第87話 天体観測

母親「着いた!


コンドミニアムじゃないのが残念」


Rui「前回それで大変だったじゃん


食事作んなきゃいけないし


お風呂はトイレとくっついてるし


空調は壊れてるはで」


「確かそうだったね、忘れちゃった」


「この旅館部屋の風呂も温泉でるし


食事部屋出しだから最高だよ」


「確かに


夜ご飯のメニュー見せて」


「あぁ、これだよ」


「最後の雑炊とゼリーは食べれそうだけど


あとは無理かなぁ」


「そう思って


ヨーグルトといちご持ってきた」


「Rui、気が利くわ〜、さすが」





「夕食まで横になったら?」


「えー、電車の中でもずっと寝てたし


旅行に来た感じがしない」


「夜、天体観測するんだろ?」


「そうだった、そうだった


肝心なこと忘れてた

 

最近物忘れがひどいのよ〜


薬も飲んだし、横になるね


夕食の時間になったら必ず起こしてね」


「はいはい」





さらに小さくなってしまった母親の背中


改めて母親が病気だということを思い知る


旅行から帰ったら


4回目の抗がん剤治療がはじまる


同じことを繰り返して意味があるんだろうか


最近スキルス胃がんになって


奇跡的に生還した人の体験談を


読み漁るのが俺の毎日の日課





情報豊かな世界


情報が錯綜するネット社会


どれが正しくてどれが誤りなのか


どれが真実でどれが偽物なのか


どれが本当でどれが嘘なのか


自分で見極めるしかない


その中で食事療法で末期から生還した人が

 

いることを知った

 

新しい治療をしないのであれば


食事療法にかけるしかない

 




Dark World


Ruiには父親がいたのか


当たり前か


父親と母親がいてはじめて子供が生まれる


地球人は母親が妊娠して


10ヶ月もの間母体で過ごし


ようやくこの世に誕生する


なんとも面倒なことをするもんだ


なぜ離婚をしたんだ





ピピピピピ


どうやら父親に別の女性ができたと


いうことだろう


別の女性


好意=その人に対していいなぁと思う気持ち


この好意という気持ちがあってはじめて


人間は付き合ったり、結婚をする....のか


で、Ruiの父親は他に好意を抱く女性が


できてしまったと


同時進行はだめなのか


この感情がいまいち分からない


地球人の感情は理解しがたい





Rui「母さん、母さん」


母親「うーん」


「食事来たよ」


「うーん」


「俺先に食べるよ」


「うーん、それはだめ!」


「びっくりした


久しぶりに母さんのでかい声聞いた」


「病人だからって馬鹿にしないでよね」


「いやいや、してないよ


鍋美味しそうだよ、少し食べる?」


「ほんとだ、もらう」


「熱いから気をつけてね」





「ふふ


なんかRuiが親みたいね」


「そうか?」


「そうよ


うん、美味しい、けどいちごがいい」


「そうくると思って


いちごを大量に持ってきてるから


好きなだけ食べて」


「そんなに持ってきたの?」


「持ってきたというか事情を話して


旅館にいちごが届くようにして


さっき届いたばっか」


「えー、嬉しい」


「母さん、冷蔵庫開けて」


「なになに」


「いいや、俺が開ける」





ガタッ


「すごーい、いちごだらけ」


「なっ、これで大丈夫だろ」


「Rui、ありがとう」


「泣くなよ」


「これは泣くでしょ」





Dark World


それからしばらくして


Ruiの母親は父親の


なるほど


この世界でいう不倫に気がついて


家を飛び出したと


ここからシングルマザー......母子家庭


はじまるのか





裏切るなんてひどい男だ


Ruiと母親がかわいそうじゃないか


かわいそう?


この感情もはじめてだ


最近何かがおかしい


このことは自分だけの秘密に


し....て.....おこう





Rui「食った、食った」


母親「Rui、相当食べたでしょ」


「二人分な


天体観測は23時半に起きて出発だから


それまで寝るか」


「お母さんまた寝るのね」


「いや、今度は俺も寝る」


「なるほど、仮眠ね」


「Ruiと一緒に寝るなんて久しぶりね


なんかワクワクするわね」


「いや別にしない」





「あらそう


赤ちゃんの頃からRuiは


一人で寝るのが好きな子だった


赤ちゃんよ、普通赤ちゃんは


お母さんと一緒に寝て安心するものでしょ


ショックだったわ〜」


「覚えてない」


「その代わり夜泣きは一切なかったけどね


そう考えたら親孝行な子よね」


「俺は全く覚えてない


それより俺が幼稚園の時に」


スー


スー


もう寝たのか





Dark World


母子家庭、シングルマザー


大変そうだ


仕事して家のことして子供の世話をして


ある時は仕事でミスをして怒られ


ある時は子供のことで頭を下げ


こんな生活


子供さえいなければ


父親のせいでとか思わなのか?


恨まないのか?


逃げ出したくならないのか?





いや、Ruiの母親はそんなことはない


大変だけど、しあわせそうだ


なぜだ?


それどころかRuiを宝物と言っている





Rui「母さん寒くない?」


母親「少し」


「これ、ホットドリンクと毛布」


「さすがだわ


Rui、さっそく見てみよ


肉眼でもこんなに綺麗に見えるんだから


望遠鏡で見たらえらいことになってるはず」


「えらいこと笑


よし、セットした、母さん見て」


「いいの〜?ではでは


うわー、綺麗、すごい、すごい


ほんとに綺麗


別世界、ちょっとRui、見て見て」


「興奮しすぎだよ


うわ、でも確かにすごいな


前回少し曇ってたけど今日は天気いいから


より綺麗に見える」


「ね、来て良かったでしょ」


「あぁ」


「Rui、連れてきてくれてありがとう」


「俺は別に」


「Ruiこれだけは忘れないでね


Ruiはお母さんの宝物よ」






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