第42話:歓迎されぬ訪問者達(2) v0.0

_帝都強襲部隊



 「よし、お前ら!目標地点到達まで後数分だ!全員気を引き締めろ!」


 『オォォォ!』


 ティルトローター機の搭載した2機のエンジンが発する轟音に負けない声で第一陸戦隊隊長は叫び、それに呼応するかのように隊員達が雄叫びをあげまくる。


 「う、うるさい・・・」


 あまりにもうるさいのでアロンソ隊員は両手を使って耳の穴を塞ぐ。


 「おいおいぃ!?お前そんなんで大丈夫かぁ!?」


 バスケス隊員はそんなアロンソ隊員を可哀想な子を見るような口調で煽る。


 「い、いやだって自分後方支援要員ですし・・・」


 「あぁ!?戦地に後方も前方も上も下も海も空も陸上も関係ねぇ!あるのは硝煙の匂いと怒号と銃声だけだ!」


 「い、いや関係ありますよっ!?」


 隊員達の雄叫びがなおもやまない中、機内放送が流れる。


 『ランディングポイント到達まで後30秒。ハッチにて待機を』


 「よぉし!お前ら!聞こえたな!?戦闘だ!血と硝煙の匂いを嗅ぎに行くぞ!」


 『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!』


 隊員達はぞろぞろと狭い後部へと移動してくる。その荒波に飲まれてしまったアロンソ隊員も連れて行かれる形でハッチまで来てしまった。


 「う、うぎゃあああああ!離せ!離すんだあああああ!」


 男達の間に挟まれるような形でハッチまで来てしまったアロンソ隊員は、なんとか安全な後方に移動しようと屈強な男達を動かそうとするが、どれだけ動かそうとしても隊員達は一向に動かない。おそらく脳みそは『戦闘』で埋まっているのだろう。この戦闘狂め。


 『ランディングポイントに到達。ハッチ解放します』


 機体がいきなり減速したと思った瞬間、パイロットから戦闘の開始を告げられる。


 「い、い、いやだああああああ!」


 そして、地獄の門は開門を開始する。初めはうっすらと光が差し込む程度だった隙間は徐々に大きくなる。


 「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁ!戦闘だぁぁぁぁぁぁ!」


 「いぇぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 そして、地獄の門は完全に開いた。


 「よし!総員突撃ィィィィィィィィィィッ!」


 「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおっ!」


 ある者は『言うこと機関銃』に取り付けた銃剣を構えるような形で、ある者は普通に銃を構えて疾走を開始する。


 「や、やめろぉぉぉぉぉぉ!」


 男臭い肉塊という荒波に完全に飲まれてしまったアロンソは抵抗すらできず波に乗って移動するしかなくなってしまった。



_帝都ディオニス、皇城 空中の大庭園



 帝都の中で最も高い場所にある皇城の大庭園。そこに降り立った二つの何かをつけた緑色の巨大な機械竜。いったい何が出てくるんだ、と恐れおののきながら急遽駆けつけた警備兵達は対峙する。


 「い、一体なんなんだ・・・?」


 大庭園の平坦な場所に降り立った『それ』。帝国兵達も未だ見たことがない未知の何か。恐る恐る兵士たちが槍を構えて近づいていく。


 「お、おい・・・なんか聞こえないか・・・?」


 兵士の一人が聞き耳を立てて言う。兵士たちも続いて聞き耳をたてると、かすかに何かが聞こえるのがわかる。


 「お、おい!動いてるぞ!」


 兵士の一人が機械竜の後ろ部分であろう場所を指差す。


 「そ、総員槍構えッ!」


 兵士達は一斉に槍を構えて、少しずつ動いている後ろ部分にゆっくり近づいていく。


 「いぇぁぁぁぁぁ...」


 「や、やっぱりなんか聞こえるよな!?」


 兵士の一人が冷や汗をかきながら言う。


 「お、臆するな!ここは我らの土俵ぞ!量で蹴散らすのだ!」


 警備隊長が大声で言った___直後だった。


 「よし!総員突撃ィィィィィィィィィィッ!」


 「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」


 「ひ、ひぃっ!?」


 後ろの部分が完全に開いたかと思うと、突如として中から奇声を発する何かが現れる。それも、一つや二つではなく、沢山現れる。


 「や、槍部隊突っ込めぇぇぇぇっ!」


 あまりにもインパクトが強かったのか、警備隊長は若干怯えた声で指示する。と同時に、警備隊長はあらぬ方向へと走って行った。いわゆる敵前逃亡である。


 「え、あ・・・くそっ!全員いくぞぉぉぉぉぉ!」


 斯くして奇声を発する謎の集団と皇城警備隊との熾烈な戦い(?)が始まった。

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