海淵の子

深見萩緒

マリンスノウ




ぼくは一羽の海鳥である

喉を枯らしてかうかうと、哭き喚くことしか出来ぬ海鳥である


ああ ぼくは鯱に羽根を毟られる


ああ ぼくは、不愉快なほどか弱いいのちだ



ぼくは一匹の魚である

冷えた塩水に煽られ、身を捩ることしか出来ぬ魚である


ああ ぼくはきみに掬い上げられる


ああ ぼくは、太陽の元では生きられぬ



ぼくは海中の雪となって、海溝の淵に腰掛ける


ああ ただただ


ぼくを掬ったきみの手が、悴んでいないかが気掛かりだ

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