お題「止めないで」

 もう私を止めないで。何回そう言って家を飛び出したんだろう。その度に私はここで煙草をくゆらせて自分の粗忽さにあきれるのだ。

 もうじき彼が来る頃だ。私は少しだけ期待する。そんな期待するくらいなら家出なんかしなきゃいいのに。私は彼が来る方向を見た。

 どん、と何かがぶつかる鈍い音がした。――彼は、私の前で交通事故で死んでいった。

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