元国王さまと元宰相さまの諸国を漫遊しにいくはなし
流花@ルカ
前日譚
第1話 前の日のはなし
「あ? 今なんつった?」
国王の執務室とは思えないほど簡素な執務室に国王の声が響く。
「ですからさきほど学園が主催する卒業記念パーティーで婚約を破棄されたそうですよ。」
と、この国の宰相は答える。
「誰が?」
「
「誰と?」
「侯爵令嬢と」
その言葉に呆れた声で王は問いかける。
「はぁ? どういうこった?ちゃんと説明しろよ」
こちらも呆れたような声で答える。
「はぁ…アンタ仮にも国王なんだからもう少し言葉づかいどうにかしたらどうなんです…?」
「そういうお前も宰相のくせに国王にタメ口じゃねぇか」
「誰もいませんから」
「……あーそうかよ……で?」
「それがですね、なんか
ペラペラと持参した報告書をながめながら宰相は答える。
「ふーん。 それで?」
「で、その恋人いじめたとかでパーティー会場に、その恋人と乗り込んできて【犯人はおまえだー】って
調子に乗って侯爵令嬢を糾弾して【お前は私にふさわしくないから婚約破棄する!】って生徒及び父兄の方々の前でぶちまけたらしいですよ」
「はー、それはそれは面白いことしてんなアイツ」
ニヤつきながら言う王
「よその国のことなら面白いかもしれませんねー」
と棒読み口調になりながら答える宰相
「ところでよ宰相」
「なんでしょうか陛下」
「
「さぁ…まったく存じ上げませんが」
と肩をすくめて見せる
「じゃあなんで婚約者がいると思ってんだ?」
「さぁ?」
「分かんねぇよなぁ」
「デスヨネー⦅勘違いした王妃の入れ知恵じゃないかなー⦆」
「まぁ、それはそれとしてよ」
「はい。なんでしょう?」
「
「はい、この度の不始末の責任はすべて王家にある故、国王は王位を辞するから
「ついでに叔父上には、従わない奴は全員国外追放ってことにして
「畏まりました」
「はぁ それにしても長かったよなぁ」
「そうですねぇ…アンタ今年で在位何年になりましたっけ?」
「確か即位したの17だったから20年くらいじゃねぇか?」
「もうそんなになりますか…戴冠式の前から王位なんてイヤだーってめちゃくちゃゴネてたのに何だかんだで月日が経つのははやいものですねぇ」
しみじみと思い出す宰相。
「まぁなぁ……。 第八王子に王位争いなんて関係ねーだろって街で遊びまくってたら、継承争いで継承権もってるやつみんな死んじまうとかおもわなかったもんな」
ちょっと呆れた口調になる王。
「そうですね、しかし先代王と先代王弟である侯爵様に頼まれてた
「ばーか!何言ってやがる これからだよ こ・れ・か・ら」
「なにかやりたいことでもあるんですか?」
「おう、冒険者やろうぜ!」
ウキウキと王が言い出した。
「は? アンタ年を考えなさいよ! 剣振り回して腰痛めても知りませんよ!」
目を丸くして叫ぶ宰相。
「バーカ俺がそんなヘタうつわけねーだろうが それにお前魔法得意だろ」
「は? 私にも冒険者をやれと?」
「どうせお互い独り身なんだから夢と冒険の旅にでようぜ!」
やたら目がキラキラしてる王。
「私はともかくアンタには家族いるでしょ!」
「なにいってんだ、1回遠くから隠れて顔見ただけの嫁と、なんか分かんねーけどいつのまにかできてた
「それはアンタが嫁のこと影武者に任せっきりだったからでしょうが」
「イヤ影武者もたいして会いに行ったことないらしくて身に覚えがねぇっていうんだよな」
「は?
「どうもなぁ…調べさせたところ神殿に『子授け祈願』にいったら見事に授かったらしいぜ」
「…それどう考えても神殿関係者の子供じゃないですか…」
「まぁ様子みるために親子で適当に泳がせて放置しておいたらこんなバカな騒ぎ起こしてくれたからある意味助かったけどよ」
「ちょっとだけ可哀想ですね
同情する気持ちがすこしだけ沸く。
「まぁなんかその恋人平民なんだろ? 2人仲良く平民ライフ楽しめばいいんじゃね?」
「
「ならばこそ、顔の作りだけはいいんだからうまく恋人働かせてヒモにでもなればいいじゃねぇか」
「…アンタほんと最低野郎ですよね、だから温室育ちの王子様にヒモっていう概念あるわけないでしょ!」
ちょっと軽蔑した目で王を見る。
「…そんなもんか?」
王はキョトンとした顔で宰相を見る。
「あのねぇ…子供のころからやたら市井に下りて、一般庶民に溶け込みまくったアンタと同じ事できるわけがないしょうが」
王はちょっと考えて
「なら逆にその平民の恋人とあの
「本気で鬼畜野郎だなアンタ」
宰相の視線が絶対零度になる、だが気にせずに王は話を続ける。
「今まで王族でもないのに国民の税金ムダ使いしてきたんだから、体で払うのもいいんじゃねぇのか? それだけの物を返せる働きも努力もしてこなかったんだし、まぁなんにしてもあの
「確かにお互い真剣に愛し合ってるならそれでもいいでしょうよ。だけどこれ間違いなくあの平民の女、
宰相の言葉を、フンと馬鹿にしたように笑うのと共に王は席を立つ。
「そこまで責任もてるかよ…とりあえず明日にはこの城でるから準備しとけよ」
「はぁ……まぁ確かにアンタみたいなやつについていける人間なんて私くらいでしょうね……しかたない。ついて行ってあげますよ」
渋い顔で了承する宰相へ
「そりゃあ頼もしい! 頼りにしてますよ宰相様!」
とヒラヒラと手を振り王は部屋を出て行った。
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