第20話 目
気の進まない送別会だけど、あのお店は魚料理が絶品だと知っていたので、行くことにした。
もう私は、今日付けでこの会社は辞めてるんだし、上座とか気にしない。
だから、一番奥の隅の席に座った。
「君が居なくなるなんて淋しいよ。僕は明日から、何を楽しみにすれば良いのかな?」
早速、私がこの会社を辞める原因となった主が、側に来た。
「君には入社当時から、あんなに目をかけてたのに、結局僕には全く目もくれなかったね」
私は食べることに集中したいのに、コイツは最後まで私の邪魔をするんだな。
私はカマ焼きから箸で丁寧に目玉を掬い出し、隣の皿にポトリと落とす。
「魚の目で良かったら」
ソイツは一瞬停止した後、何のことか理解できずに話を続けようとしたが、その魚の目が気になるのか、漸くその場を立って離れていった。
「私は、魚には目がないんですよ」
そうポツリと呟くと、私は改めてカマ焼きと一対一となり、再び箸でそれをつつき始めた。
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