第41話 悪魔の目撃情報
スコラに到着した悠真達は今、情報収集するために冒険者ギルドに来ている。
まず気付いたことが、魔物討伐の依頼がやたらと多い。特定の魔物だけでなく、全体的に増えており、活性化しているようだ。
場所もこの街を中心に広がっているように思える。
しかしながら初めてみる依頼もあった。
『悪魔の情報を求む どんな小さな情報でも良いので報告を乞う』
依頼主は冒険者ギルドだ。この世界に来て初めてみた、『悪魔』という文字。この世界での悪魔の定義がわからないが、少なくとも良い存在ではなさそうだ。
「セラとリリーに聞きたいんだが、悪魔って何だ?」
「人でなく、魔物でもない、異形の存在だと聞いたことが御座います」
「悪さをする変な生き物ニャ」
「悪さをする存在か……」
今回悠真が受けた依頼とは関係はないかもしれないが、情報は多く集め、その中から有益な情報を選定すれば良い。
そう考えた悠真はセラとリリーと共に、冒険者ギルドの受付に並ぶことにした。
「冒険者ギルドが主体として、悪魔の情報を集めているみたいですが、その情報を教えて頂くことはできますか?」
「申し訳御座いません。悪魔についての情報は、現時点では一切開示できないことになっております」
ギルドがお金を出して集めた情報を、タダで教えてくれと言っているのと変わらない。断られて当然だ。
しかしながら、悠真は調査目的でスコルまで来ている。ルドベキア王からの指名依頼を失敗するわけにはいかず、少しでも情報が欲しい。その情報が使えるかどうかの判断は二の次だ。
「実はルドベキア王からの指名依頼で、魔物の活性化に関する調査を請け負っています。悪魔の情報は関係ないかもしれませんが、もし関係があるならばルドベキア王からの指名依頼を遂行するためにも、その情報が必要になるので、教えて頂けると助かるのですが……」
そう言ってギルドカードを受付嬢に渡すと、まずはAランクに驚き、受諾中の依頼内容を確認すると、国からの指名依頼を確かに受けており、再び驚いていた。
「か、確認してまいりますので、しばらくお待ち下さい」
カウンターの奥へと消えて行った受付嬢。ギルマスに相談しに行ったのだろう。
「教えてくれるといいんだけどな」
「冒険者ギルドは独立した組織とはいえ、国に対立するようなことは基本的にはしません。むしろ好んで国に協力をしておりますので、悪魔の情報は開示して貰えると思われます」
セラと話をしていると、受付嬢が小走りで戻ってきた。
「ギルマスがお会いになりたいそうです。ご案内いたしますので、こちらへどうぞ」
「国からの依頼を遂行するのに、悪魔について情報が欲しいんだったな?」
「そうですね。悪魔が魔物の活性化に関係があるのであれば、自分達も悪魔を調べることになりますので、既に得ている情報があれば頂きたいと考えています」
悠真は、スコルの冒険者ギルドのギルマスと面談している。
「なるほどな……。さっそくだが、先日『悪魔が魔物に何等かの指示を出していた』という情報が入ってきた。我々ギルドとしては、悪魔が何かしようと企んでいて、その準備のためにこの活性化を引き起こしているんじゃないかと、考えている」
「なるほど。そうなるとどんな指示を出していたのかが気になりますね」
「そうだな。だが、残念ながらそこまでは分からなかったみたいだ。あと、魔物は何か破壊するでもなく、ただ走り回っているのが多いらしく、その範囲をどんどん拡大していっているのが現状だな」
「ただ走り回っている……注意を引き付けて囮にしたい、別の何かを隠したいのでしょうか……」
「その線も考えて、広範囲で調査させたんだが、特にそれらしい物は見つかってないな」
悪魔が魔物を使って何かしようとしている。それはわかったが、冒険者ギルドとしても、その目的が全くわからないらしい。
「自分も調査してみようと思います。悪魔の目撃情報が一番多いのはどの辺りですか?」
「そうだな、街の東側、この渓谷付近で良く見かけているみたいだな」
スコルの街付近の地図を広げたギルマスは、その渓谷を指差して話を続ける。
「ただ、この渓谷は何もないはずなんだが、魔物の数も最近増えているみたいだ。危険度は以前と比べて上がっているぞ」
「わかりました。とりあえずその渓谷に行って調査してみます。何かわかったらまた報告しにきます」
「おう、Aランクなら大丈夫かもしれんが、あまり突っ込みすぎるなよ」
ギルマスとの面談の後、悠真達は必要な物資を購入し、食事を取ろうと酒場に入ってみると、ルベル達がいたので久しぶりに一緒に食事を取ることにした。
「ユーマさんお久しぶりです。フォボスダンジョン攻略のお祝いで、ご一緒に食事させてもらって以来ですね」
「お久しぶりです。あれからテュクスダンジョンはどうですか?」
「そこそこですね。安定した収入にはなるんですが、フォボスダンジョンのときの様に、他のダンジョンとか街に浮気したくなっちゃいます」
苦笑いをしながら答えるルベルだが、今回この街に来た理由は違うみたいだ。
「ただ、今回この街にきたのは、スコルで魔物が活性化して増えていると聞いたので、少しでも討伐できればと、こっちに移動してきたんですよ」
「確かに活性化して、数も増えているみたいですね。なんでも悪魔を見かけた情報もあるとか。ルベルさんは見たことありますか?」
ビールを飲みながら、悪魔をネタに話を振ってみる悠真。事前に少しでも情報が欲しい、そんな気持ちが表れている。
「いえ、見たことはないですが、せっかくなので1度はどんな姿なのか見てみたいですね。ユーマさんは見たことあるんですか?」
「俺もないですね。ただ、冒険者ギルドからの依頼で、悪魔の情報を求むってのがあったので、悪魔のことについて調査してみようと思ってます」
「頑張って下さいね。悪魔の情報があったらユーマさんにもお伝えしますね」
「有難う御座います。ただ、悪魔の強さがわからないのが不安ですね」
「そうですね。目撃されている悪魔が、敵対する意思を持っているのかも不明ですし、太刀打ちできない相手かもしれない。でもユーマさんはAランクみたいですし、後れを取るようなことはなさそうですね」
「油断はできませんけどね」
そんな会話をしている悠真とルベルの横では、セラとリリー、ナリア、シアが楽しそうに会話をしている。
「師匠! あれから師匠のおかげでビールを飲めるようになって、世界が変わりました! それまでは苦いだけで、美味しいとは思わなかったビールを、今では飲まない日はないくらい、ほぼ毎日ビール飲んでます」
「良かったニャ。ビールは正義ニャ」
「あれからビールしか飲まないのよ。リリーちゃんなんとかならない?」
ナリアがシアの変わり様に困っているようだ。
「シア、ビールは飲みすぎると痛風になったり、体調を崩したりするニャ。それに人に迷惑をかける飲み方は感心できないニャ。適度に楽しく飲むのが一番ニャ」
「すみません師匠。今後は気を付けるようにします」
普通のビールも、フレーバービールも美味しい。だが、飲み方、飲む量などは注意しながら飲まなければいけない。
「セラも1日に2杯までって決められてるニャ」
「リリー! それは言う必要ないでしょ!」
「でも本当ニャ。飲みすぎてご主人様に迷惑をかけたニャ」
「もう迷惑はかけてません!」
「とりあえず飲むニャ。シアも飲むニャ」
「はい! 師匠、このフレーバービールはマンゴーのようなフルーティーな味わいで、なかなか美味しかったですよ」
「次はそれ飲むニャ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます