どうした?目覚まし時計

オッケーいなお

第1話 起きろー

まだ涼しいくらいの朝。

目覚まし時計も聞かず目覚めてしまった。バイトも予定もない暇な日に。


大学生21歳のタクローは一人暮らし。

バイトと大学以外なにもない結構つまんないやつ。

大学から近いこのアパートは古いかわりに家賃は安いし、1DKとまあまあ広い。

リビングには小さいソファもある。


「もう一回寝ようかな?」


ちいさなソファにぼてっと横になってみた。


「起きろ〜っ!!」


タクロー「ぐわ〜っ!」


ソファから飛び起き急いでトイレへ。

鍵もかけてみた。

だがタクローは重大ミスをしていた。

なぜトイレに逃げたのか。

なぜすぐ三歩先の玄関の外に逃げなかったのか。

そう、タクローはおバカなのである。

本人はそんな重大なミスにまだ気がついていない。

いつ開けられるかわからない恐怖、閉所恐怖症の恐怖、そして腹痛。

タクローは緊張するとお腹が痛くなってしまうのだ。


シーン


どれくらいたったのか。

3分なのか、5分なのか。

トイレの外では誰かが動いてる様子はない。

無音状態。

タクローは考えた。

いきなりドアを開けて犯人をビビらせ、その隙に玄関の外に逃げよう作戦。

この緊迫した状態でこんな単純な作戦に決死の覚悟を決めたタクローは


ガチャ


「わ〜っ!!!」


ドサッ、バタ。


刺されたわけでもなく、殴られたわけでもなく、ただ、わっ、と言われただけで倒れたタクロー。作戦失敗。終了。


ブーッ、ブーッ。


「はっ」


タクローは目が覚めた。

ここはベッド。

まさかの夢オチ?

もう昼過ぎ。悪い夢で汗はびっちょり。


起きるか〜


リビングへ。そして寝転がる。リモコンを探す。ぐーたらモード全開。

なかなかリモコンが見当たらない。

っとその時


「はいっ、リモコン。これでしょ今必死に探してるの。」

タクロー「あっ、サンキュー」

タクロー「って、ぐわ〜!!あ〜っ」

女「ちょっと待って、落ち着いて。」

女「今ちゃんと説明するから、ねっ、落ち着いて。」

タクロー「なっ、何してる⁈だいたいどうやって入った。誰なんだいったい。」

女「だから、今説明するから。まず話聞いてよ。ねっ。」

女「私名前はマナミ。歳は20歳。ここにいるのはピンポンってならして返事ないし、鍵あいてたから入っちゃった。」

タクロー「…」

マナミ「入っちゃったけど、あなた寝てるでしょ、驚かすの悪いし、起こすのも悪いし、迷ってたらなんかよくわかんなくなって、んで、クローゼットに入って〜」

タクロー「なぜクローゼットに。」

マナミ「わかんない。なんとなく。そんで黙ってたら寝ちゃって。」

タクロー「じゃあ、あの起きろーってのはなんだ。」

マナミ「えへっ、あれは寝ぼけましたー」

マナミ「そしたらあなた驚いてトイレ入っちゃったし、出てこないし。かと思ったら急にガチャって出てくるじゃない。私びっくりしちゃって〜」

タクロー「ちょっと待て。なぜびっくりしたやつが俺を、しかも大声で、わっ、と驚かすんだ?意味わからん。まっ、たいして驚きもしなかったけど…」

マナミ「気絶してぶっ倒れたくせに。」

タクロー「昼寝だ。そんな事言うならすぐに警察呼ぶぞ。」

マナミ「あっ、ごめん。ごめん。」

マナミ「んで、びっくりして逆に、わっ、と言ってしまって。気絶したあなたをベッドに運んで起きるの待って〜、そんで今。」

マナミ「そんなわけ」

タクロー「なにがそんなわけだ。まっ、入って来てから今までの経過はわかった。君の名前と歳も。んでその20歳のマナミちゃんが俺になんの用だ。」

マナミ「私今日この街に来たんだけど誰も知り合いとかいないじゃない。それで。」

タクロー「俺も知り合いじゃない。」

マナミ「あっ、言ってなかったね。私あなたの親戚なの。少し遠いけど。おばあちゃんからあなたの事聞いてて。会った事ないし、悪いかなって思ったけど、他に誰もいないし。」

タクロー「親戚とか聞いた事ないし。」

マナミ「あなたのお母さんの名前、ミサさんでしょ。お父さんはタカシ。おばあさんはえーっと、」

タクロー「わかった。面倒くせー。信じるよ。だからそんな親戚の俺はなんかすればいいのか?」

マナミ「聞いてくれ??」

タクロー「俺に出来る事なら。」

マナミ「ホント!?」

タクロー「だから、俺に出来る事なら。」

マナミ「お願いっ。しばらくここにいさせて下さい。」

タクロー「は〜っ。ムリムリ。」

マナミ「お願いっ。」

タクロー「うーむ。いやっ、ムリムリ。」

マナミ「も〜、なんでー」

タクロー「いや、だから、つまりさぁ」

タクロー「きみ、女だろ。」

マナミ「うん。」

タクロー「俺は男。」

マナミ「うんうん。」

タクロー「まっ、そんなとこだ。」

マナミ「え〜!?そんな理由?」

タクロー「そんなって。」

マナミ「それが理由なら私は大丈夫よ。」

マナミ「そんな気ないから。少しも。」

タクロー「おいっ、それは俺がブサイク小太りだからか〜?」

マナミ「否定はしないけど、理由は親戚だし、私にはやらなきゃいけない大事な事とかあるし。」

タクロー「よし!わかった。しばらく住まわせてやる。そのやらなきゃいけない事ってやつが終わるまでだからな。」

マナミ「ありがとうー!!」

タクロー「じゃあきみは、」

マナミ「あのさ、親戚だし歳近いからマナミでいいよ。」

タクロー「じゃあマナミ。」

マナミ「はいっ」

タクロー「今そっちの部屋片付けるからマナミそっちな。俺はリビングで。」

マナミ「いいよ。ベッドあるしあなたがそっちで。」

タクロー「あのさ、俺の呼び方も、そーだなぁ」

マナミ「わかった。タクローっ。」

タクロー「まだ俺何も言ってないのに。」

タクロー「まっ、いっか。」

マナミ「タクローソファ小さいから寝る時体はみだすじゃん」

タクロー「おいおい。」

マナミ「私小柄だし〜」

タクロー「ってか、太ってねーし。そんなに」

タクロー「これソファベッドだし、俺はテレビが近い方がいいの。」

マナミ「わかった。そーいえばクローゼットに私荷物置きっぱなしだからちょうどいいや。ありがとう。」

マナミ「タクローっ。」

タクロー「おーっ」

マナミ「しばらくの間お世話になります。よろしくお願いします。」

タクロー「なんだ急に。」

マナミ「一応ね。お世話になるんだし。まっ、よろしくね。」

タクロー「はいっ。こちらこそ。でいーのかなぁ?」

マナミ「いーの。いーの。」


そんな感じで恋愛とはまるで関係ないよくわからない同居生活がはじまったのだ。





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