夏を翻す

振り合う手

閉じる傘

登る階段


もう手遅れだった



煌めく屋台で奢ってくれた

その瞬間も


肩を並べて花火を見た

その瞬間も


酒を入れて明るくなった

その瞬間も


暗い夜道を濡れて帰った

その瞬間も


全部、全部、違うんだって

思ってしまった



一つ花火が打ち上がるたび

一つ呼吸が苦しくなって

一つ花火が散るたび

一つヒールの足が痛くなって



「友達としての好きだと思ってた」


その言葉も強がりだったのかな

でも、自分を誤魔化すこともできなかった



「これからは友達だね」


静かに玄関に向かった

君は背を向けて帰っていった












ああ、夏が終わる

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