第4話

こうして美羽さん達が参戦の、お泊まり会が始まった。


「それでねぇ。エルちゃんが助けてくれたんだよ!」


ああ〜懐かしい。オークからリズリナさん達を助けた時、そんな感じだったなぁ。


「そうなんですかぁ。ホント、エルライナなら、なんでも出来そうな気がするわ」


「戦えるし、料理は出来るし、なによりも強いし頼りになるし」


「そんな事はありませんよ」


現に魔法が使えない人間なんだから。


「そんな事を言っちゃってぇ。本当は嬉しいんでしょ?」


うん、その通り。だから必死に堪えているんだよ。


「そういえば、ダイキって子はどうしたの?」


「ん。大輝ならグエルって人に連れて行かれた」


「なんでも、飲み会しようって事らしいわ。まぁ大輝の事だから、楽しんでいるんじゃないかしら」


日本じゃ未成年って事で飲めないんだけど。この世界は15歳が成人だからなぁ・・・・・・って、ちょっと待てよ。


「大輝くんって、お酒が好きなんですか」


「ん〜・・・・・・どちらかと言うと、苦手な方だった気がする」


「お酒よりも場の雰囲気を楽しむタイプで、飲むよりも楽しく話をする方かも」


「ああ〜、そうなんだ」


お酒が苦手でも、大輝くんが楽しそうにしてるのなら、気に掛けなくてもいいか。


「それよりも、エルライナは気になる人はいるのぉ?」


「気になる人ですか?」


気になる人。この場で言うと、好きな人って事になるよな。


「気になる人はいませんよ」


「じゃあ、例えば好みのタイプは?」


「歳上のダンディな人」


「ええっ!? そうなの? キースとデートしていたって話を聞いていたから、てっきり好みだと・・・・・・」


「あれはキースさんに無理矢理デートに誘われただけです!」


あの時はだけは、断れなかったんだよ!


「そうなんだぁ。じゃあ、エルライナの事を気にしていた兵士達は、諦めなきゃいけないわね?」


「え? どうして兵士達の話が出てくるんですか?」


「それはだって、兵士達の間で人気よ。アナタ」


「それにエルライナは戦の女神って言われているのよ。戦いを始める前に、アナタに祈りを捧げるのよ」


マジですか?


「祈る時も、エルちゃんの名前を出してるのよ。もしかしたら握手とか求められるかもしれないよ」


それもマジですか!


「エルライナのファンは沢山いるからねぇ」


「うん。大輝もその一人。だから会うたびに嬉しそうな顔をしているし、なによりも終わった後に嬉しそうに身体をクネクネさせてるから、正直言って

ウザイ」


「私もその姿を見るたびに、キモいから止めて。 って言いたくなる」


うん、そうだろうね。


「大輝くんはともかく、美羽さんや伊織ちゃんは、誰か好きな人がいるの?」


「大輝」


おう、ストレートに言うね伊織ちゃん。


「えっとぉ〜・・・・・・大輝?」


「なんで疑問系なんですか?」


「いやだって、なんだか最近、変になって来ているから」


う〜ん。コメントしづらいなぁ。とにかく、良かったね大輝くん。美羽さん達に嫌われなくて・・・・・・好感度は低いけど。


「リズリナさんは気になる人いるの?」


「エルちゃん!」


そう言って抱きついて来たので、呆れた顔になってしまう。


「なんで私の名前が出てくるんですか?」


普通は異性でしょ。


「ええ〜! 二回も助けられて、好きにならない方がおかしくない?」


「う〜ん?」


異性の人ならともかく、同性の人に助けられて好きになるものなのか?


「それにさっきも言ったけど、エルちゃんと一緒になればこの家に住めるし」


前言撤回! 最低だこの人!


「エイミーさんは、誰か気になる人いますか?」


「婚約者がいるんだけど、今この状況だから中々会えないのよねぇ」


「えっ!?」


「ウソッ!?」


いや、なんでミュリーナさんが驚いているんだよ。


「エイミー、アナタ婚約者がいたの?」


「ああ〜。ミュリーナには話していなかったわねぇ」


「素敵な男性でしたよ」


あ、リズリナさんは会った事あるんだ。


「クゥ〜ッ!? さては私に取られると心配したから、話さなかっ他のね!」


「いいえ。話す機会がなかっただけよ。だからそんな恐い顔をしないで」


うん。ミュリーナさんが悔しそうな顔をしてる。


「早く良い人を見つけろ。って、私だって分かっているわよ! でも良い人がいないから、こんな事になっているんじゃない!

だったら、良い人を紹介しなさいよ! クソババァ!?」


そう言って、暴走を始めるミュリーナさんを見て、俺達はドン引きしてしまう。


ああ〜。これは聞くまでもなさそう。


「まぁ、良い人がいたら紹介しますよ」


「そんな事言って! どうせ嫌味でしょ!」


そう言うと俺の胸に飛び込んで来た。しかも、胸を揉んでいる。


「この胸か! やはりこの胸が兵士達を魅了をするのかぁ!?」


「ちょっ! 止めて下さいよっ!! てか、胸を揉むのを楽しんでいませんか?」


「あ、バレた?」


バレたじゃないですよ! バレたじゃ!


「・・・・・・やっぱり、大輝も胸の大きい娘が好き?」


「う〜ん。そこら辺は確認してみないと分からないわね」


大輝くん気をつけろ。男としての器が試されるぞ。それと、もう胸を触るのを止めて欲しい。


「ちょっと失礼」


美羽さんはそう言うと、俺の胸に触れて来た。


「ちょっ、なにをしているんですかっ?」


「う〜ん。やっぱり胸が大きいと触り御ごちが良いわね。それに手の形に合わせて・・・・・・」


「ちょっと、止めて下さいよ!」


「良いじゃない。女の子同士なんだから」


ムッ!? ミュリーナさんと同じ事を言うか。だったら!


「それなら私も触る!」


そう言ってから、近くにいるミュリーナさんと美羽さんの胸に手を置く。


「キャッ!?」


「ひゃぁっ!?」


うむ、自分の胸しか触った事がないから分からなかったけど、人によって違うんだなぁ。


「美羽さんの方は、肋骨に当たりますね」


「嫌味を言ってるの?」


いや、そういうわけじゃないからさ。手を緩めてくれるかな? 痛いよ。


「う〜・・・・・・」


伊織ちゃんは自分の胸を見つめて触っていると、エイミーさんに肩を置かれた。


「同情ならいらない」


「そう?」


なんだろう。伊織ちゃんに睨まれている気がしてならない。


「私が男だったら、とんでもない事が起きていた気がする」


「そうね。そろそろ止めてくれないかしら」


ミュリーナさんに言われた通りに胸から手を離すと、イスに座り直す。


「そういえば、夕ご飯を考えていなかった。どうします?」


「またすき焼きが食べたい」


すき焼きを食べたいか。


「寿司をご所望」


伊織ちゃん。それは俺だけが苦労するから却下するよ。


「私は・・・・・・みんなで食べられるものなら、なんでも良いわ」


美羽さんマジ天使です!


「良い子ぶっちゃって、そう言っておけば、エルライナが自分の好きなものを作ってくれるってるんでしょ?」


「そ、そんな事はありませんよ」


ウソだ。だって目が泳いでいるもん。


「ハァ〜・・・・・・結局、皆さんは私が作る前提で話してませんか?」


「うん。だってエルライナが作る料理は、美味しいしねぇ?」


「そうよ。下手したら、そこら辺で店よりも美味しいわよ」


「すき焼き美味しかったなぁ〜」


それは作ってくれと言ってるんですか。リズリナさん?


「パスタは?」


麺とソースがあれば完成するシンプルなやつ。


「却下。どこでも食べられる」


「主食だから、食べ飽きてる」


「お米と合う料理をお願いします」


そう来たか。だったら、あれを作ろうか。


「今日の夕ご飯はあれにしますか」


「え? なにを作るの?」


「それは出来てからのお楽しみ。美羽さん、手伝ってください」


「え? 私切るだけしか出来ないよ」


「切るだけで良い料理なんで大丈夫ですよ」


あの料理に難しいところはないしな。


「そう。なら手伝うわ」


俺は料理をする為に、美羽さんを連れて台所へと向かうのだった。

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