　午角くんが、あたかも洗脳（マインドコントロール）に操られるがごとく古い価値観にとらわれ、私という女性（にんげん）がありのまま判断したり受け入れたりしてもらえないとしたら、とても悲しいことだ。

　私にとっても不幸であるけれど、これは彼自身にしてみてもまったく好ましい状態でないのは明白。時速500kmの鉄道が実用化されようという現代の価値観にとてもそぐうものではない。

　彼が時代に取り残されることのないよう、開眼（めをひらか）せてあげるのは女性（ひと）として当然の務め。

　――さん　――さんってば

　このような考えは、ともすれば男性を低く見ているかのように誤解（かんちがい）されるかもしれないが、私は違う。女性と男性はともに手を取りあい助けあって生きていくべきだと考えている。

　女性がその先見性をもって男性に気づきを与え、男性がそれに基づいて先導され女性を支え、みんなが自分らしく生きられる社会を築く。私はまごうことなき男女平等主義者だ。

　女性の知性・広い視野・柔軟性・寛容さ・高いコミュニケーション能力・高い精神年齢・こまやかさ・明るさ・前向きさ・忍耐強さ・華やかさ・美しさ。

　これに男性の筋肉量を加えて支えあうのだ。

　それぞれの長所による相互扶助によって世界はもっと輝ける。

　――丸さん　――三郎丸さんっ

　その逆は悲惨だ。

　男性の浅薄な思考・狭量な視野・不寛容性・がさつさ・ネガティブ思考・精神的もろさ・筋肉量を除く身体的な脆弱さ・不器用さ・暴力性・破壊衝動・闘争本能・支配欲・下半身と直結した大脳・利己主義・即物的・蒙昧さ・幼児性。

　これに女性の（あくまでも男性との相対的・比較的な）筋肉量を加えての支えあいを想像してみてほしい。もはや絶望のひとことしかない組みあわせであることは論をまたないだろう。

　今挙げた男性の特性が、なにを隠そう、戦争を中心に不幸を積み重ねてきた人類の歴史そのものである。

　――三郎丸さん！

　男とは生まれながらの加害者にして犯罪者である、とはS.Rさんの弁で、私はやや先鋭的すぎるのではと思う一方、人類の先端をゆく先進的な女性（ひと）の視点から後方を俯瞰すれば手厳しい評価もやむをえな――

　――三郎丸さんってば！

　と、さっきから精神世界への散策にふける私に、あたかもちょろちょろとまとわりつく子供のごとき声がしているようだが、いったい誰――

　「午角くん！」

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