第6話

なんだかんだあったが、みんなサッパリとした顔でお風呂から出て来た。その後は二つの部屋に別れて就寝準備に入るのだが・・・・・・。


「ねぇみんな。私聞きたい事があるんだけど、聞いても良いかなぁ?」


「ん? 何かしら?」


「なんで私のベッドに入っているのかなぁ?」


俺の部屋にはリズリナさんとミュリーナさんがいて、客室の方には美羽さんと伊織ちゃん。それにエイミーさんがいる。


「「まぁまぁ」」


「まぁまぁ。じゃないよ!」


せっかく二人の為に布団を用意したのに、これじゃあ意味ないじゃん! 後、ミュリーナさんが俺の胸を揉んで遊んでいるし!


「二人共、眠る気があるんですか?」


「うん、あるよ」


「私はもう少し楽しんでから寝るから。気にせず眠って」


いやいや! 揉まれているのは俺なんだから、気にしない方がおかしいって!


「とにかく、ミュリーナさんは私の胸を揉むのを止めてください!」


「ええ〜っ!? いいじゃないのぉ。女の子同士なんだからぁ」


そういう問題じゃないんですよ。そういう問題じゃねぇ!


「そうですよ。エルちゃんの胸を揉むのは羨ましいけど、気になって眠れなくなっちゃいますよ」


「それもそうね」


ミュリーナさんはそう言うと、揉むのを止めてくれた。


「全く。これだけ胸があるのに告白しないなんて、世の中の男達は目がないのかしら?」


「ミュリーナさん。私、男性から告白を受けた事ありますよ」


「そうなの?」


「そうだよ。私、エルちゃんが告白されてるのを見た事あるもん」


そうだな。リズリナさんと遊んでいる時に、告白された事が何度かあったな。


「それであっさり断れて終わるのがオチになってたよ」


まぁ、身も知らない男性と付き合うのは、俺嫌だもん。


「ハァ〜・・・・・・エルライナの心を射止める男性は、どこの誰なのかしらねぇ〜」


「どこかの貴族かも」


「ひょっとしたら、王族かもしれないわよ」


「いやいやいや、私を無視して勝手な話をしないでください」


つーか、なんで貴族とか王族が出てくるんだよ。


「そうね。エルライナが誰と結婚をするのか、その時までのお楽しみにしておきましょうか」


「賛成! それじゃそろそろ寝よっか」


「おやすみ!」


「おやすみ」


リズリナさんとミュリーナさんはそう言うと、目を閉じてしまう。


結局二人共、勝手に話をして眠っちゃったよ。


「・・・・・・おやすみ」


そう言ってから、俺も眠りに着いたのだが。


む? むむむ? なんか身体が変だぞ。


そう思いながら目を開けて見てみると、なんと黒い影が三つも増えていた!


「んんんっ?」


目を凝らして見てみると、なんとエイミーさんに美羽さん。それに伊織ちゃんだったのだ!


なんでこんなところにいるっ!? しかも俺にピタッと張りついてるし!


「これじゃ動けない」


そう言ったら、脚にくっついていた美羽さんが寝返りをしようとしたのか、脚を引っ張って来た。


イヤイヤイヤイヤッ!? 待ってくれ! そんな事をしたら、俺の脚が洒落にならないって!


なんとか抵抗して防いだものの、今度はリズリナさんの手が俺の顔に覆い被さって来た。


「ワプッ!?」


なんなんだよ。もぉ〜!


そんな事を思いながら、リズリナさんの手を退けた。


これじゃ、安眠出来ないぞ。


この状況に危機感を感じたので、ベッドから出てリビングへと向かい、ソファーの上で横になった。


ここ、俺の家だよな? 家の主人の俺が、なんでこんなところで寝なきゃいけないんだ?


そんな事を思っていたら、すぐに微睡み、眠りに着いた。


・・・・・・ん? 誰だ? 身体を揺すってくるのは?


身体を起こして見てみると、笑顔のリズリナさんと目が合った。


「おはよう。エルちゃん!」


「おはよう、リズリナさん。朝早いんですね」


「エルちゃんが朝早いって聞いたから、起きるのを合わせたんだけどぉ」


ああ、俺に合わせて起きたのね。


「いえ・・・・・・・もう少し遅い時間に起きてます」


時間を見てみると、五時丁度。後、三十分は眠りたかった。


「エルちゃんどうするの? このままトレーニングに行くの?」


「何も口にしないでトレーニングするのは良くないので、少し食べてから行きますよ」


そう言ってから起き上がり、チョコと牛乳を飲んでからトレーニングウェアに着替えて髪を一つに纏めた。


「それじゃ、行って来ます」


「帰ったら髪を梳かしてあげるからねぇ!」


リズリナさんの声を聞いた後、外で準備体操をしてから、いつものトレーニングに励んだ。

そしてトレーニング終了後に、リズリナさん達から おかえり。 の言葉を受ける。


「シャワー浴びてくるよ」


「それじゃあ、私が身体を洗い流してあげようと思って」


「汗を流すだけなので要りません!」


って言うか、なんでやらしい顔をしているのかなぁ?


「そうなんだ。なら身体を拭いてあげるね」


「それは・・・・・・お、お願いします」


なんだろう。断ったら泣きそうな気がする。


「やったぁ! これでエルちゃんに、少し恩返しが出来る!」


恩返し? ああ、そういえばリズリナさんを二回も助けたもんな。


「別に気にしなくても良いんですけど」


「エルちゃんはそう思うかもしれないけど、私にとっては大きな事だからね。朝食は私が作るから、楽しみにしててね!」


「あ、はい」


・・・・・・恩に関しては、そういう事にしておこう。


ニコニコ笑顔で見つめているリズリナさんを他所に、シャワーを浴びに浴室の方に向かうと、美羽さんとバッタリ会った。


「おはよう、美羽さん」


「おはようエルライナ。リズリナは?」


「リズリナさんならリビングにいますよ。伊織ちゃんを見てない気がするんですけどぉ。もしかして、まだ眠っていますか?」


俺がそう聞くと、美羽さんは欠伸をしてから答える。


「ああ、うん。伊織なら、まだ寝てるわ。もしかして、もう朝食が出来てるの?」


「確認しただけなので、そのまま寝かせてて大丈夫ですよ」


それに今起こしたら、可哀想だし。


「それじゃあ、私は汗を流しにお風呂場に行きますね」


美羽さんは、俺がトレーニングウェアを着ている事に今気づいた様子を見せると、横に動いて進める様にしてくれる。


「お風呂を堪能してね」


「シャワー浴びるだけなので、出るのは早いですよ」


そう言うと俺は浴室に向かい、シャワーを汗を流した。


「・・・・・・こんな幸せな日々がいつまで続くんだろうか」


髪を乾かしながら前世の事を思い出していたら、ふと言葉に出て来てしまった。


弟は死んで、ろくでもない両親も死んだ。その上、虐めていた連中はこの世界に来たのだけれども、自業自得なのか、自分の足元がおぼつかない状況に立たされていが、中にはまともな人達がいたのは嬉しかった。


「魔人達の根城に行く時、彼らも来るのかな?」


そうだとしたら、ただの荷物になるんじゃないか? それに一番気になるのは、岡野と猪瀬の二人だ。


「岡野の方は再起不能気味だから大丈夫だと思うけど、猪瀬の方は戦う前から足を引っ張ろうとしないよね?」


また城壁の様な事を言い出したら、顔をグーで殴り倒そうか。


そんな事を思っていると洗面室のドアを開く音がしたので、振り返って見る。


「あ、エイミーさん。おはようございます」


「おはよう、エルライナ」


こっちにくるって事は、もしかしてお風呂に入る気なのか?


「エイミーさん。私はお風呂から出たので、入っても大丈夫ですよ」


「ああ、違うわ。アナタの髪を梳かしてあげようと思ったから、ここに来たのよ」


俺の髪を?


「そんな事をしたら、リズリナさんが怒っちゃいますよ」


「良いのよ。リズリナはミウと楽しく料理をしているから。きっと忘れているわよ」


エイミーさんはそう言うと俺の後ろに立ち、ブラシで髪を梳かしてくれた。その後リビングへと行ったら、リズリナさんが怒ったのは言うまでもない。

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