第10話 セラと買い出し
ダンジョンに関する情報をランシアから聞いた後、お勧めの宿を聞いたところ、精霊の宿り木という宿を紹介してもらった。テミストの宿と同じく、1階が食堂になっており、2階から上が客室となっているようだ。
「すみませーん」
悠真がカウンターの奥へ向かって声を掛けると、がっしりして体格の良い男性が出てきた。
「2人泊まりたいんですけど、ツイン空いてますか?」
「ツインかい?すまんが2階の部屋は人気でもう空いてないんだが、3階のツインでもいいかい?」
2階の部屋が人気らしく埋まっているらしい。どうやら楽しく酒を飲んでから3階に階段で上がるのを嫌がる人が多いのだとか。
「3階で大丈夫です」
「そうかい、すまんな。2人だと銀貨26枚だよ」
テミストとは違い、割り引きが適用されていないのと、王都ゆえに高いのだろう。
「まいど。連泊するなら午前中に言ってくれ。2泊目からは2人で銀貨22枚だ」
悠真は支払を済ませ部屋を確保すると、セラと共に明日からのダンジョン挑戦に必要な物資の買い出しに向かう。
「明日からダンジョンに挑戦するけど、準備物としてどんな物が必要かな?」
「まずは水と手軽に食べられる食料です。空腹では魔物討伐すら危うくなります。他にはポーションなどの回復薬と毒消し、予備の武器などがあれば不測の事態にも対応ができるかと存じます」
「なるほどね。それじゃぁまずは屋台で色々軽食を買おうか」
「ご主人様、恐れながら申し上げますが、屋台で購入されても冷えてしまったり、食べる頃にはダメになっていたりするかと存じます。一般的には日持ちのする乾物などを用意しております」
「あぁ、詳しくは秘密だけど、このマジックバッグなら大丈夫だから。せっかくだし色々屋台で食べてみて、美味しい物を買っていこう」
「良くわかりませんが承知しました。あのホーンブルの串焼きは以前食べたことがあり、凄く美味しかったです」
セラの目が先ほどからホーンブルの串焼きに釘付けだ。いつものセラとは雰囲気が違い、食べたいという自己主張が強い。
「串焼きはパスで」
そう悠真が言うと同時に、セラの表情が愕然としたものへと変わり、悠真は軽く微笑んだ。
「冗談だよ。今食べる分と、買い置きの分と買おうか。すいません、ホーンブルの串焼きを6本下さい」
「あいよ。1本が銅貨50枚だから、銀貨3枚だな。まいどあり。まずはこの2本と、あと4本も焼き立て上げるからちょっと待っとくれ」
悠真は銀貨3枚を渡し、串焼きを2本受け取りセラと一緒に食べた。
「うまっ」
「美味しいです」
「嬉しいねぇ。可愛い姉ちゃん連れて、兄ちゃんこれからデートかい?」
「まぁそんなところです」
悠真は否定しなかったが、セラは凄い勢いで首を横に振っている。
「そんな勢いで否定するんだ。残念だな……」
「あっ、いえ、そういう訳では……」
「はいよ、残りの4本に1本おまけだよ。その1本は2人で分け合って食べてくれ」
「有難う御座います」
他にも色々な屋台が出ていたので、摘み食いをしながら美味しく買い出しを進め、お腹が膨れたあたりでタイミング良くポーションを売っている薬屋が見えてきた。
「ご主人様、あそこでポーションなどを買いましょう」
そう言ってセラが率先して店に入って行く。数件摘み食いをしたあたりからセラが楽しそうに先導している。
カランカラン。喫茶店のドア付いているベルと同じような物が鳴った。
「いらっしゃい」
そう言ってカウンターの奥から出てきたのは、黒いローブを被ったいかにも魔女といった容姿の老婆だった。
「何かお探しかね?」
「明日からダンジョンに挑戦しようと思うんで、ポーションなどを探してるんですが、お勧めとかありますか?」
「そうだねぇ、冒険者の人はそこの棚に置いてあるポーションを適当に買って行くね。赤いのはキズに効くし、痛みも多少は引くよ。青いのは魔力が少し回復するし、黄色いのは解毒剤だね。色が濃い方が高いよ。効果も高いが味は保障しないね。正直不味い」
屋台で散々美味しい物を摘み食いした後に不味いと言われ、悠真のテンションが少し落ちる。それにセラが気が付いたのか真剣な顔でフォローに入る。
「大丈夫ですご主人様、色が薄ければ効果は弱くなりますが、飲めないことはないです。それに私がご主人様を守ります!」
「ありがとう。俺も気を付けるから大丈夫だよ」
笑顔で答え、購入するポーションをカウンターへ持って行く。
「えーっと、今数えるからちょっと待っとくれよ……。全部で銀貨10枚と銅貨50枚だね」
悠真は購入したポーションを割れないようにそうっとマジックバッグに入れた。
カランカラン。
「まいどありー。またよろしくー」
薬屋を出た悠真達は宿へと歩を進めた。
「それじゃぁそろそろ宿に戻ろうか」
悠真がそうセラに伝えると、首を傾げながら疑問を呈する。
「ご主人様、まだ予備の武器は購入しておりませんが大丈夫ですか?」
「ああ、武器はこの中にまだあるから購入しなくても大丈夫だと思う。とりあえず部屋に戻って、明日からのためにゆっくりしたいな」
そう言って悠真はマジックバッグをポンポンと叩いた。
「かしこまりました。それでは部屋に戻りましょう」
宿に到着したときに食事をどうするか尋ねられたが、屋台で散々摘み食いしてお腹が空いていなかったので、今日の夕食は遠慮したが、少しだけ損した気分になった。
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