新:第7話:2つ目の惨劇 かいこー其の4

 作業用BGMとか書いておこうかしら……。

 ______


_ドライ市より東 15キロ地点 午前11時



 高度約2000メートル。そこを、5機V字5個編隊で空を悠々と飛行する4機のA-10G-4及び16機の戦闘用UAVの姿があった。


 「さて……」


 オラクル3ことアンドリューはヘルメット内部に投影された全方向の映像・・・・・・・・・・・・・・・・・・・を見回す。

 周囲に敵らしきものも、未確認生物も居ないことを確認した後、早速『ゴーグル』と緊張を和らげるための会話いちゃいちゃタイムを遂行する。


 「さて……ゴーグル」


 『はいはーい!なんでしょーか?』


 「今回俺たちはドラゴンとか言うのを討伐しに行くわけだが……何か知ってるか?」


 『うーん……。ちょっとデーターベースを調べてみま……あ、あれ!?』


 ゴーグルの悲鳴にも似た声がコックピットに響き渡る。


 「お、おい……どうした……?」


 『い、いや……通信衛星との通信ができなくて……』


 「ん……?あぁ、そういえば……」


 基地で待機して居た時、オラクル1が『ネット使いてぇなぁ。なのになんだよこれ』と言い、『ネット回線が不安定です。一旦機器と頭を冷やすか、ネット回線の再接続をお試し下さい』と書かれたペラペラの変幻自在スマートフォンを見せていた。ただの通信料未払いじゃ無いのか、とその時はちょっとした笑い話になったが……あの時一度、自分たちも疑いの目でネットに接続できるか確認すべきだった。


 『お役に立てなくて……すみません』


 「いや……いいさ」


 <「んー……あのな、アンドリュー」>


 「……!?」


 無線機越しに聞こえる、僚機の仲間の声。そこで、アンドリューは気付いてしまう。


 <「自慢したいのはわかるぞ?だがな……今ぐらいは無線を切ったら……どうだ?」>


 「えっあっ……いやそんなんじゃなくて……」


 アンドリューは慌てて無線を切ろうとする——が、そこでさらに同僚が追い打ちをかけた。


 <「お前のその会話を聞いたうちの子ゴーグルがよ、なんかやけに張り切ってるんだ。わかるだろ?」>


 「お、おう……」


 <「だからさ……?」>


 「……」


 <『……もう!どうでも良いお話なんて放って置いて早くお話ししましょうよ……!』>


 <「あ、あぁ。そうだな……。すまない。この話は基地でじっくり話そ」>


 プツッ——。


 アンドリューは無線のスイッチを切る。


 『……大丈夫……ですか?』


 「だ、大丈夫じゃないかも……しれない」


 アンドリューは羞恥心のあまり、暫くの間考えるのを……やめた。



 _数分後 ドライ市付近空域



 「これは……酷いな」


 空一面に広がる黒煙。空に舞い散る火の粉。地上で燃え盛る住宅街。そこは、移民用都市としての昨日も、面影も、全てが崩壊していた。

 そして、街の中心に一つ。不謹慎なことだが、この状況下にとてもマッチングする容姿の赤い何か……いや、巨大な生物・・・・・が、飛膜を大きく羽ばたかせ、地上の家々を口から吐き出す炎のブレス……というよりも、ほとんどレーザーに近い物で焼き払っている。

 その様はどこか恐ろしいが、同時に、その洗練された見た目は誰をも魅了することだろう。


 <「各機散開!一撃離脱を徹底しろ!メインディッシュ各種爆弾は奴を地上に叩き落としてからだッ!」>


 <『『了解ッ!!!!』』>


 とは言え、彼らも見たことのない生物に動揺する暇など皆無。彼らに与えられた任務はこの街を襲撃中の国籍不明軍に対する航空支援などでは無く、あの巨大な生物デカブツの撃破。近接航空支援CAS専用機にさせるような任務ではなかろうと、地上には守るべき人達がいる。それを見捨てる訳にはいかない。たとえそれが、未知の存在であろうとも、だ。


 「よし、ゴーグルッ!戦闘用UAVの指揮は頼んだぞ!」


 『はいはーい!』


 アンドリューはスロットル・レバーを前に強く押し込む。

 4機の古代兵器と16機の最新兵器は、最高時速600キロにも満たない速度でゆっくりと、だが着実に巨大な生物デカブツへと迫る。

 もちろん巨大な生物デカブツは、甲高い音を立てながらこちらに向かってくる得体の知れない20個ほどの何かを認識すると、地上の家々を焼き払うのをやめてこちらへと明らかにこちらよりも優速な勢い・・・・・・・・・・・・・・・で、オラクル2の機体に向けて飛翔する。


 <「オラクル2、交戦エンゲージッ!!」>


 オラクル2はたくましい声とともに機体をロール。それと同時に後方からオラクル2を追尾していた4機の戦闘用UAVも散開。緩上昇中の巨大な生物デカブツ向けて急降下を開始し、完全に頭上を取っての多方向からの同時攻撃が開始されようとした——その時だった。


 <「き、消えたッ!?」>


 オラクル2及び戦闘UAVは急上昇。突如として跡形もなく消えた巨大な生物デカブツに、一部始終を見ていた各員一同は驚愕の念を抱く他なかった。

  突如として消えた現象、それはまさしく……。


 「こ、光学迷彩でも持っていると言うのかッ!?」


 光学迷彩。自然界でもそれを活用する生物はある程度存在する。(一部のカメレオンやタコ・イカ類)基本的に周囲に溶け込むことで天敵からの視認性を下げることや獲物の捕食等に使われるであろうそれをあの巨大な生物デカブツが所持していたとしたら?

 答えは簡単だ。

 間髪入れず、オラクル2の後方の何もない空間から……否。突如としてそこに現れた、ほぼ垂直上昇で迫る巨大な生物デカブツ。ソレは口を大きく開き、放たれたレーザー状の火柱。それは上昇中だったオラクル2の乗るA-10G-4のケツ目掛けて勢い良く飛翔し、衝突した。


 <「ッ!!オラクル2、被ズザッ……」>


 先ほどまでオラクル2が居た空間に大きな火達磨が形成される。同時にオラクル2の指揮下にあった4機の戦闘用UAVもコントロールを失い、散り散りに市街地へと落下する。


 <「くそっ!司令部!オラクル2がやられた!」>


 オラクル1の悲痛な叫びと共に、巨大な生物デカブツは空中に咲いた黒煙を目に止めることなく再度姿を消した。


 「ゴ、ゴーグル……この状況……どう思う?」

______

 空中戦に関わらず戦闘の描写は難しいと思うの。

 さて、どうやって珍兵器の実戦投入のための理由こじつけを考えよう……。やっぱり世界の軍隊には紅茶が足りない。もっとロマン兵器を愛そう(無茶振り)。

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