第2話:メインプレイ:ミドル9

GM:それでは、クラウ側の描写に移りましょうか。


クラウ:シーンイン! (ころころ)5点上昇、78%!

 心境的には、断頭台に立つ死刑囚の気分ですよ。


GM:クラウは涼真を手伝い、アイスエイジ戦の写真を選定している最中です。しかし、少し揉めていますね。


クラウ:ふむ?


GM:というのも、だ。クラウとロボ子は当然、アイスエイジとの戦闘中にも行動を共にしていた。

 しかし涼真が使おうとする写真には、ロボ子が写ったものが一枚も含まれていない。

 ロボ子の情報を意図的に排除しようとする姿勢。それがクラウには、どうしようもなく納得できないのだ。


涼真(GM):「クラウさん、これは貴女個人への取材、そういう企画なんです。どうか理解してもらえませんか」

クラウ:「何故だ! 何故、彼女を排除しようとする。共に事を収めたヒーローであるぞ。共に載らぬ方がおかしい!」

涼真(GM):「……休憩を挟みましょう。僕も熱くなりすぎました。頭を冷やしてきます」

 そう告げて、席を離れましょう。

クラウ:「……ふぅ。何故だ、何故……!」


GM:と、そんなタイミングでクラウの端末に着信が。発信者の欄には、ロボ子の名前がありますね。

 というわけでロボ子、クラウへの事情説明をお任せしてもいいでしょうか。登場侵食は振らなくて構いませんので。


ロボ子:ん、おっけーだよ。シーンイン。


クラウ:「(疲れた声音で)ロボ子か、どうした? 食事であればもう少しかかり――」

ロボ子:「クラウ、「うむ」か「いや」で答えて。冬堂はそこにいる?」

クラウ:「……なに? “いや”」

ロボ子:「一回しか伝えないから、覚えて。黒幕は冬堂だ。アイスエイジ……妹の涼花を利用していたんだ」

クラウ:「……あいわかった。他にはあるか?」

ロボ子:「……ねぇクラウ……僕、どうしちゃったんだろう。

 アイツの……冬堂の潰れた姿を想像しちゃって……人類を守るロボットが、こんな……」


 わずかに震える、ロボ子の語尾。それにクラウは、慈しむような微笑で答える。


クラウ:「ロボ子、その感情は大事にせよ。それは時に抑制しなければならぬものであり、時に尊重しなければならぬものだ。

 人類を守るという大義名分は、余にだってある。しかし我らは心持つ存在だ。万能には程遠いところにいる。たとえ超人だとしても、だ」

ロボ子:「じゃあどうして、どうして僕に感情なんてものを!」

クラウ:「ロボ子、お主は完璧を求めて生み出されたのではない。余はそう思う。

 さて、長話も危ない。余からも伝えなければ。

 “インテリジェンス”に、気をつけよ」

ロボ子:「え……」


GM:では、その瞬間。


涼真(GM):「 戻 り ま し た 、 ク ラ ウ さ ん 」


ロボ子:うわぁぁぁあああああ。


 背後から、冷淡な――今となっては人の温もりを感じられない声が響く。

 振り返ったクラウの瞳は、激情の炎に燃えていた。


涼真(GM):「……どうしました? そんな怖い顔をして」

クラウ:「待っていたぞ。史上最低の兄――兄と呼ぶのもおこがましい。お主は、いや貴様はヴィランで充分」

涼真(GM):「あぁ……ばれちゃいましたか。不出来な妹を持つと、兄も苦労しますね。仕方ないなぁ」

 冷たく言い放ち、無表情でポケットから例のブツを取り出す。


『 ア イ ス エ イ ジ ! 』


 怒るクラウの眼前で、涼真は氷の怪人へと変貌する。


クラウ:「……やはり、貴様も持っているか」

アイスエイジ(GM):「ふふふ……貴女、この間合いじゃ攻撃できませんよね。知っていますよ、僕は貴女のバディなんですから」

クラウ:「やかましい。余は貴様をバディと呼んだことなぞ一度もないわ!」

アイスエイジ(GM):「確かに、僕は貴女を騙していました。ですが貴女を気に入ったという気持ちは本当なんですよ。

 ねえクラウさん。僕と共に来ませんか。

 Rメモリ。この力があれば、どんな欲望を叶えることも不可能じゃない。そう思わせるだけの可能性が、これにはある!」

クラウ:「では訊こう。貴様は、その力で何を望む?」

アイスエイジ(GM):「もちろん、面白おかしい人生というやつですよ。誰にも縛られない、邪魔もされない!

 その道を、僕は貴女と歩んでいきたい」



「さあ僕の手を取って。一緒に覇道を往きましょう!」

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