第46話
自分の肌と髪がキレイになって嬉しそうな顔しているネネちゃんと共に宿へ向かって街並みを歩いていると、ネネちゃんが急に話しかけて来た。
「お姉様、お風呂気持ち良かったですねぇ! お肌とか髪もこんなにキレイになって、ここの銭湯に何か秘密があるのですかねっ!?」
「さ、さぁ・・・・・・どうだろうね」
ゴメンネネちゃん、そのキレイな姿は俺が渡した洗剤のお陰なんだ。しかも更衣室から出て来たネネちゃんの姿に番台さんがビックリしていたぞ。
「きっとあの銭湯に秘密があるんですよ!」
「また明日も行ってみる?」
「そんな事をしたらお金が勿体ないので明日は行きません!」
「あ、そう」
良かった。また明日も行きましょうって言われたら、俺はどう対処しようか考えものだよ。
「・・・・・・ん?」
「どうしたのですか、お姉様」
「あれ」
「あれって・・・・・・あっ!?」
道端で岡野と猪瀬が対立していたのだが、なんとお互いに仲間らしきクラスメイトを引き連れているのだ。
せっかく銭湯入ってスッキリした気持ちになれたのに、嫌なのものを見ちゃったなぁ〜。
「ネネちゃん、無視して行こうか」
「はい、お姉様」
ネネちゃんも俺と同じ気持ちなのか、目を合わせずにそのまま通り過ぎようと歩く。しかし、向こうは俺達の存在に気づいたらしく、こっちの顔を向けて来た。
「ちょっとそこのアナタ!」
「銭湯おもろかったねぇ〜」
「そうですねお姉様、また行きたいですねぇ〜」
「待ちなさいと言っているんですよ! 聞こえないのですかぁっ!?」
ムシムシ、あんなのと関わると馬鹿・・・・・・と言うよりもクズが移る。
「待てって言ってのが聞こえねぇのかよ! おいっ!?」
岡野のヤツがそう言って肩を掴んで来たので振り解き、腰に差していたカランビットナイフを素早く引き抜いて相手の喉元にかざした。
「ヒィッ!?」
岡野は自身の喉元にかざされたカランビットナイフを見つめて軽く叫び声を上げた。その様子を見ていた猪瀬も頬を引きつらせて怯えている。
「・・・・・・あら、ゴメンなさい。後から肩を掴んでくるから敵だと思ってナイフを構えてしまいました」
「は、早くそのナイフを退けろよ!」
「退けろ? レディーに対してその口の聞き方はどうかと思いますよ。それに女性の肩を掴んだ挙げ句に無理矢理引っ張るなんて男性として最低じゃないですか?
用があるのでしたら後からではなく、人の目の前に立つべきでしょう?」
「そ、その事に関しては悪かったって! だからそのナイフを退けてくれよぉ!!」
「ハァ〜・・・・・・まぁ良いでしょう。退けてあげますよ」
そう言った後にナイフをゆっくりと喉元から離してホルスターにしまうと、岡野が安堵した表情を見せる。
「それで、私になんの用なのですか?」
つーか関わってくんな。
「なんの用? 魔人に関する・・・・・・」
「ないです。以上」
一刻も早くこの場から離れたいので、振り返り歩き出したら岡野のヤツが道を塞いだ。
「ウソを吐け! お前絶対に持っているだろう?」
「すみませんが本当に持っていません。なので失礼します」
まぁ反乱軍に関しての情報なら持っているけど、話したら話したで馬鹿な事をやり兼ねそうにないから絶対に教えない。
「テメェ〜、調子に乗りやがって!」
「私からすれば調子に乗っているのはアナタ達二人の方ですよ」
「んだとぉ!?」
「なんですってぇ!?」
ホント、呆れを通り越すとなんも感情が湧かなくなるんだな。
そう思いながら二人を見据えたら、ちょっとビビッたのか二人は身構える。
「王国の窮地なのに仲間同士で対立しあっているのが勇者のやる事ですか? 普通なら協力し合って魔人を探そうとしませんか?」
「このボンクラが私の言う事を聞かないからぁ!?」
「ハァッ!? リーダーの俺について来ようしないテメェが悪いんだろうがっ!!」
俺を無視して睨み合う二人の姿を見て、コイツら同類の馬鹿だな。と思ってしまう。
「二人共仲間に手を出した時点でリーダーの素質はない」
「仲間?」
「この私が?」
二人共すっとぼけた顔をしてんじゃねぇぞ!
「中立の子達が身体中にアザを作っていて私の元へやって来ましたよ。それで理由を聞いたら、アナタ達に暴力を振るわれてあんな姿になったって」
「アイツら、チクったのか」
「チクったもなにもないでしょ! 総合ギルドで彼らに声を掛けられた時にヒドい状態だったから、慌てて手当てをしたんですよ!
しかも一人腕の骨にヒビが入っていて危険な状態だったんだよ? 自分達がなにをしているのか分かって言っているの?」
「アイツらなんて仲間じゃねぇ!」
「私の方にとっても邪魔なだけよ」
コイツら、ここまで腐った連中だったとは・・・・・・もういい。
「聞いて呆れた。アナタ達がそんな事するのであれば、私も決心しました」
「な、なにを決心したのよ?」
「アナタ達がどんな事をしていようがしていないが私は関与しません。そして助けて欲しいと言われても助ける事をしませんし、私自身もアナタ達に助けを求めたりしません。そして私がアナタ達が邪魔だと感じたら・・・・・・容赦しませんよ」
二人に対して睨みを効かせると後ずさって行く。
「後ろで聞いている人達もそう! アナタ達もその覚悟を持っていなさい!」
そう言ってから歩き出したが、途中で振り返り生徒達を見つめる。
「一応アナタ達二人以外の子に確認しておきますが、そこにいる二人についてて行って大丈夫なのですか?」
俺がそう言ったら、並んでいる子達は互いの顔を見つめて何かを話し始めた。その姿を見た猪瀬と岡野はお互いに自分のグループに向かって声を張り上げる。
ヤレヤレ、人望のなさが浮き彫りになったな。
そう思った後に彼らに背を向けてネネちゃんと共に歩き出した。
同時刻。反乱軍のアジトの中で男達がテーブルを囲んで話し合っていた。
「なぁ、リーダー」
「どうした、トト?」
「本当にアイツらを信じて良かったのか?」
「ああ、信じても大丈夫だ」
「でもよぉ。俺達はアイツらの顔をハッキリと見た事ないんだぜ。そんな連中を信じるなんて・・・・・・」
「でもアイツらのお陰てここまで大きくなったんだろう。違うか?」
そう、反乱軍を結成してから二ヶ月半でとても大きくなったのだ。
「ここまで大きくなったのだから、そろそろ活動を活発かさせても良いのではないでしょうか?」
貴族代表がそう言うが俺は首を横に振って否定する。
「いいや、まだだ。俺達とって主戦力になるアレの完成がしてないんだ。しかも今は王都に魔人が潜んでいるからな、俺達に乗じて乗り込んでくるかもしれない」
「では、魔人がいなくなってから行動に移すという認知で、よろしいのでしょうか?」
「ああ、そうするつもりだ」
「しかし、いつまでもこうしていると隠れ家を見つけられてしまう可能性があります。行動に移すのは早い方が良いと思う!」
俺自身そう思っているのだが、クーデターに成功した後に魔人対策が待っている。クーデターで疲弊しているところに、その対策をしなければならないとなると・・・・・・ん?
「なんだ? 外が騒がしいぞ?」
「もしかして、この場所がバレたのか?」
まさか、こっちはトラップを仕掛けているんだぞ! しかし、万が一っていうのもあるからな。
「おいお前達! ちょっと外の様子を見て来い!」
入り口付近に立っていた二人は頷くと洞窟の外へと向かって走り出したのだが、なんと曲がり角差しかかった瞬間バタリッと倒れてしまった。
「なぁっ!?」
一体なにが起きたと言うんだ?
「敵襲だぁっ! 全員武器を構えろぉっ!!」
俺の呼びかけに応じた仲間は、それぞれ武器を取り構えた。
「ゴメンなさいね。急に予定変更したの」
「そぉ〜そぉ〜、外にいた人達はみんな殺しちゃったよ。案外呆気なかったわねぇ」
「お、お前らは!」
味方のはずの二人が俺達に近いてくる。
「ともかく、アレは我々が使わせて貰うぞ」
「お、お前ら・・・・・・俺達の味方じゃなかったのかよ?」
「味方? 残念、アタシらにとってアンタらは利用していただけなの。ホントにバカだよねぇ〜、良い様に使われているのにも気づかないなんて」
「なんだとっ!? それは一体ど・・・・・・」
反乱軍のリーダーは歪に伸びた手によって喉を突かれて、言葉の途中で事切れてしまった。その様子を見ていた周りの人達は驚いた表情を見せる。
「さて、アナタ達にも用はないから消えて貰うわよ」
「ま、待ってくれぇ! 俺達は・・・・・・グアッ!?」
「早くアレを使わなければならないから、さっさとコイツらを始末するぞ」
「分かったわ! リヴァイス!」
フード姿の二人が洞窟内に人々を蹂躙していくのであった。
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