Op.46 未来を望む

「ちょっと良いか?」

 ボーダが、ふらりと割って入ってきた。

 ティリアウルガリスを降りたライドに近づくと、携えていた銃剣の銃床で唐突に彼を殴りつける。

「前にカッコ悪いところを見せて、それなりに反省もしたつもりだったんだが……本人を前にしちまうとな」

 言いながら、ボーダは膝を折るライドへと銃口を向けた。

「ボーダさん!」

 ミコトが制止しようとした。

 と、その前を走り抜け、クリファがライドに覆い被さった。

「……どくんだ。クリファ」

 クリファに向けて、ライドが諭すように言った。

 対して、クリファは首を横に振る。

「どかない」

「どけ!」

「どかない! クリファにはライドだけだから! ライドが必要だから!」

 しばらくの間、ライドとクリファの押し問答を険しい表情で見つめていたボーダが、ゆっくりと口を開く。

「……妻も娘も、生き返りはしねえ。割り切れねえよ。許せるわけがねえ。生涯を賭けて恨み続けてやる」

 一拍。

「だが……それは……これまでのお前に対してだ……これからは、お前にすがりつくその子を、悲しませるような真似はしちゃいけねえ……大人なんだ。俺たちはな」

 搾り出すように告げてから、ボーダは銃剣の構えを解いた。

 ゆっくりと踵を返すボーダの憔悴しきった表情を目にしたミコトは、居たたまれなくなって駆け寄り、彼を抱き締めた。

 ボーダもミコトを抱き締め返した。

 その口から吐息と共に漏れ出した嗚咽は、やがて慟哭へと変わった。

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