看破 (xxiii)

 たしかにカズにも非はある。よかれと思っての水代さんの気づかいをむげにする態度はまずいし、乱暴なふるまい、特に女子に手をあげようとしたことはもっとまずい。玲爾たちが警戒したり、三郎丸さんが注意するのもしかたない。

 それでも、やっぱ、なんつうか……カズ、かわいそうじゃね?


 全員の代わりに戦って、死にかけて、回復できるのかわからないガチなタイプのステータス異常受けて、不便にあえいで、悩んで苦しんで、あげく、なんか悪者あつかいされて。

 約1名、スマホゲーかなんかで遊んで無関心の奴までいやがるし。


 俺だってカズと同じだかんな? 障害者じゃねえ、ってカズの言葉、痛いぐらいわかる。


 実際のとこ、俺たちのステータス異常は、現実世界の身体障害者と全然違わねえんだろう。

 けど、認めたくねえっつーか。受け入れたら、もう固定化しちまって回復できなくなるような気がして。

 これは障害じゃねえ、アイテムや魔法なんかの回復手段が存在する、ただのステータス異常なだけだ、って。


 水代さんは悪気のない親切心からなんだろうけど、カズの不安な心んなかに、土足で入っちまった。ブチキレるきっかけがたまたま重なってねえだけで、俺もおんなじように爆弾積みあがってる。誰かがチャッカマンで点火したらドカンといきそうだ。


 そういった趣旨の意見を、力は、LINE上で環に示した。

 口頭で伝えてほかのクラスメイトに聞かれると角がたつ。


 クラス委員は、教壇付近の黒板前で力にうなずいてみせた。

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