剣球 (v)
力の端末には、先ほど登録した「三郎丸さん」との名前が、一八のものには知らない番号がそれぞれ表示される。ふたりは教室を見上げ電話に出た。
「もしもし、午角くん? 私。三郎丸よ」「カズ、俺だ。丹下だ」
力の電話に三郎丸環が、一八には丹下征従がかけてきた。窓ぎわにひしめく級友に混じって、両者が軽く手を上げているのが見える。
「サブローはともかく、なんで丹下がかけてくんだよ?」
一八はいぶかしげに問う。征従が「バトルの経験があるのが俺ら3人だからだよ」と説明すると、ああ、そういうこと、と彼は承知した。
「ふたりともしゃべってばかりいたみたいだけど、ちゃんとアプリは確認した?」
環の責めるニュアンスに力は「悪り、まだ」と自身の端末を見た。通話画面を目にして、電話しながらだとチェックしづらいことに気づく。
力の心を見とおしたように、環が「スピーカーモードにして」と指示した。そうだった、と力は音声を切り替える。
環の声のほかに、征従ら3人組やほかの生徒の会話も拾ったり、一八も同じような操作をしているところから、どうやら教室でも切り替えたらしい。
「プリムズゲーム」を表示させ、モンスターのインフォメーションを確認する。
-ミナス 属性: 無 状態: 不可侵
意外と俊敏で足も速い。気性が荒い。大きな角に注意。
あいかわらず内容の薄い情報だ。判を押したようにこいつも気性が荒い。
モンスターだから荒っぽいのは想像がつくし、あれだけめだつ角は、言われなくても気をつける。
ステージ2と3のモンスターと共通して属性はなく、ステータスも不可侵。とりたててめぼしいデータはない。
モンスターについて得られる情報はないも同然として、こちらの戦力はどうなっているのか。
「メインメニューの『パーティー』で午角くんと宮丘くんの状況が確認できる」
言われた画面をひらいてみる。プレイヤーとして自分たちの立ち姿が現れる。撮った覚えのない画像が出てくるのが地味に嫌だったが、些末を気にしているときではない。
「なんだこれ??」
だしぬけに一八がとんきょうな声をあげた。
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