第6章 プロローグ
大野と戦った後、四ヶ国間協議会はすぐに行われた。四ヶ国間協議会では色々話をしていたらしく、中でも魔人の対策を中心に議論されたらしい。
その4ヶ国協議会が行われている最中に、俺は魔物達の死体処理と壊れた物(主に俺が爆破で壊した壁など)をなどを修復をしていた。
そんなこんなで三日後。将軍様と奥方さま、それにオウカさんと対面している。
「本当に壁の修理費を払わなくて良いんですね?」
「うむ、そちは侵入した魔物達を倒し、魔人を退けたからのぉ。むしろ感謝したいぐらいじゃ」
うん、弁償覚悟で壁を破壊したけど、こうなってくれて良かったぁ〜。
「じゃから、褒美として妾と夜とg・・・・・・」
話の途中で奥方さまの拳が将軍の顔にめり込み、そして襖を壊しながら廊下へとすっ飛んで行った。
「我が夫が失礼をして申し訳ない」
「あ、いえ。気にしていないので大丈夫です・・・・・・はい」
この姫さま魔人よりこええええええっ!!?
「あの、将軍大丈夫なんですか?」
将軍を殴り飛ばした奥方さまの立場が危ういとか言う問題ではなく、将軍が白目を剥きてピクピク動いているので心配だ。
「大丈夫。ゴキブリ以上の生命力を持っているから心配はいらないわ」
「むしろこれぐらいやっておかなければ、止まらぬのでな」
「・・・・・・そうですか」
うん、オウカさん達がそう言うのなら気にしないでいよう。
「妾にそちと同い年の息子が居ったら、会わせてやりたかったのにのぉ」
「身分の差があるので、私ではちょっとぉ・・・・・・」
やっぱり、この人もメイラ様と同じように俺の能力と見た目が欲しいのかな?
「いや、すまぬ。今のは忘れておくれ」
「あ、はい。分かりました」
口に開いた扇子を当てて表情を見せないようにしているが、自分がマズい事を言ってしまった。と言わんばかりの目をしていた。
「じゃからワシが娶るっ!!」
横を向くとなんと将軍様が俺に向かってル◯ンダイブをして来たのだった。
「愛しておるぞぉぉぉおおおおおおっ!! エグハッ!?」
なんと空中に舞っている将軍様を、奥方様が畳に叩きつけたのだ。
「う、うわぁ・・・・・・」
将軍様が畳みにめり込んでいるよ。てかそんなに強いんだったら、あの時に出て来て戦って欲しかった!
「将軍様をあの部屋へお連れなさい」
「かしこまりました」
奥方様の言葉を聞いた武士達は気絶している将軍様をお持ち上げると、どこかへ行ってしまった。
「あの、将軍様をどこへ連れて行ったのですか?」
「聞かない方が良いわよ」
「あ、はい。分かりました」
きっと、傷の治療の為に部室へ行ったんだぁ〜。決して現実逃避している訳じゃないんだからね!
「そうそう。アナタが気にしていたオオノの事を話すわ」
気してはないと言えばウソになるが、自業自得とは言え重傷を負ってしまっては、身体的な面と精神的な面で心配になる。
「彼、洗いざらい話してくれたわよ。どうやって魔人と出会ったのか、どうして魔人達に協力したのか、彼と一緒にいた勇者達の事もね」
「そう、ですか」
「その上で ”自分は被害者だ。“ と主張しているのだから、尋問官も呆れていたわ」
オウカさんもそう言いながら、呆れた顔をしていた。
「それと、怪我の方も医師に見て貰ったわ。聞きたい?」
オウカさんが真剣な顔つきで言うので、俺は気持ちを改めてから はい。 と返事をしたら、何冊にも重ねた本を袖から取り出した。どうやら、あれが医師の診断書のようだ。
「順を追って話すと切断された右腕は、もう分かっていると思うけど元には戻せないわ。でも肥大化した身体はある程度は戻るらしいの」
そうだよな。大輝くんが切断してしまった個所は寄生されてしまったのだから、戻すなんて絶対に無理な話だろう。そもそも論的に、地球でも切断された場所を元に戻す手術自体が難しい技術なのだから、物凄い小さい医療道具どころか神経を見る為のスコープがない世界では無理だろう。
仮に手術が成功したとしても、なにかしらの後遺症が残るはずだ。
「それと、寄生された個所の筋肉繊維は寄生型モンスターにズダズダされているから、可哀想だけど生活に支障が出るみたい。
例えばぁ・・・・・・重い物が持てないとか」
「なるほど」
あれに自分が寄生されたらと思うと、ゾッとするな。
「後は、アナタが切り裂いた足のヒラメ筋肉とアキレス腱なんだけど、治せないそうよ」
「え、ウソォッ!?」
てっきり治せると思って切ったのに、治せないのかよ。
「事実よ。だから補助具を彼に渡すわ」
おいおいおい・・・・・・右手が切断されてしまって使えない、右足が不自由。さらに上半身に力が入らない身体なんて、ヒド過ぎるだろう。
「彼はこの先、どうやって生活を送っていけば・・・・・・」
「良いエルライナさん。私達を裏切った彼自身が招いた結果。だからエルライナさんは気負わなくて良いの」
「まぁ、そうですけど」
敵とは言え、さすがに可哀想と思えてしまう。
「妾達からの話は、もうこれで終い。エルライナ殿はもう部屋へ戻りなさい」
「分かりました」
俺は奥方様のご好意に甘えて貸して貰っている客間へ向かい、その畳みの上に寝そべった。
「ハァ〜・・・・・・」
オウカさん達に正体バレちゃったんだな。
俺がそう言ったら、 やっぱりそうだったの。 の一言だけで終わったし、美羽さんと伊織ちゃんに関しては納得した顔をしただけで、なにも追求されなかったが、大輝くんだけが事態を飲み込めないか動揺しているのか分からないが、オロオロしていた。
「エルライナ」
ん? その声は美羽さんか。
美羽さんに顔を向けると伊織ちゃんと共にいて、俺の事を心配そうな顔で見つめていた。
「大丈夫ですか?」
「えっと、なにが大丈夫?」
「アナタの恩師だった人が、あんな風になってしまって。そのぉ・・・・・・」
なるほど、俺に気を使っているのね。
「美羽さん達が気にする事はないよ。私自身も、もう割り切っているし」
そう、倉本 春人は死んでエルライナとして新しい人生を歩んでいる。それだけの事。
「・・・・・・ムゥ」
「うわっと!?」
伊織ちゃんがいきなり胸を揉んで来たので、ビックリしてしまった。
「どうしたの、伊織ちゃん? 私のお胸なんか揉んで」
「・・・・・・卑怯」
卑怯って。もしかして、この大きさの事か?
「なにも努力せずに手に入れたこの胸は・・・・・・巨乳じゃなく虚乳・・・・・・私の努力を全て無に思わせる。このお胸は断罪すべし!
小さくなぇ〜・・・・・・小さくなれぇ〜・・・・・・」
伊織ちゃんがそう言いながら、俺のお胸をモミモミしてくる。
「あの、伊織ちゃん。私のお胸に罪はないよ。だからモミモミするの止めて」
「ん・・・・・・ギルティ。止めるつもりはない」
伊織ちゃんはそう言いながら、俺のお胸を揉み続ける。
なにこの光景。百合百合しいと言うよりも、恐いんですけど。
「伊織、エルライナさんと大事な話をしたいから、その辺にして頂戴」
「ん・・・・・・分かった」
伊織ちゃんはそう言うと、俺のお胸から手を離して離れてくれたので、起き上がって美羽さんに身体を向けるようにして座る。
「それで、話ってなに?」
「アナタの元クラスメイト達についての話よ」
その声はオウカさん!?
オウカさんはユウゼンさんとトウガさんと共に部屋に入ってくると、襖を締めてから巻物を取り出す。
「影から新しい情報が入って来たの。その内容を教えてあげるわ」
「あの、オウカさん。教えてくださるのは、誠にありがたいのですがぁ。どうしてトウガさんが恐い顔をしているのですか?」
ひょっとしたら、情報を俺達に伝えるの反対なのか?
「ああ彼、別にアナタ達に対して怒っている訳じゃないから、気にしなくてもいいわよ。ほら、トウガもそんな顔をしないの!」
「す、すまぬ! 勘違いさせてしまって」
良かった。怒りの矛先が俺らじゃなくて。でも、トウガさんは誰に対して怒っていたんだ?
「さっきも言ったと思うかもしれないけど、この巻物の中身についてよ」
え、巻物? もしかして・・・・・・。
「ん・・・・・・別大陸にいる勇者達に怒っていたの?」
伊織ちゃんの問いにトウガさんはコクリと頷いた。
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