第41話
どうしよう。そう思いながら頼んだランチを口にするが味がしない。おかしいなぁ。みんなが大好きなカレーの筈なんだけどなぁ?
「お姉様、機嫌を治してください」
「え? なにを言っているのネネちゃん。私はいつも通りの平常心だよ。平常心・・・・・・うん」
「エルライナさんがお怒りになる気持ちも分かりますが、そのぉ〜・・・・・・」
俺の重い空気が周りに伝染しているのか、俺達と同じ様に食べているお客様がチラチラと俺の方を見てくるのだ。
これはこれで申し訳ないなぁ。
「そう、だよね。過ぎた事を気にしているのは良くないよね」
「そうですよ! 恐らく魔人は勇者達が探していると聞きつけているので、どこかに身を潜めていると思われますよ! だから探し出せば良いと思います!!」
「それが一番の理想なんだけれも、王都の外へ逃げられてしまっていたらねぇ〜」
王都の外に逃げてしまっていたら俺達はどうしようもないし、雲隠れされているだろうと思う。
「ホント、彼らはどうしようもない事をしてくれますね」
「そうだよねぇ〜。考えなしに行動し過ぎだよ」
せめて発信器をつけた魔石商が勘づいていない事を願うばかりだ。
そう思いながらつけた発信器がどうなっているのか確認するべく、マップを開いて確認して見ると二台だけ馬車が他の場所にいた。
「んん?」
馬車が並んで王都を走っている。一体どういう事なんだ?
「どうしたのですか。エルライナ様?」
「え、あ、いや。なんでもないですよ、ケイティさん」
そう言ってからネネちゃんをチラッと見つめると、俺がなにを言いたいのか悟ったのか首を軽く縦に振った。
「さてと、ネネちゃん食べ終わった?」
「はい、もう食べ終わっております」
「それじゃあ、お仕事を再開しようか」
「はい、お姉様!」
ネネちゃんと共に、トレーを戻した後にケイティさんのところへと行く。
「それじゃあケイティさん。私達魔人の調査に向かうので、ごゆっくりしていてください」
「なにかあったら、我々に気兼ねなく話してくださいね!」
そうそう、特にお金の面とかね。
「エルライナ様・・・・・・はい、エルライナ様達もお気をつけて行ってらしゃいませ!」
笑顔で見送るケイティさんを背に、俺達は宿の外へと出るのであった。
「さてネネちゃん。食事中に朗報が入って来たよ」
「なんですか?」
「二台の馬車が並びながら、街の西の方から外へ出て行った後に近くの林に停まっているんだ」
「えっ!?」
早く説明を済ませたいので、驚いているネネちゃんの様子を無視して説明を続ける。
「恐らくその林の中がラモーレ商会の闇取引の現場かもしれないから、すぐに向かおうか」
魔人のアジトだったらなお良し。一気に型を付けられる。
「な、なるほど。先ほど馬車に仕掛けたハッシンキが功をそうしたのですね」
「うん。これからその場所に向かおうと思っているんだけど、ついて来てくれるかな?」
「はい! あ、因みにこの会話は仲間に聞かれているので、報告しなくても大丈夫ですよ」
「あ、そうなんだぁ」
ネネちゃんの仲間達、超優秀!?
そう思いながら馬車が停まっている王都西側へ向かう途中に、ラモール商会の馬車とすれ違った。
「お姉様」
「今のは西に向かった馬車と同じ馬車だよ。王都に戻って来たって事は、なにかやましい事がありそうな感じだね」
「あの馬車を追いますか?」
「そっちの方は他の人達に任せよう。私達は馬車が停まっていた場所へ向かおう」
戻って来たって事は空になったって事で、その馬車を停めたところでなにも意味がないしね。
「急いで行こう。証拠を抑えるのは早い方が良い」
「はい、お姉様!」
こうして、馬車が停まっていた場所へと急いで向かった。
「ここが、馬車が停まっていたところだね」
念の為に周囲を警戒しつつ来たけど、もう用事を済ませた後なのか誰もいないし、人がいる気配もしない。
「お姉様、やはりここに来た意味はなかったのでは?」
「いや、来た意味はあったよ」
「え?」
「ここの地面を見て、こことちょっと間を空けたこの場所に馬車を停めたみたい」
俺が指をさしてそう言うが、ネネちゃんは分からないのか険しい顔をさせる。
「ネネちゃんにはちょっと分かりにくいか。じゃあこの足跡なら分かりやすいかな」
そう言って指をさした場所には、ちょっとぬかるんだ土に車輪の足跡残っており、くっきりとした形をしているのでネネちゃんも気がついた様子を見せる。
「しかも複数人の人がここにいたみたいだね。馬車から荷物を下ろした跡もあるよ」
そう言って指をさすが、ネネちゃんは分からないのかその場所に近づき凝縮している。
「狩猟のプロフェッショナルや潜入をする兵士の中には、足跡とかの痕跡を見て行動パターンを把握するんだよ。因みに足跡を見ただけで、ここを何時間前に通ったのかも理解出来るよ」
「そうなんですかぁっ!?」
「うん。それで、この足跡は私達がくる少し前のものだから、足跡を追いかければアジトに辿り着くかも」
「そうですね。注意して進みましょう」
ネネちゃんの返事を聞いた後に俺は足跡を辿って行く。
「ッ!? お姉様、止まってください!」
「どうしたの?」
「ここに罠が仕掛けられています」
「ああ、罠ね。ネネちゃんも気づいたんだ」
ネネちゃんに言う前に話しかけられてしまった。しかし流石は影の者、鳴子トラップに気づくとはレベルが高いね。
「気づいていたのですか?」
「うん。ネネちゃんどうする? この罠を解除して進むかい?」
「いいえお姉様。罠を解除すると誰かがアジトにやって来た事がバレてしまうので、そのままにしておきましょう」
うん、良い判断だ。
「それじゃあ、迂回してトラップを回避しようか」
そう言った後に罠を迂回して足跡の追跡を再開したのだが、なんと俺達の近くでカラカラカラッ!? と鳴子トラップが鳴った。
なのでなった方に顔を向けると、ウサギが慌てて逃げているのが見えた。
「隠れるよっ!」
「はいっ!!」
俺はネネちゃんと共に近くの茂みへと身を隠してから少し経った後に、三人の男達がやって来た。
「なんだよ。またウサギのヤツが鳴子を踏んだのかよ」
「まぁまぁ、兵士のヤツらじゃなくてよかったんじゃないか?」
兵士のヤツら? もしかしてこの人達は反政府軍なのか?
「そうだけどよぉ。毎回毎回鳴らされるとヒヤヒヤしてな」
「まぁ気持ちは分かるけどよ。これがない方が不安じゃねぇ?」
「それは言えるな。ほら、さっさと直すから手伝えよ」
男達は鳴子トラップを直すと、お互いの顔を見つめて話し始める。
「なぁ。リーダーが連れて来たアイツ、本当に信じられるのか?」
「アイツってリーダーと親しそうにしている女の事か?」
「ああ、最初見た時は美人だなぁって思ったけどよぉ。アイツと会う度になんかこう見下されている気がして・・・・・・」
「そうだろうな。だってあの女はリーダーの連れなんだから、興味がないのはあり前だろう」
「そんな感じに見えないんだけどなぁ〜」
そう言うと、二人はからかう様にその男性の肩を押した。
「そんな顔を知るなよ。この戦いが終わったら、お前のところにべっぴんさんがくると思うぜ」
「そうだそうだ。勇者達を擁護しているクソ王を倒して勇者達を追い出せば、平和になる筈だ」
いいえ違います。王様自身も言う事を聞かない勇者達に対して頭を抱えているんです。
「トラップも直した事だし、そろそろ戻るとするか」
「そうだな」
「ハァ〜・・・・・・帰ったら、あの魔石の整理の続きかぁ〜」
男達はそう言うと歩き出したので、俺はネネちゃんの顔を見つめるとネネちゃんも同じ事を考えていたのか真剣な顔で俺を見つめてくる。
ラモーレ商会が反政府軍と繋がりがある事は、これで分かった。今度はその魔石を一体なにに使うのか確かめないといけない。
「バレない様に行くよネネちゃん」
「はい、お姉様」
俺はネネちゃんと共に、三人の男達を静かに追跡するのであった。
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