第6話
「とりあえずベイガー、アナタに上層部へのオークの報告は任せるわ」
「分かったが・・・・・・エルライナを怖がらせたままでいいのか?」
ベイガーさんは身体を震わせているエルライナを可哀想な目で見ている。
「あ、あぁ・・・・・・ああっ!!」
お、俺は見た! エイミーさんの恐ろしい顔をっ!? しかもその張本人は今現在平然とした表情でベイガーさんと話している。恐いよ。エイミーが恐いよぉぉぉおおおおおおっっっ!!?
「そんな、私はエルライナちゃんにあれの事について聞いただけ! だから恐がらせるような事は全くしてないわよ!」
いやいやいやいやっ!? 恐かったっ! メッチャ恐かったっ!! ウソを吐いた瞬間に殺されるんじゃないのか? って思うぐらいにっ!!
「ところでエルライナちゃん」
「ひゃ、ひゃいっ!?」
はい。って言うつもりが声が裏返ってしまった。
「私はバルデック公爵様にアナタが王都に着いたと話しをしておくわ。アナタはこのまま総合ギルドに行くんでしょ?」
「は、はい。そのつもりです」
「なら、総合ギルドの方に特殊個体かもしれないオークの報告をお願いするわ」
「わ、分かりました!」
「それじゃあその乗り物に乗って頂戴。私達が馬で門まで優先して入れるように誘導してあげるから後に付いて来て」
確かにこの行列に並んでいると王都に入るまで時間が掛かりそうだ・・・・・・もうこうなったら今さらなので、エイミーさんに正体がバレても良いからハンヴィーをしまっちゃおう。
「エイミーさん、そんな事をしなくても大丈夫ですよ。今から消しますから」
そう言った後にハンヴィー1152を格納庫へ収納する。
「えっ? えぇぇぇええええええっっっ!!?」
「エイミーさん、後ろに乗せてください・・・・・・あれ?」
エイミーさんを見ると頭を抱えながら下を向き、ブツブツ何かを言っている。
「スキルのないはずなのにアイテムボックスまで使えるなんて・・・・・・」
「エ、エイミーさん? ・・・・・・大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないわよっ!! 私が学園で習った事が全部覆った気分だわっ!!」
エイミーさんがまた怒り出してきたっ!!
うわぁ~〜〜っ!? 恐いからやめてぇぇぇええええええっっっ!!
「あのぉ~エイミー先輩、早く王都入りましょうよ。エルちゃんを怒るとグエル団長への報告が遅くなるんじゃないでしょうか?」
おぉ! リズリナさんが俺のフォローしてくれるとは有り難い! 持つべき者は友だ!!
「・・・・・・それもそうね。さぁエルライナちゃん、私の馬の後ろに乗って頂戴。アナタ達四人はベイガーを乗せてあげて。後、兵舎に戻ったら訓練の続きをして」
エイミーさんと一緒に騎手達は 了解! と言った後に、さっき使命された四人はベイガーさん達の側に寄る。
「ベイガー、後は頼んだわよ」
「分かった、報告の方は任せろ」
ベイガーさんはそう言った後に私に向いて来る。
「キミには世話になった。ありがとう」
「エルちゃん、また今度会いましょう」
「今日は助かったわ。後でお礼させてちょうだい」
「エルライナさん、またあったらあの乗り物に乗せて欲しいっす」
「あうっ! ふぁいっ!!」
顔を赤くした私と握手した後に、ベイガーさん達は馬の背に乗る。
「アナタも乗って」
「はいっ!」
俺はエイミーさんの操る馬の背に乗る。
「それじゃあエイミー、先に行くぞ」
「えぇ、どうぞ」
「出してくれ」
ベイガーさんが手綱を持っている騎手にそう伝えると騎手は、ハッ! と言った後に王都に向けて馬を走らせる。そしてリズリナさん達の乗ったも馬もその後に続く。
「あれ? エイミーさん、ベイガーさん達付いて行かなくて良いんですか?」
「良いのよ。どうせ王都に入って直ぐに別れるのだから先に行かせても問題ないわ。それにアナタの場合は検問を受けないといけないのだから」
ん? 俺は検問を受けないと?
「騎士団って検問受けなくて良いんですか?」
「・・・・・・え?」
エイミーさんが知らないのって顔で俺を見てくる。これ、やっちゃったパターンかな?
「あぁ〜・・・・・・エイミーさん、私の知らない事なので教えて下さい」
「そ、そうなの。えっとねぇ・・・・・・門の入り口には特殊魔法が施されていてカードを介してこの国の兵士もしくは騎手であるか、本人の物であるかを判別出来るようになってるの。持ち主じゃない人が騎手カードを持って入ろうとすると門に付いているベルが鳴るわ。もしそんな事をすれば重罪に課せられるから注意して」
重罪って想像しただけで怖いと感じてしまうのは人の
エイミーさんは自分のポケットから騎手カードを取りだして俺に見せる。
「これがその騎手カードよ」
騎手カードを見てみると、なにか文字ようなものが浮かび上がっていて淡く光っている。
「本人が持っていればこの紋章が出てくるわ。私達騎士団や兵士が通ろうとする時は騎手カードを提示するだけで良いのよ」
それだけで良いなんて、なんだか羨ましい。
「この魔法は昔勇者様が作って広めたのよ」
勇者が魔法を作って広めたか。ん? こんな優れた物を作ったって事は、この世界の為に他にもなにか作ったのかな?
「へぇ~、グエルさんのご先祖様って凄いんですね・・・・・・ん? そんなに優れた物を作れるんなら、そのカードの能力を市民カードまで広めないのですか?」
「カードに特殊な魔法を書かなきゃいけないから費用が掛かるのよ。だから市民にまで回せるほど余裕がないわ」
あら、便利と思ったけれども欠点があるんだな。
「それに私達も兵舎に戻ったら犯罪歴がないかを見せないといけないから、ある意味不便な所があるのよね」
「そうなんですか。ありがとうございました。エイミーさん」
「うふふ、そうね。さて、説明も済んだ事だし行きましょうか」
「はいっ!」
私の返事を聞いたエイミーさんは手綱を引き馬を王都に向けて歩かせる。
「はい、終わりました。アナタのカードをお返ししますね」
私は門番さんに渡した総合ギルドカードを返してもらう。
「エイミーさん、終わりました」
「終わったのね。さぁ、馬に乗って」
「はい」
俺は返事をした後にエイミーさんが操る馬にまた乗る。
「乗ったわね。それじゃ行きましょう」
エイミーさんはそう言うと総合ギルドに向けて馬を歩かせる。
ここが王都かぁ〜、ゴーゼスよりも活気があるな・・・・・・おおっ!? あそこのお店は服屋さんか! ショーウィンドウがあるお店はゴーゼスで見かけなかったぞ! もしかして、あのお店は高級店なのかな?
お! あそこは防具屋さんに飾ってある鎧カッコいいなぁ〜〜〜っ!! まるでゲームの世界に出てくるような防具・・・・・・ってぇ、そのゲームみたいな世界にいるんだよな。
「・・・・・・ねぇ、エルライナちゃん」
「はい、なんですか?」
王都の風景を楽しんでいたら、エイミーさんが突然俺に声を掛けてきた。
「やっぱり騎士団に興味ない? エルライナちゃんが入ったら私自身心強いし、グエル達も喜ぶと思うの」
エイミーさんが勧誘してくるけれども俺は騎手に入る気はない。
「ゴメンなさいエイミーさん。私は騎士団に入団出来ません」
「・・・・・・やっぱり勧誘は出来なかったわね。でも、エルライナちゃんと一緒に戦う時は頼りにしているわ」
「はい、分かりました」
エイミーさんは最初から断られるのを知っていて俺を勧誘していたようだけれども、やっぱり軍から見たら俺は宝石のような高価な価値があるのかなぁ・・・・・・でも、エイミーさんの瞳を見つめていると不思議と罪悪感を感じてしまうのはなんでだろう? 期待に応えてあげられなかったから? それとも・・・・・・。
「はい、到着。エルライナちゃん後の事は任せるわ」
そうこう考えている内に総合ギルドの前まで着いてしまった。
「エイミーさん、ありがとうございました」
俺はお礼を言った後に馬の背から降りる。
「お礼を言わきゃいけないのは私の方なんだけれどもぉ・・・・・・まぁいいわ、ここで立ち話しもなんだから後で会いましょう。その時はグエルとキースを一緒に連れて来るわ。彼らもアナタに会いたがっていたからね」
「分かりました! エイミーさんその時は楽しみにしています!」
「うふふ、それじゃあ総合ギルドいる彼にも宜しく伝えておいてね。じゃあね、エルライナちゃん!」
えっ!? 彼って誰? ってエイミーさん勝手に行かないでよっ!!
「エイミーさんっ!! 彼って誰ですかぁっっっ!!?」
エイミーさんに聞いてみたけれども、背を向けて手を振るだけで行ってしまった。
「行っちゃった・・・・・・仕方ない報告しに行こう」
俺はエイミーさんの言った彼とは一体誰なのかを考えながら総合ギルド入って行く。
「おぉーーーっっっ!!」
流石王都の総合ギルド! 外もそうだったが内装の作りも立派だし人も多い! ボーゼスさんが前に話していた通りの光景!!
「えぇっとぉ、冒険科のカウンターは・・・・・・あっちだ!」
俺は冒険科の受け付けカウンター待ちの列の最後尾に並ぶ。
それにしてもカウンターもスゴいな。ゴーゼスの時は冒険科のカウンターが四つ、商業科カウンターが四つ、産業科カウンターが二つの計十箇所しか受け付けがなかったのに対して、王都では三つとも受け付けが十箇所ある。
それだけこの世界にとって総合ギルドが重要な役割をしているか、又は王様が見栄を張るために投資をしているのかのどちらかだ。
「次の方どうぞ!」
「あ、はい!」
もう呼ばれたよ。カウンターの数が多いと早いね。
「おはようございます! 今日はどのようなご用件ですか?」
受付嬢さんが営業スマイルで俺に話し掛けてくる。
「素材売却と報告をしに来ました」
「では、まず先に冒険科カードを見せていただけますか?」
俺は冒険科カードを受付嬢に渡すと俺の名前を見て目の色を変える。
「エルライナ様でしたか。すみませんが色々とお話があるので、ここではなく応接室で対応させて頂きます」
応接室って、嫌な予感しかしないんですけどっ!!
「私はなにも悪い事していないんですけどっっっ!!?」
「いえいえ、違いますよ! アナタの場合はランクアップ試験の話しがあって、話しが長くなるのでここではなく応接室で話しましょう。て事ですよ!」
なんだそう言う事か。
「分かりました。でも報告の方は早めにした方が良いと思うので先に言いますね」
「はぁ・・・・・・報告ですか?」
「そう、報告です。ゴーゼスから王都に来る道の途中にオークが出てきました。証拠も持って来ています」
「オ、オークですか!!?」
受付嬢さんはカウンターから身を乗り出して来る。
受け付け嬢さん、驚くのは分かるけど近い! 顔が近いよっ!!
「お、落ち着いて下さい。詳しい話しは応接室でしましょう」
俺がそう言うと受付嬢さんは身を乗り出すのを止めて身なりを整えた後に、咳払いをしてから俺を見つめる。
「そうですね。それでは案内をするので着いて来て下さい」
「はい」
俺は応接室に向かう受付嬢さんの後を付いて行くのであった。
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