Op.52 Good Game

 完全に修復されたサージェントプラナスに乗り込み、ミコトとシタンはディアボロスの元へと向かう。

「ミコトも、ついて来なくて良かったんだぞ……」

「ディアボロスを誘導した後、安全距離まで退避しなければなりません。僕のナビゲートが必要になります」

「ナビゲートなら、ケテルを使えば離れていてもできるのではないか?」

「できます」

「え?」

「一緒にいたかったんです……シタンさんと」

 思わず後部座席へと振り返ったシタンに、ミコトは恥ずかしそうに告げた。

 不意打ちの甘酸っぱい言葉に赤面し、シタンは再び前方に向き直る。

「……わかった。一緒に行こう」

「はい」

 ミコトは、にっこりと微笑んだ。


          ◆


 ディアボロスの前に躍り出たサージェントプラナスは、つかず離れずの距離を保ちながら、ムスペル高原へと誘導する。

 ムスペル高原は火山性のガスが滞留しており、人や動物はおろか、植物も生育しない不毛の土地である。セフィロトシステムの切り札を使うには、打ってつけの場所だった。

 数時間に渡る誘導のあと、ムスペル高原に到着したサージャントプラナスは、その俊足を生かしてディアボロスから一気に距離を取った。

 ミコトは、サージェントプラナスの操縦席から身を乗り出し、ケテルの半透過型ディスプレイを表示させる。

「照準線をケテルより励起。ゲブラーの最終位置修正」

 ミコトの操作に伴い、戦艦のような威容を誇る人工衛星ゲブラーが、静止軌道上においてイオンエンジンを稼動させ、自らの位置を微調整した。次いで、電磁投射砲の砲身を展開し、コンデンサへの充電を開始する。

「マナーには反しますが、あえて宣告します」

 頭上にかざした手を、ミコトはディアボロスへと振り下ろした。

「これで……ggです!」

 ミコトの命令を受け、ゲブラーは電磁投射砲を地表に向けて撃ち放った。

 タングステン製の弾頭は、音速の数倍もの速度で落下し、赤熱しながらディアボロスに激突する。

 惑星そのものを貫くような衝撃と膨大な熱量によって、ディアボロスは一瞬で溶けるように粉砕された。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る