太陽と月と星屑
サラ・ローズマリー
貴方は月で私は星屑
貴方は月で私は星屑。
勿論そんなことは分かっているんです。
私は貴方を引き立てるために存在する、星にすらなれない星屑です。ちらちら瞬く為だけに生まれた存在です。
それに、貴方には太陽という素敵な婚約者がいらっしゃいます。
こんな懸想をしてはいけないって言われなくても知っています。身分違いで恥知らずな恋になります。
でも私は、星屑の私は月の様な貴方に恋をしそうなのです。
そもそもの
一段と太陽の照り付けたあの日。そう、貴方の婚約者が荒れてらした日のことです。私は太陽に照らされて苦しんでおりました。強すぎるお力に、私は溶かされ始めていたのです。
太陽は燦燦と輝いているものですから、近くにいらっしゃると私達星屑は目に見えなくなってしまいます。星屑なんてほぼ不要、ですから。あなたの目にも映らなくなるはずでした。それなのにあの日、貴方は私に声をかけてくださいました。申し訳なさそうに
「僕の婚約者がごめんね」
なんて。あれから私の胸はずっと高鳴っているのです。
「いえ、こちらこそ申し訳ありません。貴方様が詫びることではございませんから」
動揺した私がこう返せば
「君って謙虚なんだね。婚約者とは似ても似つかないよ。代わりに結婚したいぐらいだよ」
そんなお世辞を吐かれましたよね。
一見軽いその言葉が、私には何故か重く聞こえて。そして、何だか嬉しくて恥ずかしい不思議な気分になってしまって。何も言えませんでしたね。私、貴方のことが好きみたいです。
星屑が月に恋をしてもいいですか?
最近、気付いたことがあるんです。
貴方を見ていたら気が付いてしまったんです。
貴方と貴方の婚約者のご関係について、閃いたんです。
月と太陽ってどうして同時に輝かないんでしょうか。どうして仲良く並んでいないんでしょうか。
答は簡単、仲がお悪いのではないでしょうか。
貴方がたは勿論婚約者どうしです。でも、一緒に仲良く輝いているところを見たことがありません。太陽の下では青白い貴方しか見られません。月の貴方でさえ太陽に負けて霞んでしまわれるのでしょう。
太陽の荒々しさには私も同感です。貴方には頑張ってほしいと願っています。だって、好きな人ですから。貴方の幸せそうな結婚式を間近で見たいですから。
でも、やっぱり、恋をしてもいいですか?
星屑でも月に恋をしたっていいですよね?
どうしましょう。
私は勘違いをしていたのですね。仲がお悪い訳ではなかったのですね。
私、知ってしまいました。あなたの本当の姿を。貴方の抱えた秘密を聞いてしまいました。
貴方は実は月ではないということ。闇を照らすことのできる存在ではないということ。そして、貴方は太陽に
貴方も大変だったのですね。
もしかして、私が好きになったのは「太陽に照らされた月」という存在だけだったのでしょうか。私はただの馬鹿な恥知らずなんでしょうか。
ごめんなさい。
貴方に伝えたいことがあります。
私はやっぱりあなたが好きです。太陽に照らされない貴方にも、恋をしてしまいました。
ただの星である貴方とそのまわりを飛びかう星屑の私。
このくらいの身分違いは許されますか?
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