『カクヨム作者はカク語りき』

ピクルズジンジャー

【キャラを作る際に工夫した点はありますか?】

 小説とは読んでいただいた方がどう感じたがすべてではないのか?

 作者が「実はあれはこれで……」と語るのは蛇足も蛇足な行いなのではないのか? 言わぬが花って言葉もあるしあまり語りたがるのもいかがなものか?


 自作について語るという行為に関して、冷静になれと戒める自分がこのように呼び止めて引き留めようとするわけですが、あとがきだのエッセイだのでわりとなんでも語ってる癖に今更自意識過剰になっても仕方なかろう。語りたいなら開き直って思う存分語った方があとくされなくてもよいではないか?


 ――と、そんなふうに踏ん切りがつきましたのでこちらの自主企画に参加させていただくことにしました。前置きが長くてすみません。そして他人様の企画に対してのっけから失礼をぶちかまして申し訳ありません。

 

 この場を借りて語らせていただきたい作品はこちらになります。



『マリア・ガーネットとマルガリタ・アメジスト、天国を奪い取る。』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054884961908


 とりあえず、「百合」「娼館」「ヤクザ」「魔法少女」という、なぜそれを混ぜようとした? な、四元素でできているレイティング三つ全部盛りの現代ファンタジー小説になります。詳しいことはあらすじをお読みください。苦手要素が無ければそのまま読んでやってくださいますと、私は大いに喜びます。

 

 さて「キャラクターを作る際に工夫したところ」ついて――。

 工夫といいいますか、命題にしていたところは以下のようなものになります。


 ・主人公の頭は正直おかしくてもいいが、そのパートナーである子は常識と良識をわきまえたキャラクターにする。主人公の性格はぶっちゃけ極道でも極悪でもなんでもいいが、彼女の愛するヒロインはいわゆる「いいもん」「光属性」「主人公」的な性格にする。

 ・ネーミングはキリスト教に因んだものにする。

 ・アメリカっぽいところが舞台なので、キャラクターの口調は翻訳ものっぽく嘘くさい感じで(ただし、日本っぽい別のエリアから出張ってきているキャラクターに関してはその限りではない)。


 なぜにこのような法則があるかと説明しようとしますと、本作の成り立ちなども語る必要が出てきてしまいます。以下、とにかく長くなってしまいますが極力簡潔に説明してみます。どうかしばらくお付き合いください。



【本作の成り立ち】

 やたら長い小説ですが、本作は自作小説のスピンオフ的なものになります。その本編にあたるのがこちらです。本編にあたるのに文字数は二万字未満の短いやつになります。


 https://kakuyomu.jp/works/1177354054884092843


 内容をごく簡単に説明しますと、アダルト媒体で活動していた半芸能人の魔法少女がギャラのピンハネに激高し自分の所属していた妖精の国の幹部を殺害。報復される前に妹分の魔法少女と一般人一人を巻き込み異世界へ逃亡をはかろうとするその道程を描いた物語になります。

 この作品に登場する主人公は強欲だし悪辣だし人を人とも思わないし、殺害ふくむ暴力もためらわない。端的に言って性格が非常に悪い奴です。

 

 ネタバレになりますのでここで結末を語るのは遠慮させていただきますが、この作品の結末は諸事情ありまして中途半端にならざるを得ず、「続編に続く」なところで終わっています。


 そのため続編の構成を練っていた折、「この性格の悪い主人公と対立したり、時に共闘する別働チームが欲しい」ということになりました。ヤンキー漫画やスポーツ漫画に登場するライバル校のようなチームと考えていただけますと理解しやすいかもしれません。


 この主人公チームに対するライバル的な別働チームのメンバーが、この場で語ろうとしている作品で主役を務める魔法少女たちであるということになります。

 この作品はスピンオフですよというのはそういう成り立ちがあるためです。


 というわけで、


 ・本編主人公の性格が極悪だしチンピラみたい。

  ↓

 ・じゃあ、ライバルチームのリーダー(本作ではヒロインにあたる)の性格は互いのキャラを引き立てるためにも「いいもん」で「主人公」な性格にしよう。


 とまあ、そのような計算が働いた次第です。


 なお、本作のヒロインは作中の見世物のショーで悪役の女王様を演じている設定になっていますのも、


 ・本編主人公が出演媒体のカメラの前では正義の魔法少女を演じている。

 ・外見上はピンクの正統派の魔法少女である。

  ↓

 ・じゃあライバルチームのリーダーは、人前ではヒールを演じていたことにしよう。

 ・外見も奇麗な子ではあるがどっちかというと悪人風の見た目で、あまり女の子っぽくない外見をしたクールで格好いい系の子にする。


 という発想によるものです。


 つまり本編主人公と対になる仕様にしたくて、主人公のヒロインになるキャラクターおよび彼女の率いるチームの基本理念「いいもん」「光属性」「主人公」ができた次第です。


【助平で根性の悪い主人公の誕生】

 以上の項目で述べたのはヒロインおよびチームの性格ですが、本作で語り手を務める主人公の性格はあんまりよくはありません。ヒロインのことが好きでたまらないので彼女のためには全力が出すが、そのほかのことは結構どうでもいいと公言してはばからないような奴です。見た目は愛らしいようですが、内面は強欲で助平です。そして悪知恵がよく働きます。

 自分とヒロインのためになるならば嫌いな人間とも手を結ぶし卑怯な手段を選ぶことを厭わないし、その際良心が全く傷まないという腐った根性をしています。


 こういう性格の主人公がなぜに登場したかといいますと――、実を言いますとこの主人公とヒロインの性格や関係性は、このチームのことを考えていた時に突然ハマったある二次元作品に登場するキャラクター達に強い影響を受けているからです……(恥ずかしい)。

 ある不幸な出来事のせいで世界の破滅を願うようになったカリスマ性のあるラスボス的なキャラクターA。Aの親友で、Aとともに同じ夢をみたり苦労を重ねるような濃密な時間をすごしてきたために、彼のためならなんでもするという勢いでAを心酔する右腕的なキャラクターBという、二人組の関係がとにかく好きすぎて好きすぎて、ちょっとどうしよう……と頭の中を沸かせていたら、本作の簡単なストーリー概要ができてしまったという流れになります。恐ろしいのは萌えの力ですね。あー怖い。

 主人公の性格はこのキャラクターBの特徴である「パートナーを心酔」「パートナーが絶対」「パートナーが一番で自分は二番」「チーム内では参謀的な役割を務める」な性質を参考にしてつくっていたら、なぜかこのようになっておりました。


 主人公がこういうやつである以上、なおさらヒロインは「いいもん」「光属性」「主人公」でなければならなくなった次第です……。 


 ※以下数行は後日付け足したものになります。※


 漫画の創作に関する場などでもよく語られるものですが、「作中では何が普通で何が異常かわからなくなるので、突飛なキャラクターがう複数登場する作品の場合、必ず一人は常識人・ツッコミ的なキャラクターを用意する。」というテクニックがあります。

 私はこれを支持する者で、他の作品でも基本的な倫理観や現代社会ではごく一般的であろう価値観を持つキャラクターは最低でも一人は登場させるようにしています。

 本作は最初から、インモラルな要素の強い話にしたいという狙いがあり、そして倫理観のふっとんだキャラクターが登場する予感があったために、ごく一般的な倫理観を持った「いいもん」「光属性」「主人公」のキャラクターが私の中では不可欠でした。

 そのせいでストーリーの内外でもヒロインに背負わされた役割やら属性がてんこもりになってしまった次第です……。



 (どうでもよい補足情報になりますが、本作は百合小説ですがメインキャラを生み出すきっかけになった既存作品に登場するキャラクターは二人とも男子になります……)


【キリスト教モチーフなのは?】

 本編の悪逆非道なチンピラ魔法少女と対立する性質をもつのだから、魔法に対抗するモチーフを持つチームにしよう。

 魔法といえば魔女、魔女といえば魔女狩り、魔女狩りといえばキリスト教、よしじゃあキリスト教イメージで作ろう……という、連想ゲーム方式にのっとってこうなりました。

 このチーム及びヒロインの「いいもん」「光属性」「主人公」という属性とも合致するし、いい判断だと思っております。

 

 ※ヒロインは自分なりに神様というものを強く信じており、であるからこそ過酷な状況を耐え抜けたという信仰心の篤いキャラクターであるという設定ですが、その原点になったのはセルマ・ラーレルゲーヴ『ニルスの不思議な旅』に出てきたとある一編であったことなどを補足として語っておきます(移民としてアメリカに旅立った息子の帰りを一人で待ち続ける信仰心の篤い老女がでてくる話がありまして、読んだ時に強い感銘を受けたのです)。



 なお、そこから派生して本作に「異世界からやってきた悪い妖精や魔法少女を狩る」というエクソシストじみた団体が登場することになりました。

 

 主人公やヒロイン、そのほか生活をともにする仲間たちの名前はカトリックの聖女が由来ですし、ヒロインの家族の名前も聖人に由来します。


【ネーミング】

 主人公の名前はマルガリタ・アメジスト、ヒロインの名前はマリア・ガーネット、そのほか同じ境遇の仲間たちの名前は「カトリックの聖女+誕生石」です。


 誕生石を名前にしたのは、作中の雰囲気をリリカルなものにしたかったという意図もありますが、単に一から十二のナンバリングの意味も兼ねています。名前を失くした女の子が、一番二番と呼ばれているようなものでもあるのです。

 先ほどにあげた主人公カップルの下になったキャラクターが、それぞれ一と二に関係するキャラクターでもあったため、それを活かしたネーミングにしようとした結果が誕生石を名前にするという発想につながっています。

 先に決まっていたヒロインの瞳の色と誕生石の色が同じだったことには助かりましたが、青い目をしていることは決定事項だったヒロインにアメジスト要素がないことは紛らわしいし不自由だったので「胸に埋められている魔力の装置が反応すると紫色に輝く」ということでつじつまを合わせております。


 ヒロインの家族やその関係者、ピーター、マイク、ジョージナ、ジェイクはわかりやすくキリスト教がらみの名前ですね。

 出自が異世界であるヒロインの母親の名前は、そこから離れてベルという名前になっています(ピーターとパートナーの妖精だからベルという単純な理由)。


 少女たちの世話をする二人のシスターの名前もわかりやすく天使が由来になっています。




 ※ちょっとネタバレになりますが……※


 ラスボスに相当する人物の名前は、マイク(ミカエル)と対になる人なので堕天使(ルシファー)っぽい響きのある名前をしています。



【翻訳調の口調】

 主な舞台がアメリカっぽいところだったので、登場人物たちは極力ちょっとクセの強い翻訳風の口調であることは意識していました。


 なぜアメリカっぽいところにしたのかは、まあ、雰囲気といいますか、教会を模した娼館が舞台なんだから日本じゃない方がしっくりくるよなといいますか、早い話が私の好みと雰囲気以外の何物でもありません……。


 もともとアメリカの西側や南側を舞台にしたマジックリアリズム系の小説が好きだったので、それに強い影響を受けただけとも申します。じぶんなりにそういう世界をやってみたかったのです。



 ――第一章ですでに引くほど語ってしまいましたが、以降もついてきてくださると幸いです。

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