第2話

とりあえず、アームロックを決めた大輝くんをその辺に放置して、オウカさん達に本題を切り出す事にする。大輝くんにサイン? もちろんあげる訳ないじゃん! 代わりに伊織ちゃんが大輝くんの顔に、サイン(※ラクガキ)をサインペンでしているよ。油性だから洗い流すの大変そうだなぁ〜。


「それでネネさん」


「はい、なんでしょうか。お姉様!」


目を輝かせながら俺の事を見つめるので、 期待の眼差しを向けられるのは、ちょっと困る。 と思いながら引いてしまった。てか、お姉様ってなに?


「それで、出発予定日は明後日の早朝にします。ネネさんも、準備しておいてね」


「明日じゃないんですか?」


「うん、お家の管理をバルデック公爵様達とレンカさんに、 引き続きお願いします。 と書いて送らないといけないし、今回は総合ギルドの方に宿の手配を頼もうと思っているから」


後、城下の観光もしたいからね。


「お姉様のお家ですかっ!? よ、よろしければ、いつの日かご自宅を窺ってもよろしいですか?」


「あ、うん。いいよ」


「やったぁぁぁああああああっ!!?」


俺の家に上がれるのって、喜ばしい事なのか?


「そういう事だから、明後日よろしくね」


「はい、この命に換えても、必ずアナタ様をお守り致します! では!」


彼女はそう言うと、スキップしながら部屋を出て行った。


「彼女には、私から叱っておきます」


「そうして頂戴」


ああ、ネネさんお叱りコースですね。クワバラクワバラ。


手のひらを合わせながら心の中でそう念じた後に、オウカさん達を見つめる。


「お昼頃に、皆さんお時間がありますか?」


「お昼? 一応昼食どきだから・・・・・・まさか!」


「ええ、皆さんにこの間のお礼をしようと思いまして。料理を振る舞いたいと思います!」


「「「「「「オオ〜〜〜ッ!?」」」」」」


オウカさん達は期待した目で俺を見つめてくる。そう、一昨日神様から 頑張ったご褒美に能力をあげるよ。 と言われたけど断り代わりにある物をお願いしたら、すんなりOKを貰えたのだ。


「なので今から準備したいので、厨房にご案内してくれますか?」


「いいわよ。ネネ」


「はい、なんでございましょうかっ!」


お、おう。ネネちゃんもこっちにくるの早いね。もしかして暇を持て余していたのか?


「彼女を厨房に案内してあげて」


「了解しました! さぁお姉様。私について来て下さい!」


とても嬉しそうな彼女の後ろをついて行くが、廊下を歩いている途中で微かにだけど悲鳴みたいな声が、耳に入って来た。


ん? 壁の向こうから声がするぞ。


壁に耳を当てて聞き耳を立てた瞬間、その声が鮮明に聞こえて来た。


「も、もうやめてええええええっっっ!!?」


「旦那様ぁ〜、我はまだまだ頑張れますぞぉ〜。もう他の女子おなごに現をぬかさぬように、我が・・・・・・」


「待って! も、もう体力が、アッーーーーーー!?」


ヤベェ、聞き耳を立てるんじゃなかった!


「どうされました。お姉様」


「あ、うん・・・・・・なんでもないよ」


この会話、聞かなかった事にしよう。


そう思いながらネネさんについて行くのであった。


「ここが厨房です。食材やなんかは、外にある蔵に保存されてます」


「ありがとうネネさん。じゃあさっそく準備しますか」


厨房に立つと、ストレージから神様から貰ったお米と食材を取り出して調理していく。食材についてはもう下処理が終わっている物があったので、お吸物ように野菜を切っていくぐらいの作業だった。


後は、この2台の炊飯器にお米を入れて炊飯ボタンオン!


炊飯と書かれたボタンを押した瞬間、ネネさんがビックリしてクナイを取り出したけど、俺が 大丈夫だから。 と言って落ち着かせる。


「お吸物も出来たし、後は炊き終わってからの作業だから、お仕事に戻っても良いよ」


「あ、いえ。お姉様のお側にいる事が私の仕事なので、気にしないで下さい」


あ、なるほど。監視って訳ね。


「あの、お姉様」


「ん、どうしたの。ネネさん?」


「私の事はネネさんではなく、ネネとお呼びして頂けるとそのぉ・・・・・・」


身体をもじもじとさせるネネさん。もしかして、さん。呼ばわりだと他人行儀でイヤなのか?


「呼び捨ては難しいから、ネネちゃん。って言うのはダメかな?」


「ネネちゃん・・・・・・」


またまた涙を溜めて身体を震わせている姿を見て ダメだったかなぁ〜? と思っていたら、彼女は俺に抱きついて来た。


「とても良いです! まるでお姉様の妹になったようです!」


良かった。嫌だったのかと心配したよ。


抱きついて頬ずりしているネネちゃんの頭を撫でてあげたら、また身体を震わせていた。


「お姉様に頭を撫でられた。至高の極みですぅ〜。死んでも構いませぇ〜ん」


「いや、死んじゃダメだよ。明後日から私と一緒に行動して貰わないと困るんだから」


「そうでした! なら、このようなところで死ぬ訳にはいけません!」


「うんうん。分かってくれて・・・・・・ん?」


襖の向こう側で片手がピクピクと動いているのが見えた。


誰か倒れているのか!?


「ネネちゃん、向こうで誰かが倒れているよ!」


「へぇ?」


ネネちゃんは俺が指をさしている方向に顔を向けると、 ああ〜・・・・・・。 と納得した顔をした後に、また抱きついて来た。


「イヤイヤイヤイヤイヤ! あの人を助けないの?」


「いつもの事なので気にしなくても良いのです」


「いつもの事?」


それは一体どういう事なんだ? と思っていたら、なんと向こうから這い出て来て、こっちに救いを求める様に手を伸ばして来たのだ。フンドシ姿の顔が痩けた将軍様が。


「助けておくれぇ〜! このままでは妃に殺されるぅ〜」


「将軍様っ!? 妃に殺されるって、どういう事ですか?」


ネネちゃんから離れて将軍様に近づいたら、そぉ〜っとお胸目掛けて手を伸ばして来たので、手の届かない位置に下がったら、 チッ。 と舌打ちが聞こえて来た。


こんな時でも性欲があるのかよ。なんか助ける気が失せた。


ネネちゃんのところへ戻ると、そのまま抱きついて頭を撫で回す。


ハァ〜、ここが俺にとっての憩いの場だなぁ〜。


「う、羨ましいぃぃぃいいいいいいいいいいいいっっっ!!? 妾と、妾と代わってくれぇぇぇえええええええええええええっっっ!!?」


将軍は最後の力を振り絞り、床を這いずってこっちに向かって来たので、キモいっ!? と思ってしまう。


「あらあらいけませんよ。将軍様」


「ッ!? その声は!」


声のした方に顔を向けると、そこのは半裸のお妃様がそこに立っていて、将軍様の顔が真っ青になる。


「こ、こここここれはそのっ! 彼女とのスキンシップをしていただけで」


「ウソを言わないで下さい。将軍様がお姉様を、じゃなかった。エルライナ様にセクハラしようとしていました」


ネネちゃんがゴミを見る様な目で将軍様を見つめながら証言した途端、お妃様が瞬時に将軍様を抱きかかえた。


「我では満足出来ませぬか?」


「わ、妾は将軍じゃから子を作るのが仕事じゃあ! 優秀な彼女の血がぁぁぁああああああああああああっっっ!!?」


うわぁっ!? そのまま胴体を力一杯抱き締めて、熊式鯖折り。通称ベアハックをかましている!


しかも将軍が背中をのけ反らせながら ギブッ!? ギブッ!? と言っているので、そろそろ止めようか。と思っているとお妃様が話し始めた。


「・・・・・・分かりました。将軍様はお子が欲しいのですね?」


「そ、それ、アババババッ!?」


顔が青くなって来たから、そろそろ本当に止めた方が良いか? と思い、ベアハッグをかましているお妃様に近づこうとしてもネネちゃんに止められる。


「でしたら我との間でたくさん作りまするぞ。毎朝毎夜、共にはげみましょう・・・・・・他の女子おなごに目移りしないぐらいに」


「イヤァァァアアアアアアッッッ!!? 誰か助けてたもれぇぇぇええええええええええええッッッ!!?」


お妃様は顔をニコニコさせながら厨房を出て行った。


「・・・・・・ご飯炊けたから、かき混ぜようか」


「お手伝いします。お姉様!」


ネネちゃんと一緒にするのであった。え? 将軍はどうなったのか? 御想像にお任せします。

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