犠牲者 (xix)
最長の剣を棒きれ代わりのぞんざいなあつかいで、グラウンドに図を書き、征従がふたりに説明する。
「蚊取り線香をふたつ使うのと、外側と内側、両方に火をつけるのがポイントだ。片方は2カ所につけて半分の時間で燃える」
「わかった、そのあとでもう片方に火をつけるんだ」
口をはさむ真砂鉉を、征従は「バーカ」と一蹴した。
「それだと逆によけい時間がかかるだろ。火をつけるのは2本同時だ。片方は2カ所、片方は1カ所だけ。で、2カ所つけたほうが先に燃えつきるから――」
「残りのほうにも内側に火をつける」天祀の言葉に征従はうなずく。「正解」
「つまり、どういうことだってばよ?」
真砂鉉だけが混乱していた。征従が改めて線を引いてかみくだく。
「1分半の蚊取り線香を1分少々で、ってことは、要は、普通に燃えるときと半分の時間で燃えるときのちょうど中間の早さで燃やせ、ってことだろ。両端に火をつけたやつが終わった時点で、時間が半分経過してる。で、1カ所だけ火をつけて半分の長さになってるやつも反対側に火をつける。そいつが燃え終わったとき、かかった時間が『半分 + 半分の半分』。たぶん1分ちょっとだ」
「半分、半分ってわかりにきーよ!」
声をあげる真砂鉉に、天祀が「まあ、おまえがわからなくても、教室にいるやつが解ければ問題ないから」と、フォローにならないフォローを入れた。
天祀の言葉に応じるかのように、すっかり放置していたタウに変化があった。
分厚いガラスが割れるようなけたたましい音のほうへ3人がいっせいに振り向く。
あの、紺碧な半透明のなにかが、タウの前で砕け散り、宙へ雲散霧消していくさまが見えた。教室で問題が解かれたのだ。
ゆらりとタウが体を起こした。「これでやっとダメージを与えられる」「逃がさねえぞ」
再度、魔法で足止めしようと、天祀がアプリ上の呪文を確認したときだった。
「
前触れなく、征従が彼のわきで剣技を放った。次は俺の番だろう、と反発しかけた天祀は、衝撃波の向かう先を見てぎょっとした。
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