第21話

俺が化け物が死んでいるのを確認した少し後にエイド教官達が駆けつけて来てくれて、 お前が倒したのか? 聞かれたので そうと言えばそうかもしれないし、違うかもしれない・・・・・・。 と言ってから事の顛末を詳しく話したらエイド教官達は化け物が死んだ事を喜んでいたのを覚えている。

そう、結果的に言えば総合ギルドとリードガルム兵士達は協力をして化け物と戦い、そして死闘の末に終わった。と言う事になるが、俺にとってはわけが分からないまま終わってしまった。って言った方が合っている。


「・・・・・・どうしてなんだろう?」


あの化け物はクレイモア地雷四つをまともに喰らってもピンピンしていたのに、急に糸が切れたかの様に倒れて動かなくなった。

しかも夕方になってもあの化け物の不自然な死の原因が未だに分からないままだから、釈然としない。


「エイド教官達の手伝いをしに行こうかな?」


あ、でもエイド教官が 化け物退治で一番活躍したお前をこき使うわけにいかないだろう! ようがあったら呼ぶからそこら辺で休憩してろっ!! と言われてしまった。


「・・・・・・ん?」


通信? また神様からかぁ〜、今度はなんのようだろう?


「はい、もしもし?」


『もしもし、エルライナちゃん? 今日は大変だったね!』


「戦っているところを見てたんですか?」


『うん、途中からね。でも化け物をよく倒せたね! 流石エルライナちゃんだよ!』


「・・・・・・いや、あれは私が倒したって感じじゃない気がします」


『えっ!?』


「なんて言うかそのぉ〜、上手く言えないんですが・・・・・・偶然、いや・・・・・・私のクレイモア以外の原因で倒れた気がするんですよ」


『う〜ん・・・・・・原因についてはどうなのかは分からないけどさ、エルライナちゃんの活躍のおかげ倒せたのは間違えないよ』


「そうでしょうか? エイド教官やシドさん、それにダレンさんやミハルちゃん達のおかげもありますから・・・・・・」


『キミは謙虚なところがあるねぇ〜』


謙虚って、普通に思いつく事じゃないのかな? ・・・・・・いや、アイツ元クラスメイトらが化け物を倒したんだったら、周りが迷惑に感じるほど自慢してするだろうな。


『それに分からない事をずっと考えていても仕方ないからさ、今は考えるのを止めて命があったことを喜ぼうよ』


「・・・・・・それもそうですね。あ、そうだ! 神様に聞きたい事があるんですが、今聞いても大丈夫ですか?」


『ああ、うん。聞きたい事って言うのはエルライナちゃんが戦った化け物の事でしょ?』


「え! あ、はい」


なんで神様がその事を聞きたいって分かってるんだ? もしかして、相手の考えている事を読む力があるのか?


『エルライナちゃんが僕に聞いてくるのは予想出来たしね。それにね、僕もあのモンスターが気になったから調べたんだよ』


気になったから調べた?


「もしかしてあの化け物は、神様が分からんないほどのマイナーなモンスターだったんですか?」


『う〜〜〜ん・・・・・・それとはちょっと違うね』


「え、違う?」


『うん、僕はあの化け物を見た時にね。 あれ? こんなモンスターは、この世界にいたっけ? って思ったから調べたんだけどさぁ〜、分からなかったんだ!』


分からなかった! って。


「それって、どう言う事ですか? まさか神様は私に、 別の世界から来たモンスターと戦っていんだよ。 って言うんですか?」


『いいや、そんな事言わないよ。て言うか的外れな答えだよ。エルライナちゃん』


なんかムカつくけど、今言ったのが違うとなるとぉ〜・・・・・・。


「・・・・・・もしかして、 バイ◯ハザード シリーズ に出てくる生物兵器みたいなのと戦った。とか?」


『正解! と言いたいところなんだけれどもぉ〜、ちょっと違うかなぁ〜・・・・・・』


いい加減、ウゼェ。って感じて来た。


「・・・・・・勿体ぶらないでハッキリと言って下さいよ」


『ああ〜、ゴメンゴメン。エルライナちゃんをからかうのが楽しくてついね!』


おいっ! からかって楽しんでたのかよ、お前は!!


『答えをハッキリ言うとね。あの化け物はキメラって言う合成生物なんだ』


キメラだって!?


「キメラって確か、一つの個体の中に異なる遺伝子が入っている生物の事ですよね? 例えば馬とロバの間に産まれた生物。植物で言うところでは接ぎ木。

ファンタジー世界の場合は、ライオンの顔に羊の胴体あって尻尾が蛇の キマイラ って言う・・・・・・」


『こ、今回エルライナちゃんが戦った化け物は、その神話に出てくるようなキマイラみたいなのに当たるんだよ! てか話し長いよっ!!』


いや、話しを振って来たのは神様の方でしょ。


『まぁそれはともかくとして、エルライナちゃんはもう分かっていると思うけど、キメラってのは数種類のモンスターを人工的に合成して作るモンスターの事なんだ』


人工的・・・・・・やっぱりキメラだから人が故意に合成しないと生まれない生物なのか。


『もしかしたらそのキメラを作った張本人は、ダンジョンに棄てたのかもしれないね』


「あんなに強かったのに棄てたって、それはそれでなんかおかしい気がするようなぁ、気もしなくもないようなぁ〜・・・・・・」


S&W M500 どころか クレイモア や パンツァーファスト3 を喰らっても生きているほどの生命力があった。

それになによりも力が強かったのに・・・・・・納得出来ないし、棄てたとは思えない。


『まぁ、そのぉ〜、ね。成功の判断基準は作った本人次第だからさ、聞かなきゃ分からないよ』


「う、うぅ〜〜〜ん・・・・・・」


神様が言ってる事に一理ある。


『だからさ、化け物の正体とかあそこにいた経緯とかの事は総合ギルドが調べてくれると思うから、キミは みんなが助かってよかったぁ〜! って思えば良いと思うよ』


「・・・・・・はい」


なんだろう、神様に押しきられた気がする・・・・・・。


『それはそうとぉ〜、キミに頑張ったご褒美をあげようと思ってるんだよねぇ〜』


ご褒美?


「神様、私は神様からなにも頼まれてませんよ。ご褒美なんて・・・・・・」


『まぁまぁ、あの化け物を放置していたら甚大な被害が出てたし、倒すのに苦労してたからねぇ〜。ご褒美なしじゃ可哀想でしょ?』


「でもぉ〜・・・・・・」


『まぁ今回は武器をあげたりステータスアップとかそこまでしないよ。ただ贈り物をするだけだよ』


「贈り物?」


『うん! エルライナちゃんが喜びそうな物を用意したんだよ。今から送るね!』


神様がそう言うのと同時に アイテムが送られて来ました。 とギフトアイテムを受け取ったと言う通知が表示される。


「あ、来た。どれどれぇ〜・・・・・・ッ!? こ、これはっ!?」


『たくさん送ったからね! みんなで仲良く食べるんだよぉ〜!』


神様はそう言っていつも通り一方的に切ってくるが、俺は送られて来た食べ物に夢中になっているので全く気にしてない。


「これは素晴らしい・・・・・・フッフッフッフッフッフッ、あれを作るぞぉぉぉおおおおおおっっっ!!!」


ストレージを開き調理器具と調味料と食材を取り出すと、日本人には馴染みのあるを作る為に鼻歌を歌いながら料理を始める。



「・・・・・・そろそろかなぁ?」


お鍋の蓋を開けると中でグツグツと黒蜜のような色の液体が煮たっていて、しらたきと白菜とネギに焼いた豆腐としいたけと春菊、そしてメインディッシュである黒毛和牛のお肉がいい感じに浸かっている。

そう、これは究極の料理 すき焼き!! 神様が俺に送ってくれたのは黒毛和牛なのだっ!!

あ、それとレトルトの白いご飯。だって・・・・・・炊こうとすると時間がかかるから、ね?


「ふわぁ〜、いい匂い・・・・・・神様、黒毛和牛送ってくれてありがとう。いただきます」


そう言いながら一枚のお肉を箸で掴み、一度溶き卵に浸けてから口の中へ運ぶと、味わう為にゆっくりとアゴを動かしてお肉を噛む。


ッ!? 〜〜〜〜〜〜ッッッッッッ!!!?


「うみゃぁぁぁああああああああああああいっっっっっっ!!!?」


噛めば噛むほど肉汁が出て来て口の中に広がる。その上、甘ダレと絡み合うと旨さが増す。


この贅沢な料理を知っている日本人に生まれて良かったぁ〜〜〜!! でももう日本人じゃないんだけどねっ!!


「ハァ〜・・・・・・美味しい。まだ量があるからなぁ〜、色んな料理を作ってみようかなぁ?」


黒毛和牛をたくさん送って来た神様に感謝しないとねぇ〜。


「・・・・・・エルちゃん?」


・・・・・・あ、この声に聞き覚えがあるぞ。と思いながら聞こえて来た方向に顔を向けると、そこにリズリナさんが立っていた。

しかも俺の作ったすき焼きを食べたそうにして、いや! むしろちょうだい。って言いたそうな顔をしているっ!!

てか、なんでここにいるの? って聞きたいけど聞けないっ!!


「・・・・・・美味しそうだね」


う、うん・・・・・・美味しいよ。とリズリナ言うべきところだが、顔をそらして食事を再開する。独り占めする為にっ!!


「・・・・・・エ〜〜〜ルちゃん?」


さっきよりも声が近いのが気になったので目だけ向けるて見てみると、リズリナさんが目の前まで迫っていた。


ち、近いっ!! しかもさっきよりも威圧感が半端ないんですけどぉぉぉおおおおおおおおおおおおっっっ!!!?


「それ、私にもちょうだい」


ダメです! 私が全部食べるんですっ!! と思いながら箸を伸ばした瞬間、後ろから手を掴まれた!


「美味しそうな料理を食べてるじゃないの、エルライナちゃん。それなんて言う料理なの?」


ゲッ!? こ、この声はエイミーさんじゃないかっ!!?


「ほう・・・・・・いい匂いがすると思って来てみれば、お前はこんな物を作って食べていたのか」


ラミュールさんまで来たっ!? どどどどどど、どうしてここにいりゅにょぉ〜〜〜っ!!?


「あらぁ〜? 美味しそうな料理があるねぇ〜」


「ッ!?」


ミュリーナさんが俺の胸をいきなり揉んでくるから、声を出しそうになった。てか、この人もなんでここにいるの? てかお胸を揉み揉みするの止めて。


「ミュリーナ、お前は相変わらず他人の胸を揉んでるなぁ」


「だって、こうやって女の子の胸を揉んであげると可愛い声を出して気持ち良さそうにするし、なによりも私自身も一緒に楽しめるから・・・・・・」


ちょいちょいちょいちょいちょいっ!? ちょいとまったぁぁぁああああああっっっ!!?


「お母さんっ!? もしかしてラミュールさんとミュリーナさんって家族なんですかっっっ!!?」


「ああそうだ。お前に話していなかったか?」


「エエ〜〜〜・・・・・・」


今初めて聞いたんですけどぉ〜〜〜。しかも親と子でギャップありすぎだろぉ〜〜〜・・・・・・。


「そんな事よりも、その料理を食べたいから用意してくれ。無論私を含めた全員分だ」


「え? ・・・・・・ハァッ!?」


クッソォォォオオオオオオッッッ!!? この親子にハメられたぁぁぁああああああああああああっっっ!!!?

かくなる上は・・・・・・あの方法しかないっ!!


「一人分しかないので出来ません」


「えっ!? エルちゃんさっき、 まだ量があるからなぁ〜。 って言ってたじゃん!」


その話しを聞いていたのかリズリナさんっ!?


「ほう、私にウソを吐くとはいい度胸をしているな」


うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜・・・・・・ラミュールさんの威圧感が半端ないよぉ〜〜〜。


「エルちゃん、私達に作ってくれるよね? 友達だよね? ・・・・・・ね?」


ヤメテ リズリナサン、ソレト コレトハ ハナシガベツアルヨ。


「エルライナちゃん、みんなで仲良く食べた方が美味しく感じると私は思うんだよねぇ〜?」


ハッハッハッハッハッ・・・・・・友達同士の宴会は楽しいと思えるけど、これ割り勘が出来ないじゃん。俺だけ損するんじゃ意味ないじゃん。


「私達にそれを作って欲しいなぁ〜・・・・・・」


ミュリーナさん、さっきよりも激しく揉まないで下さい。変な声が出ちゃうからさぁっ!


「その料理を全員分作ったら、先ほどのウソは不問とする」


きょ、脅迫ですかっ!? ラミュールさん、脅迫はよくないですよっ!!


「う、うう・・・・・・ううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・」


俺は・・・・・・俺はぁぁぁああああああああああああっっっ!!?




「・・・・・・・・・・・・出来ましたよ」


ラミュールさん達の威圧に屈したので、みんなの分のすき焼きを作りました。


「ご苦労。さぁ、みんなでいただくとしよう」


さっきいたラミュールさんを含めて、エイド教官やシドさん、それにグエルさん達第二騎士団人達と共にすき焼きパーティーをする事になった。

みんな、美味い! って言って絶賛してくれるけれども・・・・・・。


「高級食材の黒毛和牛がぁ〜・・・・・・全部なくなっちゃたよぉ〜・・・・・・しかもポイントまで痛手・・・・・・クスンッ!?」


俺だけは泣いていたのであった。

ちなみに化け物と戦う前にエイド教官が総合ギルドに応援要請していた事も、この時に気づいたのだ。

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