新:第4話:キスカアイランド作戦第二段階? 改稿しょの14

 改稿がいつまで経ってもされてないと思ったら、カクヨムをチェックして見てください。基本そちらで執筆等行なっているので。

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_激動の1日を超えた3月7日午前10時 西部方面地方軍基地 作戦指揮所オペレーションコントロール



 頭上で燦々と照りかがやく太陽が辺り一面を明るく照らし、堂々とそびえ立つ西部方面地方軍基地。

 以上なまでに広いそこでは今、来たるべき時……通称『キスカアイランド作戦』と呼称される大規模ドライ市市民・警備隊救出作戦実施の為、基地要員・作戦参加部隊らは各自の任務を遂行していた。


 『各部隊に通達。装備点検・補給完了次第出撃準備を開始せよ。出撃予定時刻は出撃後の部隊展開込みで本日午後18:00の予定』


 その基地の頭脳とも言える作戦指揮所オペレーションコントロール。『EFSA(Erdian Federal Space Agency、エルディアン連邦宇宙担当局)』のオペレーションコントロールセンターにも似たそこでは、一際目を引く正面に設置された巨大な数枚のスクリーン、また各々の席に備え付けられた複数の液晶画面などで現在の状況を確認、適切な情報処理・報告を行い、時折あちこちで要員たちの部隊行動などに対応する声が上がる。

 そんな作戦指揮所オペレーションコントロールの背後に設けられたスペースでは、今回の総指揮官ロドリゲスを筆頭に、十数名の各担当官が頭上から吊るされたライトに照らされ、ほんのり光る長方形の机に置かれた様々な資料を見ていた。


 「前哨戦として偵察機を飛ばすのはいいとして……問題は警備隊と救助対象しみんの状態だ。最悪救護部隊を派遣する必要も出てくる。ドライ市警備隊からの連絡は?」


 ロドリゲスは通信担当員に尋ねる。


 「現在我々が取れる手段は全て試していますが……未だ連絡は取れていません」


 「……確認しておくが、通信機器に異常はないんだな?」


 「はい。衛星利用通信機器以外は全て使用可能。中継局も特に異常なく稼働しています」


 「……まさか……」


 ロドリゲスの脳裏にある1つの可能性が浮かび上がる。

 それは……警備隊の全滅。『MOAB』で周辺の建築物も敵軍もろとも吹っ飛ばしてしまったのだ。敵軍にもし大した損害を与えていない場合……もちろんありえないのだが、最悪を想定するならば無駄な障害物がなくなったあの地域で立てこもる警備隊と市民は格好の的。包囲殲滅されてしまってもおかしくない。

 ロドリゲスは『『MOAB』の使用は止めるべきだったか……』と呟き歯噛みする。


 「作戦予定時刻をもう少し切り上げる必要性があるかもしれんな……。航空参謀、できる限り迅速に、偵察機UAVを離陸させ付近一帯の空撮を行うことはできるか?」


 航空参謀のウィルソンに尋ねる。

 彼はこの基地全体の航空部隊を指揮・管理しており、もちろんその管轄は偵察機……無人機全般にも及ぶ。


 「やれと言われれば行うことは可能です。……そうですね。2時間程時間があれば出撃させることが可能です」


 「2時間、か……作業効率を極端なまでに短縮しろとは言わない。だができるだけ迅速に、その作業を終わらせてくれるか?」


 「わかりました。整備士たちが『給料分以上の仕事やらせるならストライキ起こすぞ』と言って脅迫してきそうな気がしますが……なんとか説得してみます」


 「説得、頼んだぞ」


 「了解」



 _その頃、地図から消滅する規模の被害を被ったドライ市では



 「ふぅっ……ふぅっ……」


 ドライ市警備隊の警備隊長、リンガル大尉は、右手に通信機を携えて3名の仲間とともに辺りを警戒しながら散策していた。

 彼らの服はすでに汚れきっており、警備隊の証拠である青はどす黒い黒にまみれている。遠くから見れば銃を持った浮浪者が歩いているように見えることだろう。


 「こ、これは……」


 彼らの目に初めに入ったもの。それは……すでに『MOAB』投下から数時間以上経過したにもかかわらず、周囲に未だポツポツと残る小さな炎。そして、地面に転がる人体が焼け焦げたような異臭を放つ黄金の甲冑を着た国籍不明軍みもとふめいしゃ。ビルなどのがれきの合間から見えるこの町のシンボルだった白いタワーは、爆風に耐えきれなかったのか中央部分からポキリと折れ、先端部分は地面に横たわっている。

 ネットで見た紛争地帯の光景がこんな感じだったなぁ、と内心思う。そしてそれは、現実になった。それも……こんな形で。


 「周辺に敵は確認できるか?」


 「いえ……見渡す限り……残骸と、死体の山です」


 『それも……そうか』とリンガル大尉が呟くと、パッとしない表情で右手に持つ箱型の通信機を適当な瓦礫の上に置く。


 「各員周辺警戒を続けろ。俺は通信が可能かどうか試す」


 『了解ラジャー


 「……さて、と」


 箱型の通信機のアンテナを立て、通信が可能かどうかを調べる。


 「……こちらドライ市警備隊。西部方面地方軍基地、応答願う」


 しばらく待つが、返事が返ってこない。


 「こちらドライ市警備隊隊長、リンガル大尉だ!西部方面地方軍基地、応答願うッ!」


 怒鳴るような声で応答を求める。……が、やはり返事は返ってこない。通信機の故障だろうか?彼はそう思い各部点検を行うが、特に異常は見当たらなかった。


 「ど、どういうことだ……?」


 まるで電波が何かに遮られているかのように、一切通信が行えない。

 それは即ち、あちら側が我々の安否確認をできなくなったという事。おそらく西部方面地方軍基地はこの異変をすぐにでも察知し、偵察機を派遣するだろう。その時もし我々が生きていることを知らせることができなければ……。

 もっとも、仮にそれを知らせることができたとしても救助までに弾薬が枯渇すれば勝算はないが。


 「通信が不可能……か。お前ら、一時撤収するぞ」


 周囲警戒を行う部下にそう声をかけると、部下の一人が漠然とした表情で


 「た、隊長……あれ……あれ……ッ!」


 とつぶやき、彼から見て真正面を指差す。

 彼の目線の先にあった物。それは……。



 _同地域同時刻、国籍不明軍後方陣地では



 彼らが拠点としていた後方陣地。本来なら作戦会議や意見交換等が行われるはずだったそこは……地獄と化していた。

 事の発端は数時間前。我々が攻略していた街の上で突如として、2つの火の玉が発生した。その次の瞬間、ある者は焼かれ、ある者はあまりにも巨大な爆炎で遠くの彼方まで吹き飛ばされた。そうして量産された大量の負傷兵達はここ、後方陣地まで運び込まれ魔導師たちによる決死な治療魔法付与作業が敢行されていた。

 周囲一帯で絶え間なく鳴り響く死の旋律メロディ。うなり声が上がる数だけ、兵士は死んでいく。

 その状況下で、ど真ん中に設置された巨大なテント内では作戦会議が行われている。


 「ゲラーウス殿……。我々の現在の状況……どう判断すべきか?」


 部隊を指揮する南部第5藩領主は、総司令官のゲラーウスにそう問う。

 もはや攻撃どころの騒ぎではない。あの街を攻撃していた包囲軍総数8万の内、半分近くはすでに死んだ。援軍を要請するにも何をするにも、今回の大量死が原因で、死体より漏れ出る魔法の元……魔素が全て消え去らない限り魔導電信も通信妨害により使えない。


 「現状我々にできるのは、この場を死守することのみ。現在死体より漏れ出る魔素が全て消滅次第本国に援軍派遣要請を打診するが……敵はこの好機を逃すはずはない。本日中に敵が反撃してくることを考慮するべきだな……。だが……」


 ゲラーウスは、心の中に残る一つの不安要素を拭えないでいた。


 「それよりも……が自然発生する可能性がある。もしそうなれば……我々はおしまいだ」


 ゲラーウスの言う『奴』が何のことか、その場に居合わせた者は誰もわからなかった。彼らが唯一わかること……それは、『奴』が危険な存在である、と言うことだった。


 「では、現状戦闘可能な予備の重装兵2万を周囲一帯に展開、敵からの攻撃に即応できるよう各部隊には1騎ずつ騎兵もしくは巨蟲兵を配置いたします」


 東部第15藩領主からの提案に、魔道司令官のギーラスは『待った』をかけて反論する。


 「わ、私は即刻……即刻、この地域より撤退すべきだと考える!一瞬で数万を死に至らしめたあの爆発……あれは、私の記憶にある限り我々の住む大陸で見られるどの大規模魔法よりも強力だ!もしかすると……もしかすると……」


 「もしかすると……?」


 一同が固唾を呑んで、続きを言えと言わんばかりに無言の圧力をかける。


 「……これは……いや、この作戦自体、あちら側が全て仕組んだ可能性がある!」


 あまりにも、突拍子のない発言。その場に居合わせた誰もが呆れた顔になる。


 「いやいや、そんなわけはないだろう……?確かにあの大規模攻撃には目を貼るものがあった。だがあれだけの威力、明らかに1日にそうポンポン繰り出せるようなものであるわけではなかろう。おそらく我々の目が届かぬはるか遠方から、何日もかけて練った超巨大魔法陣を使用した大規模魔法に違いない。この国は、もともとその分野は得意だからな……。あれが科式(科学を応用した物全般)なら違うかもしれんが……。この国は魔式(魔法を応用した物全般)兵器を扱う国だったはずだ。すでに敵の先鋒部隊を本土で迎撃している。その際には大量の魔導師の死が確認されているのだぞ?おそらくあれは敵側が死力の果てに放った一撃……そう案ずる必要はあるまい」


 「だ、だがしかし……!」


 ギーラスの怯えようを見かねたゲラーウスは、あることを提案する。


 「ならギーラス殿。貴殿がそこまで警戒するなら……貴様の配下は後方に移動させれば良いではないか?もちろん、我々は貴様の分も甘い汁は吸わせてもらうがな」


 他の者も手柄欲しさに『そうだそうだ!』、と彼の発言を助長する。


 「ならば……ならば私はそうさせてもらう!!」

 

 「できれば部隊からは離れて欲しくないのだが……まぁいい。それは貴様の部隊、どうぞ御好きにしてくれ。……っと、そうか。魔導師部隊は置いて行け」


 「言われなくともわかっておる!……どうなっても知らぬぞ!」


 ギーラスは、その言葉を残すと一人早歩きでテントから出て行く。ゲラーウスは彼の後ろ姿をまじまじと見つめながら、


 「……孤立は、危機を呼ぶのだが……」


 と、呟いた。

 彼……魔導司令官のギーラスは、修行と題して我々が拠点を置いている大陸、『グラタニア大陸』に点在する様々な魔法文明国家を旅行したと語っていたことがある。そんな彼なら、あれほどの大規模魔法、たった1日でポンポン繰り出せるような代物ではないことはすぐにでも理解しそうだが……。

 いや、決めつけるのはいい判断ではないかもしれない。何せ現在の我々には、相手が使っている兵器が魔式か、科式かを見分ける手段は存在しない。その問題がある以上、あれが科式ではないという断言ができないのは動かぬ事実なのだから。


 「だがさて……どうしたものか」


 ゲラーウスは、思考を張り巡らせる。



 _約2時間後、西部方面地方軍基地 作戦指揮所オペレーションコントロール



 「…………」


 作戦指揮所オペレーションコントロールに居合わせたものたちは皆、無言で真正面に設置された巨大な液晶版を見つめていた。

 それ一面に表示されたもの。それは……灰色の砂嵐だった。


 「……偵察機UAVは……墜落した模様です」


 漠然とした顔でスクリーンを眺めていた通信員は慌てて我に帰り、現状を伝える。

 ロドリゲスは、脳内で一体何が起きたのか整理を試みる。

 偵察機UAVが離陸、ドライ市から東2キロ地点まで接近した。そこまでは良かったのだ。だが次の瞬間、偵察機UAVからの連絡が一切途絶えた。文字通り、一瞬で。何の前触れもないそれはまるで、電波妨害でもされているかのようだった。


 「敵は……ルードシア連邦か……?」


 「いや、軍事衛星は百歩譲っても他国と連絡が取れないことに関して説明がつかないぞ。それ以前に、ルードシア連邦に動きがあれば我々は察知しているはずだ。第一、あの国がわざわざ中世時代の甲冑で偽装して我々を攻撃する意図がつかめん」


 「だがそうなるとなぜ偵察機が落ちたか説明がつかないぞ?地対空ミサイルか地対空レーザーでも配備しているのか?」


 「もしかすると……高高度核爆発攻撃EMPじゃ……」


 「幾ら何でもそれはありえん……とは言えんな。ルードシア連邦は小型のEMP発生装置を開発していると聞く。それならよもや……」


 その場で、様々な憶測が飛び交う。それほどまでに、彼らからすれば不可解なことだった。

 今回投入したのは、偵察機UAVの中でも特にステルス性・電子防護能力に優れるNRL-10と言う機体。

 それが落ちたとなれば……相手をレーダーも何も持たないただの中世風の軍隊だと考察して構成した作戦そのものが基幹から崩れてしまう。


 「……司令官。これからどうされますか?」


 「そうだな……」


 ロドリゲスは悩む。もし偵察機UAVが落ちた要因が地対空ミサイルもしくは地対空レーザーであった場合、先にそれら地対空兵器を先に潰すのが先決だろう。逆にこれが電子攻撃その他諸々、我々からして未知の攻撃であった場合……少なくともデジタル兵器使えない。

 現在想定されるありとあらゆる最悪を予測して行動しなければならないことは明白だった。


 「航空参謀。万が一の事態に備え、電子戦機の即応出撃準備を行ってくれ」


 「了解」


 「それと陸軍参謀、先遣隊として1個騎兵小隊をドライ市周辺に派遣、付近地形の情報収集を行ってくれ」


 「今なら救援部隊を派遣することが可能かもしれませんが……?」


 陸軍参謀が心配そうな表情で言う。


 「確かにそうかもしれんが……できる限り不要なリスクは踏みたくない。あくまでも安全策として夜間での救出作戦を実行する。……この動きを敵が察知した場合、ドライ市攻略を急ぐかもしれん」


 「……了解」


 「あとは各部隊に出撃予定時刻を早めるかもしれない云々を伝えておいてくれ」


 「承知しました」


 陸軍参謀は頷くと、『一足先に』と言いそそくさとその場から立ち去る。


 「衛星との通信途絶と言い、偵察機UAVの原因不明の墜落と言い、一体何が起こっているんだ……」


 ロドリゲスは『困った困った』と言いたげな表情で一言、そう呟くのだった。

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