剣を打ってもらうことで頭がいっぱいであり、気にする余裕はなかった。

 そして、まだ訓練場に残っているギャラリーの一人であったミナヅキは――


「結局ヴァネッサのヤツ、一体何がしたかったんだろ?」


 どうにも疑問が拭えないまま、アヤメの元へと歩いていくのだった。



 ◇ ◇ ◇



 王都の表通りに面している広場。そこのベンチに座り、子供たちが楽しそうに遊ぶ姿を眺めながら、ミナヅキはアヤメから事の次第を改めて聞いていた。


「――というワケで、見事に負けちゃいました」

「お疲れさん」


 軽く労いの言葉をかけつつ、ミナヅキは率直に思ったことを言う。


「つーか、今回は圧倒的にお前のほうが不利だったろ。魔法は使えないし、代わりの剣だったし、そもそも得意分野の武器ですらなかったワケだし」

「それでも負けは負けよ」


 何かを押し殺すような口調でアヤメが呟いた。それが何を意味しているのか、ミナヅキもなんとなく察していたが、特に深く掘り下げるつもりもなく――


「そうか」


 と、一言頷くだけに留まるのだった。

 すると今度は、アヤメがミナヅキに顔を向けてくる。


「ねぇ、今更だけど、別にギルドのロビーとかでも良かったんじゃない? わざわざこんなところまで来なくてもさ」

「って言われてもな……あの状況じゃ、こっちが落ち着かないよ」


 ミナヅキは空を仰ぎながら少し前のことを思い出す。

 ヴァネッサとの決闘が終わり、ミナヅキとアヤメが合流した。そこでソウイチから言われたのだ。急用のため、話の続きはまた今度にしてほしいと。

 仕方がないと思いながらロビーに戻ると、そこはそこで異様な空気であった。

 露骨なヒソヒソ話や視線を向けてくる姿が目立ち、どうにも居心地が悪い。状況的に無理もないことは分かっていたが、それでもミナヅキからすれば、落ち着いて話ができる環境とは言えなかった。

 ――この様子だと、外に出たほうが落ち着いて話せそうだ。

 そう思ったミナヅキは、アヤメを連れてギルドを後にし、気分転換を兼ねて二人で散歩しつつ、話をまとめることにしたのである。


「やっぱ分かんねぇんだよなぁ。ヴァネッサのヤツが何をしたかったのか……」


 ミナヅキが呟くと、アヤメが苦笑しながら言う。


「要はアレよ。私がガルトさんに剣を打ってもらったのが、気に入らなかったんだってさ」

「……そんなくだらん理由で突っかかってきたのか、あの女は?」

「突っかかる理由なんて大抵そんなもんよ」


 呆れ果てた表情をするミナヅキに、アヤメが苦笑しながら言う。


「まぁ私はともかく、あの子に振り回されるギルマスさんも大変よね」

「良くも悪くも、ヴァネッサは顔が広いらしいからな」


 ヴァネッサが強い後ろ盾を持っていることは、ミナヅキもフィリーネからウワサ程度に聞いたことはあった。

 もはやギルドマスターのソウイチですら、迂闊に手が出せない状態というウワサも流れているが、真相は定かではない。ただミナヅキは、まんざらあり得ない話でもなさそうだとは思っているのだが。


「そういや俺、ヴァネッサがロビーに戻っていくとき、すっごい嬉しそうにドヤ顔してるのを見たんだけどさ」


 その時の光景を思い出しながら、ミナヅキが言う。


「まさかとは思うけど、お前が持ってた剣をへし折ったからってことは……」

「あ、多分その可能性高いかも」


 サラリと言い放つアヤメに、ミナヅキは目を丸くする。


「……マジ?」

「うん。だって私、あの剣が間に合わせのナマクラだって、言った覚えないし」


 そうなのだ。アヤメがガルトからもらったのは、あくまで代わりの剣。本命が打ち終わるまでの繋ぎモノでしかない。

 恐らくヴァネッサは、新品同様の剣を折ったのだと思い込んでいるだろう。あるいは新品をすぐにダメにしてしまうほど、アヤメの剣の腕が良くないと思い込ませてしまったか。

 どちらもあり得そうだとミナヅキが思う中、アヤメのため息が聞こえてきた。


「でも、私が言ったところで、多分ヴァネッサさんは信じなかったと思う」

「ハハッ、あり得るな」


 ミナヅキもその光景が容易に想像できてしまい、思わず笑ってしまう。


「にしても、ガルトさんも人が悪いぜ。どうせくれるんなら、もう少し良さげなのをくれたって良いのにな」

「ううん、アレは私が選んだのよ。三本の中から好きなの選べって言われてね」

「……そうなのか?」

「うん」


 目を見開いて顔を向けるミナヅキに、アヤメが頷く。


「それで選んだのが、これまた見事なナマクラだったのよね。繋ぎだからこれでいいやって思って、そのままもらったんだけど」

「ふーん」


 生返事しながらミナヅキはふと思い出す。


(……そういえばアヤメって、割と勘が鋭いところあるんだよな)


 今のアヤメの話を聞いて、何故それを思い出したのか。ミナヅキは少し考えてみたが、答えがまとまることはなかった。



 ◇ ◇ ◇



「ガルトさーん、ヴァネッサさんはお帰りになられました?」

「おぅ。今しがたな。つかベンジー、お前こそ何で席を外したよ? 別にここにいても邪魔にはならんかったぞ」

「いやぁ……なんかあの人、結構ニガテで……」


 生産工房の鍛冶場スペースに戻ってきた鍛冶師の少年ベンジーが、ガルトの言葉に苦笑する。


「ところでさっき、ヴァネッサさんが意気揚々と工房を出ていくのが見えましたけど、剣でも与えたんですか?」

「あぁ。こないだお前さんが練習で仕上げたヤツをな」


 サラッと答えるガルトに、ベンジーは言葉のとおり受け取り、笑顔で頷く。


「なるほど、形を覚えるために、寄せ集めの材料で作った剣を……えっ?」


 そして少し遅れて事実に気づいたベンジーが、凄まじい形相に切り替えながらガルトに詰め寄った。


「いやいやいや! 何であんなモノをあげちゃったんですか!? せめてちゃんとガルトさんが打った剣をあげてくださいよ! これでヴァネッサさんに、もしものことがあったりしたら……」

「誤解するんじゃねぇよ。あの嬢ちゃんが自分でそれを選んだんだ」

「へっ?」


 再び呆けてしまうベンジー。まさかヴァネッサが自分の剣を――と、ベンジーは一瞬考えたが、それは流石にあり得ないだろうと思った。

 そこである一つの考えに辿り着き、ベンジーは小さなため息をついた。


「試したんですね? アヤメさんの時と同じように」

「そういうこった」


 ガルトはハンマーを置き、傍に置いてある飲み物のボトルを手に取る。


「なかなか終始、滑稽なもんだったぞ。ここに来た瞬間、俺が打った剣を自分の剣でへし折ってやったと、これ見よがしに自慢してきやがったんだ」

「……それ、普通に凄いことじゃないですか。ガルトさんの剣を折るなんて、並大抵の実力じゃできないことですよ?」

「その折った剣が、さっき俺がアヤメの嬢ちゃんにやった物だとしてもか?」

「あー」


 ベンジーはなんとなく読めてしまった。


「要するにヴァネッサさんは、そのへし折ったのがナマクラだってことに、まるで気づいていなかったと。じゃあガルトさんが試したのも……」

「おうよ。もしかしたらと思って三本の中から選ばせてやった。そしたら一発で当てやがったよ……ナマクラ以前に、俺が打ったモノですらない剣をな」

「ありゃりゃ」

「ホントにありゃりゃ、だよな」


 愉快そうにケラケラと笑いながら、ガルトはボトルの中身をあおる。


「ちなみにベンジー。お前はアヤメの嬢ちゃんが、ここで剣を選んだ時のことを覚えてるか?」

「覚えてますよ。彼女もナマクラを選びましたよね。それもあえて」

「あぁ。少なくとも三本の中で、一番質が悪いことを見抜いて選んだんだ。しかも本人の得意武器に当てはまらない剣をな」


 どうせ繋ぎなのでこれで十分ですよ――アヤメが笑顔でそう言っていたのを、二人は思い出していた。


「一番良質なのは分からなかったそうですけど」

「その逆が分かっただけでも凄いだろ」

「確かに……それでガルトさんは、アヤメさんの剣を本気で仕上げる気になったんですよね」


 ベンジーが作成途中である『短剣』を見下ろしながら尋ねる。


「あぁ。当初は普通程度で仕上げるつもりだったが、あんな面白いもんを見せられちまったからな。気が変わった」


 心から楽しそうに笑うガルトだったが、その表情はすぐに鳴りを潜めた。


「それはともかくとして、ヴァネッサの嬢ちゃんも先が知れてるな。ありゃ長くはもたねぇぞ」


 ガルトはどこか疲れたようなため息をつく。それほどだったのかと思いながら、気になっていたことをベンジーは尋ねてみることにした。


「一応、念のために聞きますが、ヴァネッサさんもあえてハズレを選んだ、ということですかね?」

「……もしそうだったら、どれほどマシだっただろうな」

「やっぱり」


 ベンジーも呆れ果てた表情を浮かべた。つまりヴァネッサは、上質か否かは勿論のこと、ガルト本人が打った剣かどうかすらも、全くといって良いほど見極められなかったということだ。

 しかも率先して、本人のモノじゃないナマクラ品を選んでしまうとは。


「前々から思ってましたけど、あの人って剣を見る目が全然ないですよね」

「あぁ。今回ばかりは流石に目を疑ったぜ。よくあんなのがギルドで高ランクを取得できたもんだ」

「全くですね」


 ベンジーが同意の頷きを返し、そして軽く表情を引き締める。


「でもやっぱり心配ですよ。いくらヴァネッサさんが自分で選んだとはいえ、粗悪品を見せたということに変わりはありません。もし何かあれば、ガルトさんに矛先が向かう可能性も、かなり高いんじゃないでしょうか?」


 ベンジーは本気でそう言っている。心配してくれている。ガルトの心にしっかりと響いてきていた。

 少しばかり照れくさい気分に駆られつつも、ガルトはどこか浮かない様子で、再びボトルの中身を飲む。


「それで済めばまだマシかもしれんがな。どうにも嫌な予感がしやがる」


 ガルトは言い終わると同時に立ち上がり、再び作業に戻る。それってどういうことですかと、ベンジーが聞けるような空気ではなかった。


 そしてその夜――ギルドからウワサが一つ工房へと飛び込んでくる。

 ヴァネッサが討伐クエストに失敗し、そのまま行方不明になってしまったと。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る