第51話

侵入をしようとして来た魔物達を倒した俺は、すぐに兵士達に向かって指示を飛ばした。


「今すぐに防衛陣を築いてください!」


「おう分かった! 行くぞお前らぁ!」


『オーッ!?』


兵士達はそう言うと、先ほど倒した魔物の亡骸を踏んだり退かしたりしてから、今度こそ侵入されない様に防衛陣形を築き上げた。


「ここはこれで良しかな?」


「みたいですね。念の為に兵士に一声かけてから戻りましょう」


「うん」


そう返事をしてから、十発ほどしかない弾を念の為に取り替えている途中だった。


「あの、すみません!」


「ん?」


後ろを振り返って見てみると、勇者達が俺の側までやって来ていたのだった。


「それ・・・・・・銃ですよね?」


「そうだけど、それがどうしたの?」


「なんでエルライナさんが銃を持っているんですか?」


学級委員がそう言うと、他の連中も うんうん。 と頷いていた。


「今は説明をしている暇がないから、戦いに集中して」


「えっ!? でも・・・・・・」


面倒くさいなぁ〜。あ、魔鳥がいる。


上空を飛んでいた魔鳥をMG42で撃ち落とした後に、ビビっている4人に顔を向けた。


「ここは戦場。戦いに必要な話以外は戦闘に意識を向けないと死ぬよ」


「「「「は、はい!」」」」


「エルライナ様ぁ〜!」


今度は兵士が反対側からこっちに駆け寄って来た。


「ご無事でなによりです!」


「なんとかね。それよりもそろそろ総合ギルドの方に戻って良い?」


「あ、もう少しだけ居て貰えると助かるのですが・・・・・・」


「まだ我々の方が劣勢なので、もう少し・・・・・・一体なんなんですか? 私に武器を構えるなんて!」


「武器を向けられる理由は、自分が一番分かっているでしょ?」


そう言った後にMG42のトリガーを引き、話しかけていた兵士に銃弾の雨をお見舞えさせる。そのやり取りを見ていた勇者含め、周りの人達が目を見開いて驚いていた。


「なにをしているんですか、エルライナさん!!」


「そうですよ、アナタは人を殺したっ!! それも味方をっ!!」


俺の行動を見ていた兵士の大半が非難の目を向けるが、一部の兵士がその死体を見つめながら首を傾げていた。


「ちょっと待ってください。お姉様は意味なくあの兵士に手を掛けたわけではありません」


「なんだよ! 意味なく? それこそ意味分かんねぇよ!! アンタもなんか言えよっ!!」


「いつまでそうしているつもりなの? そんな事してたってまた撃たれるだけだよ?」


横たわっている死体に向かって話しを掛けている姿を見た学級委員は怒りの表情を浮かべながら近づくが、生徒会の女の子に袖を引っ張られて止められてしまう。


「なんだよ!」


「ねぇ、あの人・・・・・・」


「あの人がどうしたんだよ!」


「たくさん撃たれたのに、血が一滴も出てない」


「・・・・・・え?」


彼女の言う通り、俺が蜂の巣にした兵士の身体から一滴も血が出ていないのだ。


「・・・・・・フッ、アハハハハハッ!? やっぱり誤魔化せなかったみたいねぇ〜!」


身体中に穴を開けた兵士は起き上がると、その光景を見た勇者達は異様な光景に釘づけになっていた。


「もうその能力を見たし、なによりも殺気を飛ばして来ていたからバレバレだったよ」


そうは言っているが、実際のところレーダーとAIが擬態しているのを知らせてくれたお陰で見破れたのだ。


「やっぱアンタは面白いわねぇ〜!」


「良い加減、元の姿に戻らないの?」


「そうね。これじゃあ戦いづらいのよねぇ〜」


そう言うと身体がドロドロになると、ギャルっぽい女性に姿が変わった。


「アンタはこのアタシが直々に殺してあげるわぁ〜! エルライナァ〜!!」


「その言葉、そっくりそのまま返すよ」


なんとなくコイツの能力が分かったが、対処方法が分からないからマズいな。


「魔人だ! 魔人が出たぞぉぉぉおおおおおおおおおおおおっっっ!!?」


「なにぃっ!? 魔人だとぉ!!」


「落ち着けぇっ!! 我が部隊の者はヤツの対処に回れ!」


隊長らしき人物はそう言って指示を飛ばして部隊を組んだ。


「ストップッ!! その行動では相手の思う壺です!」


「思う壺・・・・・・一体どういう事だ、エルライナ殿?」


「さっきの姿を見たでしょ? 相手の姿を変えられるのを」


「それがどうした?」


「数でものを言わせる戦法だと、戦っている途中で姿を変えられて仲間割れを狙われると思いませんか?」


「言われてみれば、確かにそうかもしれない」


「なので、少人数で戦う事が一番望ましいと考えております」


つーか俺に任せて貰いたいぐらいだ。


「あったりぃ〜! アタシが考えている事を当てるなんて、人間にしては頭が良いわねぇ〜!」


馬鹿正直に言うとはな。余程自分の能力に自信があるのか、それとも思い上がっているのかだ。


「そうか・・・・・・分かった。エルライナ殿、アナタに任せよう」


「そうして頂けると助かります。総合ギルドの人達に戦っている事を伝えて下さい」


「分かった。伝えよう」


団長の返事を聞いたら、魔人の目の前まで歩む。


「アンタ一人でアタシの相手をする気なの?」


「アナタの望み通り、私一人で相手するつもりだよ」


「へぇ〜、アンタも案外バカだねぇ〜。一人で勝てると思っているのぉ? ホントはアンタもバカなんじゃないのぉ?」


「バカなのはアナタの方かもね」


「アナタが無駄話をしている間に、仕込みの方をさせて貰ったよ」


「仕込みってなに、をッ!?」


フラッシュバンを手渡す様に投げると目と耳を塞ぐ。投げつけたれた魔人の方は苦痛を感じているのか、叫び声を上げて暴れている。


「そら、これも喰らうんだね!」


そう言いながら、魔人にモロトフを投げつけて身体に火を点けた。


「グギャァァァアアアアアアアアアアアアッッッ!!?」


魔人は火を消そうと必死なって身をよじる。


「やったね!」


作戦がこうも上手くいくと気持ちいいもんだ。


「ウワアアアアアアァァァァァァ・・・・・・早く火を消さないと死んでしまう〜っ!! なんて言うと思っていたの?」


「なに?」


苦しそうに踠くのを止めて、こちらを見つめて来た。


「もうこんなのは対処済みよ」


「ウソでしょ?」


まさか炎が効かなかったのか。


「むしろ私にとってこの姿は好都合ね」


「どういう事?」


「攻撃手段が増えたのよ。こんな風に、ねっ!!」


身体を燃やしたまま腕を鞭の様にしならせて攻撃して来たので、慌てて避けて距離を取る。


「お姉様!」


「大丈夫! 魔人の身体を燃やしたのが、仇になっちゃったみたいだね。って、うわ!?」


今度は自分の身体の一部を飛ばして来た。


「そんな事まで出来るの?」


「出来るわよぉ、アタシならねぇ〜」


クソォ〜、ドーゼムより厄介な相手かも知れないぞコイツ。一旦身を引いて作戦を立てたいが、状況がなぁ〜。


「・・・・・・エルライナさん」


「僕達も、戦います」


彼ら4人はそう言うと俺の側にやって来た。


「正直言って良い」


「なんでしょうか?」


「邪魔だから下がって欲しい」


俺はそう言うと勇者の肩を掴み、退けと言わんばかりに横に押して退かした。


「ど、どうして邪魔って言うんですか?」


「そうですよ。私達も戦えます!」


「大輝くん達なら任せられたけど、キミ達じゃ無理。下がった方が身の為だよ」


「けどぉ、このままじゃエルライナさんが・・・・・・」


「しつこいよ」


勇者の顔を見つめながらそう言ったら、怯えた表情で俺から一歩下がった。


「アハハハハッ!? ザコ勇者がアタシと対等に戦えると思っているのぉ? マジでウケるんですけどぉ〜!!」


「どういう事だ?」


「それはぁ〜、こういう事だよぉ〜!!」


彼女は右手を丸い球体で、腕を鉄球に変形させると、頭の上で回して勢いをつけてから勇者に向かって投げた。


「ッ!? ガハァッ!?」


彼は避けられず懐にぶち当たってしまい、壁まで飛ばされてしまった。


「久米山くん!」


堅いの良い久米山くんは鉄球もどきと共に壁まで飛ばされてしまい、力なく倒れ込んでしまった。


「ほらね。アタシの攻撃を簡単に喰らってるんだもん。雑魚の。ッ!?」


話している間に魔人の顔にMG42の弾を叩き込むと仰向けになって倒れた。


「アナタも言えた話じゃないんじゃない?」


「アンタ・・・・・・ぜってぇに殺すっ!!」


良し、誘い出すのに成功した!


魔人と戦いながら、サシで戦える様に城壁から離れるのであった。

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