ラッキーストライク

空を見つめる瞳

虚ろな君の表情


『元気がないね』と言えば

『落としてきちゃった』と言う


貼り付けた笑みすら今はない

きっとそれくらい疲れてしまったのだろう


戸惑う僕を知ってか

考えたくないことがある

それでも何かをしたくない

ただぼんやりしていたい

そう君は語り

『ごめんね』と笑った


だから僕はポケットを漁って差し出した

くしゃくしゃになったラッキーストライク


君は怒ったように笑い

困ったように目尻を下げた


僕が箱から一本出すと

君は素直に口に咥えた


燻る煙と空に浮かぶ星々

黒い背景の中に君は溶けていた

口元からふわふわと煙が漂っていく


何気ない景色が

僕の思い出だった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る