第171話 修業編14



「今日からは より実戦的にやるからな」


「えっ」


「木剣ではなく 鉄の剣で 魔法も当てるように放つからな」


「え~ 痛いのは嫌ですよ」


「敵は魔物だけではないのだぞ 盗賊も多いし 盗賊でなくても 敵となる者が現れるだろう 人族だけでなく 獣族や 魔族や 天使族と戦うこともあるだろう」


「盗賊ですか」


「ああ 殺す気で向かってくるぞ 不意打ち 騙まし討ち いきなり襲ってくることもあるだろう ダメージを受けてから 戦闘を開始しなければならないかも知れないんだぞ」


確かに いきなり襲われて 命を落とさなかったとしても 腕 脚が傷つけられ使えなくなる可能性もあるのか


「どうするんですか」


「油断しないことだな 貴様は特に気をつけろ 馬鹿なんだから騙されるなよ」


「う~ん 男には近づかないようにすればいいんですね」


「はぁ 敵は男だけではないんだぞ 女盗賊もいるし 女で貴様の敵になる者は絶対に出てくるだろう」


「え~ 逃げれば」


「だから 足を攻撃された後に 敵だと気づいたらどうするんだ」


「え~っと」


「もう 油断したらダメだよ 足で済めばいいけど 心臓を刺されたり 顔を刺されたりすれば 回復が間に合わないかもしれないのよ」


「ユウなら どうするの」


「えっ 私なら う~ん 私は油断しないわよ 誰が襲ってきてもいいように 行動するかな」


「え~ それじゃ楽しくないよ 楽しく旅がしたいのに 師匠 何とかしてくださいよ」


「はぁ 無理だ ユウの言う通り 誰が襲ってきてもいいように 行動するしかないんだ」


「え~ 俺には無理ですよ 襲われても大丈夫なように稽古してくださいよ」


「はぁ そんな稽古はない」


「君は装備が出来ないからね 智王様 何とかしてあげないと 絶対にすぐに死んじゃうと思うよ」


「はぁ そうは言ってもな 自由に旅をするということは 自分の身は 自分で守るしかない 護衛を雇うか 仲間を集めるか」


「可愛い護衛ですか」


「誰も可愛いとは言ってないだろ 魔物退治でお金を稼げば 護衛くらい雇えるようになるし 強い奴隷を買って護衛にしてもいい」


「可愛い護衛かぁ」


「はぁ」


「智王様 このままじゃ 本当に すぐに死んじゃうと思うよ」


「はぁ じゃあ これなんかどうだ」


「指輪ですか」


「ああ 自動回復の指輪だ」


「おお 凄いですね 回復魔法の指輪ですか」


「いや 違う 少しでも怪我をすると 自動にポーションを使ってくれる指輪だ」


「ポーションですか」


「ああ 100個のB級ポーションを収納することが出来て それを自動で使ってくれるんだ」


「B級ポーションは高いけど 君ならそれくらいの指輪をつけたほうがいいと思うわ」


「高いってどれくらい」


「そこまで高い物ではない 1つ50万エンだ 100個で5000万エンだな」


「えっ 高いような」


「怪我をしなければいいのよ 油断しすぎの君には かすり傷でも50万エン使ってしまうって理解出来ていいと思うよ」


「そうだな 常に100個入れておけ 傷つかなければいいだけだ 油断すると大変なんだと理解しろ」


「う~ん まあ 命より高いものはないですけどね」


「それに 傷が出来ると瞬時にB級ポーションを使ってくれるから ダメージを受けてないように見せることも出来るぞ 無敵のようにな」


「おっ 無敵ですか」


「ふっふっ でも 痛みはあるのよ」


「え~ 師匠 痛みがないように出来ないんですか」


「それはダメだ 痛みを感じることは大事なことなんだぞ 痛みが無くなれば貴様は更に油断するだろ 攻撃されれば痛いと分かっていれば 油断も少しは減るだろう」


「B級ポーションは上級ポーションだけど 限界はあるんだからね 油断したらダメだよ」


「今ならA級ポーションに設定出来るが どうする」


「A級ポーションですか 特級ポーションですよね 1ついくらするんですか」


「200万だな 100個で 2億エンだ」


「うっ かすり傷で200万エンは B級ポーションのままでお願いします」








朝 1人で稽古の素振りをしていると 見慣れない男が


20代後半くらいの男が俺を睨みながら 近づいてくる


「貴様が英雄か」


「はい そうですが 師匠に用事ですか」


「ユウのことをどう思っている」


ユウ この人は


「好きですよ 愛していますよ」


「ふん 口だけでないか試してやろう 勝負だ」


えっ なんで


「嫌ですよ 戦いたいなら 師匠と戦ってください」


「うるさい 俺は木剣で戦ってやる 貴様は魔法でも 剣でも 何でもいいぞ 俺にダメージを与えることが出来たら 貴様のことを認めてやる」


何を偉そうに


「稽古中何ですよ 邪魔しないでくださいよ」


「はじめ」っと男は勝手に叫び 向かってくる


凄い殺気を放つ男 強いのかも知れない


俺は思いっきりジャンプして


「魔那よ 我に力を 最大魔法 天地崩壊」


幻影で作った巨大な岩を落としながら アイテムボックスから大量の岩を落とす


「なんだ この魔法は」


幻影の巨大な岩を広範囲に落とし アイテムボックスから取り出した岩は男の上や周辺に落とす


逃げ場はない


男は盾を取り出し その場を動かない


終わったかな


俺は着地し 男を見ると


血を流しながらも 耐えていた


「中々の魔法だったな 次は俺の攻撃を食らえ」


えっ 効いてないのか なら もう一度


幻影の俺をその場に残し 俺は光に紛れてジャンプ


幻影の俺と光を消し 男の上空にいきなり 姿を現し


「転移からの天地崩壊」


「なっ 転移までも使えるというのか」


再び 岩を大量に落とす


着地し 男を見ると


げっ 耐えたのか まあ 攻撃される前に攻撃すれば問題ない


「何をやっている」師匠の声が


「あっ お父さん 何してるの」ユウの声が


えっ お父さん ユウの 


「ユウか 貴様の男がどんなやつなのか試しにな」


「もう 英雄君をイジメたらダメだよ」


「いや 俺の姿を見ろ 奴は無傷なのに 俺はこんなに血を流しているだろ」


「手加減しているんでしょ」


「はぁ 剣神が何をやっているんだ」


「智王 こいつの魔法は中々凄いな 死ぬかと思ったぞ」


んっ 終わりなのかな


「まあいい 殺さない程度に戦ってくれ」


えっ 師匠 止めてくれないの ユウ


ユウを見るとため息をついているだけで止めてくれる様子はない


そしてユウが「油断せず 本気で戦いなさい お父さんになら どんな攻撃してもいいからね」


そうなのか なら


「地竜よ 我の敵を食らえ 地竜召喚」


幻影の竜を出し 地面を這うように男の方に移動させ 口を開け食らいつくように


幻影の地竜に紛れて 石を次々に投げる


「ほう 今度は竜か しかし 魔法で形作っただけのハリボテのようだな」 


石が見えないはずなのに 男は剣で石を全て弾いていく


あれっ 見切られたのか 幻影がバレたのか いや 今なら


俺は全力で走って


「なっ どこに行く」


逃げる


「おい 待て」


男は慌てて走って追いかけてきた


よし 距離が開いた


投石紐を取り出し 石を放つ



男は余裕で剣で弾く


なら


「また 逃げるのか」


俺は走り 森に


木の枝に飛び乗り 更にジャンプし 高い位置から


「氷の世界の王 氷竜よ 奴を噛み砕け」


幻影の氷竜に紛れて 大量の雪と巨大な氷柱を次々に男に向かって落とす


「ほう まだ魔力が尽きないのか」


男は盾を出し防御体勢に


チャンス 「白銀の剣」


巨大な氷の剣を男に向かって次々に落とす


やったか


地面に着地し 男を見ると


えっ


「すまん」


「はぁ 負けてどうする」


師匠が結界魔法で俺の攻撃を防いでいた


「お父さんの負けね 油断しすぎよ 智王様が助けなかったら大怪我してたわよ」


「ここまで 魔力が高いとは思ってなかったんだよ」


「終わりでいいんですね」


「ああ まさか 負けてしまうとはな 本当にユウより弱いのか」


「当然でしょ 私の方がお姉ちゃんなんだから」


「そうですよ ユウの方が圧倒的に強いですよ」


「で 何でお父さんが勝負しているのよ」


「ほら 母さんから聞いたんだ ユウが」


「えっ それはまだ秘密なんだからね」


「どんな男なのかと思ってな ユウは本当にこの男が」


「えっ うん 好きだよ」


「俺もユウが好きだよ」


「えへっ」


俺はユウを抱きしめ キスを


「うっ 親の前で」


「はぁ 稽古始めるぞ」


「そうだ 智王様 私は魔法の稽古をします スノウとフレアに魔法を教えてもらうことにしました」


「そうか そうだっだな いいだろう スノウは最強の氷魔法使い フレアは最強の炎魔法使い 水魔法 火魔法を習うなら俺より適任だな」


「へぇ~ そうなんだ じゃあ俺も」


「貴様は使えないだろ さっさと稽古を始めろ」


「え~ ユウと一緒がいいのに じゃあ ユウ 後でね」


「え~と 今日から実家に戻ることにしたの」


「えっ どうして でも 夜は」


「あのね 今日からはスノウとフレアが交互に相手してくれるのよ」


「えっ ユウは」


ユウは横に首を振った


えっ どうして あれっ 怒っているのかな 何もしてないと思うけど う~ん そうだ こういう時は 奥義を


「ごめんなさい」


俺はユウに向かって土下座をした


「えっ どうしたの いきなり」


「俺はユウが好きです 俺は馬鹿だから ユウが何に怒っているのか分かりません ゴメンなさい ユウのこと愛しています」


「もう 怒ってないよ ほら 頭を上げて」


「本当に なら」


ユウは俺に抱きつき


キスを


「私は君のことが大好きだよ だから毎日沢山キスしてね」


「うん」


「夜はスノウとフレアが頑張るって言ってたよ」


「じゃあ 今から」


「ふっふっ 私はもういいの 君が旅から戻って来たら その時はいっぱい抱きしめてね」


「えっ えっ」


「はぁ ユウ こいつは馬鹿だから はっきり言わないと分からないぞ」


えっ えっ


「私も頑張るから 一緒に頑張ろうね」


「えっ う うん」


よく分からないんだけど


・・・





この日からユウは魔法の稽古を始めた


その代わりに スノウかフレアが一緒に稽古をしてくれることになった


スノウもフレアも次は私と言って


何度も 何度も


毎晩 遅くまで


・・・


稽古を


最強の魔法使いになるための修行は続く

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