第33話
カーペットの横にズラーッと並ぶ人達を見て、ちょっとだけ優越感を感じるが偉そうな口を叩ける立場ではないし、そう言うつもりもないので毅然とした態度で赤いカーペットの上をネネちゃんと共に歩いて行く。
「お待ちしておりました。エルライナ様」
「お待たせして申し訳ありません。国王はどちらの方にいらっしゃるのですか?」
「王の間の方でお待ちしております」
ま、そこで話すのが無難かぁ。
「そうですか。ではそちらの方に向かいましょうか。案内をお願いします」
「かしこまりました。では私の後について来てください」
目の前にいるスーツ姿の男性について行くと、お城の出入口ほどではないが大きい扉が目の前に着いた。
「この先は武器のお持ちは硬く禁じております。なので、お持ちになっている武器を彼らに渡して頂けないでしょうか?」
「勇者達がこの間の様に襲いかかってこないと誓えるのでしたら、私はアナタ方に預けますよ」
俺がそう言った途端、扉の前を警備している兵士は目を逸らすがスーツ姿の男性は表情一つ変えずに話しかけてくる。
「はい、勇者達がアナタなにかしようとしたら、我々の方で対処いたしますのでご安心ください」
「そう、ならアナタの言葉を信じて私達は武器を預けます」
「お心遣い、感謝いたします」
俺はACE32 と JERICHO941 PSL とカランビットナイフを渡したが、兵士の手に渡った瞬間全部消えたのでその場にいた兵士達はビックリしていた。
「さて、行きましょうかネネちゃん」
「はい、お姉様」
「で、では。扉を開いてください」
「「は、はい!」」
兵士達はそう返事をすると、王の間へ繋がる扉を押して開いたのだ。
「どうぞ、そのまま歩いて行ってください」
「分かりました」
俺は言われるがままカーペットの上を歩くと、玉座の手前にある階段の前までやって来て膝を着き、首を垂れる。
ネネちゃんも俺と同じ様な格好をする。
「・・・・・・表を上げよ」
「はい」
そう返事をしてから、頭を上げて王の姿を見つめる。
「我が名は レグス・レム・ウォント 。我が国ウォント王国の国王だ。隣にいるのが我が妃だ」
「アーリィ・レム・ウォント です。アナタの名を聞かせてください」
「はい、 私の名は エルライナ・ディア・バルデック 。リードガルム王国のバルデック公爵家の娘です。隣にいるのは、私の付き添い人です」
「ネネです。よろしくお願いいたします」
さて、こっからどう出てくるのやら。
「貴殿の活躍は耳にしております」
「光栄です」
「それで昨日の件の事ですが、こちらでも確認を取れました。アナタのご要望通り、武具店の修理にミスリルの剣の弁償代。それに加えて怪我を負った従業員の治療費及び働けない間の保証を致します」
「感謝致します」
「そして公爵家にして英雄にご無礼を働いた事を我々王族一同、深くお詫びいたします」
国王はそう言った後に、王妃と共に頭を深く下げた。
「謝罪を受け取ります」
「そう言って貰えると助かります」
国王はそう言ってから頭を上げて俺を見つめて来た。
「アナタ様にご無礼を働いた二人は我々の騎士の元、厳しい訓練を受けさしております」
「厳しい訓練? 処罰を受けさせないのですか?」
「はい。彼も勇者の一人なので、そうしてしまうと闘気が下がってしまう可能性があるので訓練という形にしました」
ああ〜、なるほど。実刑を受けさせたら、クラスの連中がブーブー文句を言って もう勇者を辞める! って言ってグータラ生活を行うのが目に見えているんだな。
「国王の謝罪は受け取りましたが、勇者達からは四人しか受けてません。他の勇者達はどちらにいるのですか?」
周囲を見渡すがいつもの四人しか見当たらない。
他の連中は一体どうしたんだ?
「ご気分が優れないという事で・・・・・・」
「三〜四人ならまだしも、二十人も気分が悪くなるのは少々おかしいと思いませんか? まさか、訓練に出かけたとは言いませんよね?」
俺がそう言うと国王は騙せないと悟ったのか、頭に手を当てながら話始めた。
「本当の事を言いますと、我々がここにくる様に伝えていたのだが、誰もこなかったのです」
「「・・・・・・え?」」
俺とネネちゃんは なにを言っているんだこの人は? と言いたそうな顔をさせている中、今度は王妃が話しかけて来た。
「なので城の者総出で探している真っ最中なのです」
オイイイイイイイイイイイイッッッ!!? お前らなにを仕出かしてんのか分かっていんのかよっ!? 俺と国王は戦争になるかどうかの瀬戸際の話をしているのに、元凶テメェらがいなきゃいけねぇだろっ!!
一体なにを考えて行動してるんだ! チンパンジーの方が理解力がぜってぇあるって!!
「私も甘く見られたものですね。私に刃を向けて来た者達の仲間がこないとは・・・・・・これはもう勇者からの宣戦布告と受け取ってもよろしいのでしょうか?」
そう言って立ち上がった瞬間、国王は慌てた様子で俺の元へとやって来た。
「滅相もない! しばしばかり待って貰いたい!」
「しかし、こうもあからさまな対応を取られてしまうと、こちらもそれ相応の対応をしなければなりません」
「わ、我々にはその様な意思ない! だから、しばし、しばしだけ待ってくれ! この通りだ!」
国王はそう言いながら頭を下げて来た。 もう国として切羽詰まった状況なんだなぁ。 と改めて思うのであった。
「ハァ〜・・・・・・三十分だけ待ちます」
「ほ、本当かぁ!」
「はい、ただし三十分までにここにやってこない場合は、国の方へ帰らせて頂きます」
「あ、ああ。わかった! 急ぎ残りの勇者達を見つけ出すのだ!」
兵士と使用人達が一斉に はいっ!? と返事をすると、三〜四人ばかり残って後は探しに出かけた。
「ハァ〜・・・・・・大輝くん達は活躍しているのにこっちはこの様子。本当に勇者達を召喚したのか怪しいですね」
「適正検査では、全員勇者でしたので・・・・・・」
「それに本当に大丈夫なのですか? もう魔人が侵入しているのにこんな事をしている余裕なんてないはずですよ。
それに彼らに魔人と戦えるほどの力が備わっている様に思えませんよ」
俺の言葉を聞いた国王は顔を伏せてしまった。そんな情けない王の元に王妃が近づくと俺に話かけて来た。
「我々も彼らの事をなんとかしたいと思っているのですが、全く聞く耳を持ってくれません」
「王命でもですか?」
「はい」
アイツら良い度胸してるなぁ。国に逆らうとは、自分がそんなに偉いと思っているのか?
そんな事を思っていたら、扉の向こう側からギャンギャン賑やかな声が聴こえて来た。
「どうやら来たようですね」
「やっと来たかぁ!!」
そう、嫌なクラスメイト達がブーブー文句を言いながら、扉の向こう側からやって来たのだ。
う〜わ、コイツら客人の前で貧相なく歩けるな。俺以外の貴族が来たらガチ切れして帰るレベルだぞ。
「一体なにをしていたのだキサマらはっ!? 来て頂いたエルライナ殿に無礼極まりないだろう!」
「え〜、俺ら関係なくねぇ?」
「そうよ。私達ではなく野球バカ二人が起こした事なのだから、彼らが謝るだけで済む話じゃないのかしら?」
岡野と猪瀬がそう言うので、俺は信じられない二人の顔を見つめてしまった。
ハァ? マジで言ってんのか? 仕方ないカマを吹っかけてみるか。
「ハァ〜・・・・・・やはりこの国の勇者達では魔人と戦える力どころか態度すらなっていないとは。
もう良いです。国王様、彼らを国から追い出した方がよろしいかと思います」
「なっ!? いきなりなにを仰るのですか、アナタは?」
「私に頭も下げずに関係ないと仰っているアナタ達が言う言葉ですか?」
「もしかして、アナタが襲われたと言っていた・・・・・・」
今更気づいたのかよ。つーか岡野、お前は昨日俺と会ったじゃねぇかよ!
「そうです、私がアナタ方の仲間の襲われたエルライナと申します。以後お見知り置きを。
それで本題なのですが、アナタ達に勇者を語る資格はないと見受けました。王都から出て行き、平民として生きて行った方がよろしいかと思われます」
そう言った瞬間、岡野の方がキレた。うん、チョロいな。
「んだとテメェッ!!」
「私は事実しか語ってませんよ。あの裏切った大野と戦った時も大したことがなかったので、アナタの実力が目に見えて分かります」
ぶっちゃけ言えば殺すという目的で戦っていたら、腕を身体ごと吹き飛ばして終わらせていたしな。
「テメェ〜・・・・・・表に出やがれっ!!」
「決闘ですか? 受けて立ちましょう」
こうして、岡野と決闘をする事になったのだった。
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