第22話 パクりッ

 最近のお笑い界は衰退の一途を辿っている。

 皆、最初の数年は若さと気力で楽しんでやっているのだが、これから売れるかもという気配だけを残しつつ、いつの間にか舞台やTVから姿を消すことがしばしば続いている。


 俺は突っ込み担当で、ボケ担当のSと二人で芸人を始めて7年目に入った。

 最近やっとTVのレギュラーを二本獲得し、そして芳元の舞台でも頻繁にネタを披露出来るようになってきた。

 それもこれもこのネタ帳のお蔭だ。知り合いの芸人がやめる前に俺たちに譲ってくれたのだ。ただこのネタ帳は普通のノートより何倍も大きいのでネタは必ず俺の部屋で二人で練っている。今日も打ち合わせだ。

 顔の広いSがまたやめようか悩んでいる若いヤツを連れてきた。

「一時間あげるから君の悩みやネタをここに書いてみて!」


 一時間後部屋を覗くと、そいつがいなくなっている。

 代わりにネタ帳が『ゲフッ!』っとゲップをし、また一回り大きくなっていた。

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