第17話

・・・・・・石? 鉱石とかじゃないのか?


散らばった石を拾い上げて確かめて見るが、素人の目で見ても分かるただの石だ。


「これ・・・・・・鉱石じゃないですよね?」


「お姉様が仰る通り、ただの石です」


「やっぱりそう?」


「はいそうです」


念の為に袋をひっくり返して中身を取り出すが、銅貨一枚すら出てこなかった。


「おいおいおい・・・・・・これが金の元に見えるの?」


どっかのクラフト系のゲームじゃないんだから、こんな物ゴミとして処分するしかないだろ。


「とりあえず、そこに座ってください」


「あ、ああ」


怪我人を座らせたら回復薬や湿布などを使って身体に治療を施す。


「お姉様、お片づけ終わりました」


「あら、片づけてしてくれたの?」


「はい、暇でしたので」


偉いぞネネちゃん! キミの頭をなでなでしてあげようか、ポーション臭いけど!


「ワシの治療からお店の片づけまでやってくれて、ありがとうお嬢さん」


「い、いえ、お礼を言われるほどの事はしてませんよ」


・・・・・・ふぅ、耐え切った。


「ワシの名前は ドバク 。この武具店の店長をやっている者だ。店の片づけをしているのが弟子の ガレット じゃ」


「私の名前はエルライナと申します。こちらが私の付き添い人のネネです」


「ネネです。よろしくお願いします」


ドバクさんにペコリと頭を下げたら、俺の後ろへと下がった。


「エルライナ? もしかしてアナタはリードガルムの戦姫、エルライナ・ディア ・バルデック公爵様ですか?」


「なんですかその二つ名は? 名前は合ってますが、二つ名の方は初耳ですよ」


しかも戦姫って・・・・・・納得いかん! もっとカッコいい二つ名をつけろよ!


「ふむふむ、この大陸ではお姉様は戦姫と呼ばれている。っと」


「ネネちゃん、メモしないでくれるかな?」


精神的にゴリゴリ削られているからね。それはそうとだ!


「このお店で一体なにがあったのですか?」


俺がそう言うと空気が重くなるのを感じた。


「あ、話したくなければ話さなくても結構ですよ。ほら、先ほどあんな事があったらぁ・・・・・・」


「いえ、これもなにかの縁でしょう。話します」


「え? そ、そうですか?」


良かった怒ってなくて。と思いながら、ドバクさん達の話に耳を傾ける。


「先ほど、この国の勇者二人が入店して来たのです」


まぁ見ていたから分かるけど、確かアイツらはぁ・・・・・・野球部に入っていた二人だったな。名前は覚えてなかったのが仇になったな。(※前世で覚える気がなかったのが原因)


「それで、一番良い剣を見せてくれと言って来たのでミスリルの剣を見せたんですよ。そしたら これは俺の武器にふさわしい。貰った! とか言って出て行こうとしたんです」


「それで、ワシが出て来て代金を払わないと渡せない。とはなしたのだが、二人がかりで襲って来てこの有り様だ」


なんつう事をしてんだよ、アイツらは!


「勇者になって常識を忘れてるのかぁ・・・・・・」


「ホント、クズですね! ダイキ様達と比べ物にならないです!」


そうだよな。彼らは彼らなりに活躍しているし、強くなってもいるから偉いよ。


「あんなのが勇者で良いんですかぁっ!? この間だって勇者のせいで、商会が一つ王都から撤退してしまったんですよ!」


「商会が? どういう事ですか?」


俺がそう聞くと、お弟子さんが身体を震わせながら話し始めた。


「ラパール商会っていう衣類を取り扱っていた店があったんですけど、勇者達がツケ払いばっかしていたから、経営が立ち行かなくなったみたいなんです」


「え? つけ払いなんだから、いや待てよ・・・・・・まさか?」


「エルライナ様のご想像の通り、一銭も払わなかったんです。だから王都から撤退してしまったんです」


「う〜ん」


ここまでヒドくなってたとはなぁ〜。


呆れた顔で頭を押さえてしまった。もうアイツらの行動に対して、怒りとか恥ずかしいとか言った感情よりも、呆れた感情しか感じられない。


「お姉様、大丈夫ですか?」


「私は平気だよ」


ウソです。頭痛薬を飲もうか考えていました。


「あ、でも四人だけまともな人達がいるんですよ」


あのクラスに、まともなヤツいたっけ?


「四人だけ? 一人だけじゃなくて?」


「はい、四人です。彼らはちゃんと仲間がやった事を謝って来ますし、なんかそのぉ・・・・・・」


「その子達が不敏にしか思えないとか?」


「はい」


まぁ、自分がやった事を謝るのは当たり前だろう。でも仲間とはいえ他人がやった事に対して代わりに謝るのは、間違っているとしか思えない。


「あの、すみません!」


「ん?」


出入口の方を見てみると、疲れた顔をさせた少年二人とその少年達を心配そうに見つめる少女二人がいた。


「噂をしていたら来たみたいですね」


アイツらがそうか。確か委員長と副委員長の二人。それに生徒会に入っていた女子二人だ。ただし名前は覚えていない。


「用件は?」


ドバクさんがそう言うと、四人は申し訳なさそうな顔をさせて土下座をして来た。


「「「「申し訳ありませんでしたぁっ!」」」」


「それはなんに対しての謝罪か理解した上で言ってるの?」


俺がそう言うと、四人はキョトンとした顔で俺を見つめて来た。


「えっとぉ、アナタは?」


「私はこの人を介抱した人。こっちの子は壊された物を整理した子。口出しする権利はあると思うよ」


ネネちゃんも俺に合わせているのか、殺気立っている。


「そ、そうでしたか。すみません!」


「私に頭を下げなくても良いよ。実際に被害にあったのはこの人達なのだから」


「あ、そうなのですか」


そうなのですか。じゃないでしょ。


「さっきの質問だけど、なんに対しての謝罪なの?」


「え、あ、そのぉ・・・・・・」


「把握してないの? それじゃあ謝罪と言えないよ」


実際に社会に出た時は、これこれこう言う理由で、アナタにご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。って言うのが普通だからな。


「私達のクラスメイトがそちらの武具店にご迷惑おかけして、申し訳ありませんでした!」


「「「申し訳ありませんでした!」」」


四人はそう言ってまた頭を下げた。


「それが言えて謝罪だよ。今後からはそうするようにしてください」


「あ、はい。以後気をつけます」


「それで、暴れたおバカの代わりに彼らに謝罪しに来たの?」


「はい、その通りです」


悪い事ではないが、これで済ませてしまうのもなぁ・・・・・・仕方ない、心を鬼にした方が良さそうだ。


「あのさ。謝罪だけで終わる問題だと思うの?」


「へ?」


「いや、そのぉ・・・・・・」


「へ? でも、いや、そのぉ。でもないの。カウンターは壊されてボロボロ、ここの店長はキミ達の仲間に暴行を受けて、しばらく仕事出来ない状態。そしてなによりも勇者が剣を堂々と剣を盗んで行く。

この状況をゴメンなさいの一言で終わらせられると思っているの? それともキミ達がいた世界では、こんな事をやってもゴメンなさいの一言で、済ませられる世界なの?」


俺がそう言うと四人が怯えた表情を見せる。


「ここまでやってしまったのだから、誠意を見せなきゃいけないと思うよ」


「せ、誠意ですか?」


「うん、誠意。どうすれば良いのか分かっているよね?」


俺がそう言うと、四人はお互いの顔を見つめ合った。


「謝罪料を払わないといけないんですか?」


「いけないんですか? じゃないの。払わなきゃダメに決まってるでしょ」


この状況が許せる問題だったら、慰謝料どころか法律なんて言葉は存在していねぇよ!


「お店の修理代にバグスさんの治療費。それに盗んだ剣、えぇ〜っとぉ・・・・・・」


「ミスリルの剣です」


「そう、ミスリルの剣の代金を払わなきゃ、誠意とは言えないよ」


「でも、私達そんなにお金を持ってなくて・・・・・・」


あまい、甘過ぎる!


「その言葉が通用すると思わないでください。アナタ方の仲間のせいで仕事が出来ない状態になってしまったのですから、ちゃんと責任を取るのが当たり前です」


俺がそう言うと、委員長が泣きそうな顔になる。可愛そうだと思うけど、ここでもう良いよって言ったら彼らの身の為にならない。


「お金の方はこの国の王様と・・・・・・」


「あれぇ? お前らここでなにしてんの?」


「北山、それに相場」


最悪だ野球部二人が戻って来やがった。

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