大陸の覇者の没落 ー辺境の地の帝国の来訪編ー
第54話:猛虎の進軍 v0.0
_ダーダネルス帝国北部、最北端属領の国境
遅滞戦闘中の北部方面帝国軍と、突如として属領内に侵攻を開始したヴァルティーア帝国との間では、平原をまたいで熾烈な戦闘が行われている。
「行けぇッ!行けぇッ!」
『ウゥゥゥラァァァァァァァァァァァァッ!』
ヴァルティーア帝国軍将校の突撃の号令で、薄い緑色のヘルメットをつけたヴァルティーア帝国兵たちは急造の塹壕から一斉に飛び出し対峙するダーダネルス帝国軍へと突っ走っていく。付近に散乱する味方兵士だったものの肉塊を踏み越え、ただただ突撃のみを敢行する。見てみれば、彼らの手にはドラムマガジン付きのサブマシンガンが握られている。
「ま、魔導師ィッ!大規模魔法だ!それに魔導バリアも展開ッ!」
3回目の大群衆による突撃を確認したダーダネルス帝国軍指揮官は、後方に展開する魔導師たちに魔法展開を要請する。
「はぁ・・・はぁ・・・りょ、了解ッ!」
疲労困憊の様子で、総勢2000名にも満たない魔導師たちは魔法の詠唱を開始する。
「くっ!間に合わんか!」
司令官は恐れをなさず突撃を続ける敵兵士たちに内心恐怖を覚える。すでに相手との距離は10リージ(50メートル)を切っており、このままではこの第五防衛ラインが突破されてしまうのは目に見える。そうなれば、残される最終ラインはるか後方にある城塞都市エリスのみだ。今日だけで数回にわたる戦闘をしてきた我々に、そこまで体力が持つ保証はない。
「第一列銃兵隊!前へ!」
指揮官は『やむなし』と言いたげな顔をすると、待機中だったマスケット銃を所持する総勢100名の第一列銃兵隊を前に出す。
「構えェッ!」
赤い服を身にまとった銃兵隊たちは、司令官の声とともに一斉にマスケット銃を敵兵に向けて構える。
「___撃てェッ!」
有効射程距離に敵が入った瞬間、司令官は銃兵隊たちに発砲の指示を出す。
パァンッ!__パンッパンッパンッパンッ!
銃兵隊の持つマスケット銃は発砲とともに大量の白い硝煙を排出。周囲をその硝煙が包み込む。
「第二列、前へ!」
過去に行われたダーダネルス=ヴァルティーア帝国戦争。その時の教訓として、銃兵隊は全員を一斉に使うのではなく、数部隊に分けて運用すると言うものが得られた。それを今、彼らは見習い、実行に移していた。
「構えッ!」
司令官は第一列銃兵隊を後方に退避させると、第二銃兵隊を前衛に移動さ、硝煙が晴れていない今のうちにマスケット銃を構えさせる。
「よーし・・・いつでも撃てるように!」
硝煙が風に乗り、視界が戻る__その時だった。
パパパパパパパパッ!
「ぬッ!?」
敵の居る方向から、多数の光る矢がこちらに向かってやってくる。それはあっという間に距離を詰めると、マスケット銃を構えていた第二列銃兵隊を次々と撃ち抜いていく。
「て、敵の装填速度は化け物かッ!?」
第二列銃兵隊の兵たちが次々と倒れ伏していく中、司令官は驚愕の顔を隠せず、ただただ見ることしかできない。
「ま、魔導師ッ!魔導シールド展開はまだかッ!?」
「あ、あともう少しです!」
魔導師は司令官からの問いに、汗水を大量に垂らして言う。
「早く!早くするんだ!このままでは!」
ドーン...ドーン...ドーン...
「ッ!死の咆哮かッ!」
死の咆哮。これが戦場に鳴り響いたあとやってくる風切り音を聞いた時、一瞬にして爆裂魔法があちこちに発生。大地を揺るがすほどの大爆発により大量の兵士たちを爆殺すると言われるものだ。今回も、この死の咆哮だけでどれだけの兵士が死んだか、想像したくもない。
ヒュゥゥルルルルルルルルル...
妙な風切り音が戦場にこだまする。
「く、くるぞ!全員伏せろぉぉぉぉッ!」
兵士たちが次々と地面に伏せる。
_ドガァァァァンッ!ドガァァァァンッ!
伏せたと同時に、辺り一面に次々と大爆発が発生。土砂や人間の一部が辺り一面に散らばる。
『ウゥゥゥゥゥゥラァァァァァァァァァァァァァァッ!』
敵兵の一部もこちらと同様に爆発に巻き込まれていたが、それを物ともせず奴らは雄叫びをあげて着々とこちらとの距離を詰めてくる。
「ま、まずいッ!魔導師!早く魔導バリア・・・を・・・?」
司令官が後ろを振り向く。そこに魔導師の姿はなく、残っていたのは彼らの四肢胴体であろうものと、羽織っていたローブ。そして、巨大なクレーターのみであった。
「く、くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」
パァァァンッ!
まるで帝国が滅亡へと走って居るのを象徴するかのように、司令官は敵の放った凶弾により命を散らした。
大物量と新型兵器で攻めてきた敵軍に、北部方面はなすすべなく敗退。この日だけでダーダネルス帝国の属領と化していた数にして50もの属領の内、15以上の属領が独立を果たし、ヴァルティーア帝国軍は破竹の進軍を続けるのであった。
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