第165話 修業編8



「そこをどけ」


「嫌です 俺はこの子の味方ですから」


「貴様は そいつの何を知っている」


「師匠こそ何を知っているんですか 師匠 可愛いは正義ですよ」


「貴様~ 」


師匠が炎の魔法を少女に向かって放つ 巨大な3つの炎が少女に向かっていく


俺は少女の前に移動して 両手を広げた


「どけ 死ぬぞ」


「嫌です」


せまる炎


「どいて 私は大丈夫だから」


「君は悪くない 君の敵は俺の敵 必ず俺が守ってみせる」


炎が俺に


俺に炎が当たる直前に 師匠が炎に包まれた 「ぐわあああっ」っと叫ぶ師匠


俺には炎は届かなかった


目の前に突如氷の壁が現れたのだ


師匠は叫ぶ 「貴様ら~ あれが見えないのか あれが」


師匠の指差すほうには 2人の少年に犯され殴られている聖女といわれている女性が


俺の前に氷の壁を出してくれたスノウが師匠に向かって「可愛いは正義だ 私はこの子の味方だ」っと俺の方を見る


師匠を炎で攻撃したフレアも「そうだ 可愛いは正義 私は英雄君を信じる」


ユウも剣を抜き 師匠の方に剣先を向け「可愛いは正義 英雄君を信じているよ」


俺は師匠に向かって叫ぶ「師匠の正義とは何ですか 可愛い子を殺すことでしょうか」


師匠は怒りに満ちた顔で「貴様は何を言っているんだ 襲われているのは あの子だぞ なぜ ゾンビの味方をする」


「可愛いからですよ 可愛いは正義です」


「貴様~」







とある街の領主から聖女を守ってくれとの依頼が師匠の元に届いた 俺の修行を兼ねて 俺とユウは師匠に同行することに スノウとフレアも面白そうだねっと言って一緒に同行することになった 俺達が着いた時には 既に街はゾンビによって襲われていた 聖女のいた孤児院の経営者はゾンビに殴り殺されていた 街の人から聖女様が向こうに逃げたと ゾンビに追われていると 助けて欲しいと 俺達はすぐに あとを追ったのだが そこには 可愛い女の子のゾンビがいた 名前はリル





「ねぇ あの女がリルに リル達に何をしたの」


俺は可愛いゾンビのリルに聞くと リルは


「私は殺されたの あいつの父親に 毎晩犯されて そして 妊娠したら 今日が最後だと言って 首を絞めながら私を犯し 私を殺したの あの女に何度も助けてと言ったけど あの女は笑いながら あなたが悪いのよ っと何度も言うのよ」


犯され 殴られていた聖女は叫ぶ「嘘よ そんなの お父様がそんなことをするはずがない この子が悪さをしているから 毎日説教をされていただけよ」


スノウがリルに「ねぇ リルの魂の記憶を見せてくれない この魔法は本人の許可がないとダメなの 私を信じて リルの記憶を見たいの 真実を知りたいの」


リルは俺を見つめる


「大丈夫だよ 嫌なら断ってもいい 見られたくない記憶だったら見せる必要はないよ 大丈夫 俺はリルを信じているよ」


リルは微笑み「大丈夫 あなたを愛する人なら私は信じる スノウさん 私の記憶を見てください」


スノウはコクリと頷き リルに魔法を


空にリルの魂の記憶が映る 毎日のように男に犯される映像が 食事も与えられることもなく働かされ 聖女と呼ばれている女性の世話も そして 何度も犯され そして最後には 男が笑いながら首を絞める映像が


聖女は叫ぶ「こんなの嘘よ 絶対に違う」


スノウは師匠に向かって「智王よ 貴様には分かるはずだ この映像が真実だと」


師匠は苦い顔をして「ああ」っと


俺が少年に「君達も 殺されたのか」っと聞くと


聖女を犯している少年は「こいつに殺された 食事も与えられずに働かされ こいつの料理を運んでいる時にふらつき 料理をこいつのドレスにこぼしてしまった その時 こいつが言ったんだ 君はもういらないっと その夜 俺はリルと同じように こいつの親父に犯され そして首を締め殺された」


もう1人の少年も「俺もそうだ 毎晩のように こいつの親父に犯されたんだ 食事も与えられていない俺達の横で こいつは毎日豪華な食事を 国からも 街の人達からも俺達のために食料を寄付されていたのに 全て こいつが こいつの親父が」少年は聖女を殴りながら こいつが こいつがっと


スノウが師匠に「少年達の魂の記憶も見る」っと聞くと 師匠は「いや いい」っと


俺はリルを抱きしめ「もう大丈夫だよ リルは俺が守るから」


リルはうれしそうに俺をぎゅっと抱きしめる


「リルを救いたいんだ 師匠 スノウ フレア ユウ どうしたらいい」


師匠は下を向く ユウも フレアも


悲しそうな目をしたスノウが「リルはゾンビ もう 死んでるの 何者かに死んだ体に魂を縛られているだけなの 助けることは出来ないの ごめんなさい」


リルは微笑み「ありがとう 助けてくれて 嬉しかった」


「俺に出来ることはないの」


リルは笑いながら「キスしてもいい」


「ああ 俺はリルが好きだから 嬉しいよ」


リルは俺のほっぺに そっとキスを


「キスは唇にしないと」


「えへへっ ねぇ 生まれ変わったら 私のお父さんになって」


「えっ」


「ダメなの」


「恋人じゃダメなの 父親だと その 出来ないよ」


「えへへっ あなたの愛が欲しいの 愛されたいの 甘えたい父親に」


ユウが「でも 英雄君が父親なら 側にいないかもよ 会えないかもね でも私の子供になってくれるなら 私は全力で愛するよ」


フレアも「私の子供に生まれてくれるなら 全力で愛する 父親がいなくてもね」


スノウも「愛する者は全力で守る 誰が相手でも負けない 愛する者は全力でね 父親の分もね」


リルが「じゃあ 私がパパを 私が探しに行くよ 私が見つけてみせる 必ず会いに行くよ」


「リル 愛しているよ」 俺が言うと リルは「えへっ 私も 愛しているよ パパ」っと


リルはゾンビの少年2人に「ねぇ 私はもう 満足した 一緒に行かない 次の人生にかけて見たいの 神様にお願いするの 英雄様の子供に生まれ変わらせてくださいって 一緒に 頼んでくれない」


少年はコクリと頷き 聖女の顔面を殴り止めを刺した


リルは 俺に スノウに フレアに ユウに「ありがとう」っと微笑むと 力が抜け 体がふらりっと


俺はリルを抱きしめる 少年2人は その場でバタリと


俺はリルを スノウとフレアが少年を抱えて 景色のいい場所に 3人の遺体を埋めた


ユウが花を3人の墓に添えてくれて「英雄君の子供に生まれ変わりますように」っとお祈りを


師匠が俺に「これが貴様の正義か」っと


俺は師匠に「俺に正義は無いですよ 正義とは人によって違うんですから 正義を振りかざしたりすれば争いが起こるだけですよ」


「なら なぜ あの子の リルの味方を」


「リルが好きだからですよ 可愛いは正義 愛する者のために行動するって決めています 師匠の正義は何ですか 人に言われたことを真に受けて 何を考えずに正義だと言って戦うなら それは兵器と変わらないんですよ 心を持たない兵器と 俺は愛する者を守れるように強くなるつもりです だから 師匠が敵になっても大丈夫なように修行お願いしますね」


「今回は聖女が悪かったようだが 可愛い子が正しいとは限らないと思うが」


「俺は聖女が悪いだなんて一言も言ってませんよ リルの味方をするって言っただけですよ どちらが正しいかなんて誰にも分かりませんからね 俺は愛する者の味方をするだけです」


「んっ 聖女が悪くないと思っているのか」


「だってそうでしょ 父親が不正を働いていたり子供達を犯していたりしても 聖女に罪があるとは言えませんからね 他の子供達が聖女に助けを求めていたみたいですが 聖女は父親を信じていただけでしょ 悪さをした子供達を説教していたと思っていたんでしょ 他の子供達には自分と同じように食事が与えられていたと思っていたんでしょ ふらついて食事をこぼされた時だって ふらついた理由は飢えによるものでなく まじめに働いていないと思ったのでしょ 殺してっと頼んだのでなく 他の人に変えるように父親に頼んだだけだったかもしれません」


「なら」


「俺に答えは分かりません ただ 俺はリルの味方をするって決めただけですよ 愛する者の味方をすると 守ると 信じると 可愛いは正義です」


「この結末に貴様自身はどう思っている」


「リルが幸せなら良かったっと思っていますよ 俺の考えはありません 俺は師匠のようにうぬぼれていませんからね この世界のルールも知りません 人が 神が ゾンビが 魔物が 誰が正しいかなんて分かりません だから 俺は決めています 可愛いは正義だと」


スノウが俺の頭に手を置いて「私は君が可愛いと思っているよ 可愛いは正義 必ず君を守る 信じる 最後まで愛する」


フレアが俺の肩に手を置いて「可愛いは正義 君のことを永遠に愛する 私は君の味方だよ」


ユウが俺の手を握り「君を守るために私は強くなる 愛する者のために生きる 可愛いは正義だから」


師匠は呟く「正義か 俺の正義は」


・・・






結局 誰がリル達をゾンビにしたのか分からなかった


智王は屋敷に戻り悩んでいた 


正義とは何か 誰の味方をするのか 敵とするのか それは自由なのか・・・


助ける 誰を 本来の目的が何なのかを見失わないでくださいねっと英雄は笑顔で言うが 俺の目的は・・・


英雄は言った 可愛いは正義


・・・

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